第4話 差別

 けれど学校を卒業して父の会社を手伝うために町に帰って、私はレモン族であることがどういうことであるか、というのを痛いほどに体感することになったんです。


 故郷の町は父の工場を中心として成り立っていて、工場で働く人が生活するための商店や食堂が工場を取り巻くように存在していた。

 子どもの頃は屋敷から出る事もなく、外で食事や買い物をした事は無かったけれど会社で働くようになって初めて、町の食堂を利用して『違和感』を感じました。

 町の食堂は何故かどこも食券制のところばかりなのです。


 工場で働く人が多く入るお店なので会計を早くするとか何か特別な理由があるんだろうと思う程度だったのですが、すぐにそれはレモン族のためだと知りました。

 私が食券を買い、カウンターに提出しても料理が中々出てこないのです。頼んだ料理が時間のかかるものだったからではありません。私と同じものを注文した人や私より後から注文した人は次々に料理を受け取って行くのです。

 私だけ十分以上待たされました。他の人は一、二分で受け取れるのに。さすがにおかしいと思い、ちゃんと注文が受理されているか聞くと


「売り切れだ」


 と言われたのです。他の物を頼むのも嫌になったので別の食堂に行くと、そこでも信じられないぐらい同じような接客を受けました。

 その日は外で食事をとるのを諦めましたが、次の日もまた別の食堂で同じような事が起きました。すると今度はそれだけではなく食堂にいた他の客の一人が


「レモン族は臭くてかなわん、早く出てってくれ」


 とぼそりと言ったのです。ぼそりとだったので誰が言ったのかは分かりません。

 ですが周りを見渡した時に、その発言はそこにいた全員の総意だということは怖いぐらいに分かりました。


 両親が私を遠い国の寮制の学校に入れたのは、私がこの町で差別を受けないためだったのだとその時になって初めて気がつきました。



 両親が私を遠い国の寮制の学校に入れたのは、私がこの町で差別を受けないためだったのだとその時になって初めて気がつきました。

 そして町の食堂がみな、食券制だったのは昔、レモン族の一人が無銭飲食をしたためだったと後から父に聞きました。

 その無銭飲食をしたレモン族の青年はレモン族であるために仕事に就く事ができずに、苦し紛れで無銭飲食をしたそうです。

 ですが青年は「皿洗いでも何でもします、ここで働かせてください」と言ったものの、聞き入れてはもらえず、そのまま警察に引き渡されたらしいです。


 私のこの髪が差別の原因なのです。

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