第3話 レモン族
「あの、言葉……日本語じゃないですよね?」
通じるか心配してきたけれど、私が私の国の言葉を喋る前からオーロラの魔女さんは私の国の言葉を話してた。
「ああ、ここはね、言葉が自動翻訳されているのよ。魔法でね。だから私は今、日本語で喋ってるけれどアイラさんには母国語のように聞こえるでしょう?」
「はい。何だか不思議」
「ここはね、色々なところから色々な者がくるから、言葉で困らないようにしてあるのよ」
凄いわ、やっぱり魔女の家って。見た目は普通でも色々な魔法がかかっているんだ。
「私、あの……」
ここに来た理由を話さなければと口を開いたが何をどう話し始めたらいいか戸惑う。
「大丈夫よ。ここに来たということは、だいたいの望みは分かってる。ゆっくりでいいわ、まずはあなたの事を話してくれると嬉しいわ」
そんな彼女の包容の言葉を聞いて、私はここに来るに至った自分の生い立ちを話し始めた。
私は学校に入る年齢まで、屋敷の外に出る事がほとんど無い生活を送っていました。
私の父は町で一番の工場の持ち主で町の有力者だった。だから大きな屋敷に住んでいたし、屋敷の中で働く人たちや、その家族、子どもたちも居たし広い庭もあって屋敷の外に出なくても小さな子どもとしては困らなかった。
けれど学校に入る年齢になった時、突然私は遠い国の寮がある学校に入れられてしまった。
父も母も私を愛してくれていたし、何故突然私を遠くへ追いやるのか分からなかった。
そんな中、寮で同室だった子に
「アイラの髪って素敵ね。いつもいい香りがする」
と言われた。
今まで気にした事が無かったけれど、そういえばこの私の髪の特別な香りは父や屋敷の人たちには無いもので、唯一、母だけが同じように香りを漂わせていたということを思い出した。
父も屋敷の人たちも皆、黒髪だったけれど私と母だけは金髪だった。
だから私は金髪の人は髪からこの香りがするものだと思い込んでいたのだ。
けれど同級生で同じく金髪の子からは、私や母のような香りはしなかった。
そして髪と香りのことに疑問を残したまま更に成長した私は高等部に上がってから、新しくきた歴史の先生に
「おや、君はレモン族なのかね? この辺りでは珍しいね」
と声をかけられた事によって、初めて『レモン族』という人たちがいるという事と私や母がそのレモン族なのかもしれないというのを知った。
その先生に尋ねたところによると、レモン族というのは私や母のように髪が金髪で尚且つ髪からレモンの香りがする種族のことらしい。
自分がレモン族かもしれないと知っても、学校にいる間はそれが特に意味のなすことだとは思わなかったのです。
私の過ごした学校はレモン族以上に変わった特性を持った生徒や髪や肌の色が違う子たちは大勢居たから。
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