第2話 オーロラの魔女の家

 洞窟に入るとそこには、よくある庭付き一軒屋のような家が建っていた。

洞窟の中にそのようなものがあるなんて想像もつかなかったので少し呆然とした。

 しかも洞窟の中だというのに明るいのだ。

 外の明るさほどでは無いけれど曇りの日の空ぐらいには明るい。

 近づいていくと、庭先に青年の姿が見える。

 ……いや青年じゃない! 馬? 本などで見たことのある、ケンタウロス? そんなような名前だったような、とにかく上半身が人間で下半身が馬の姿をしている者が何やら作業をしていた。

 本で見るケンタウロスは上半身裸だけれど、今私が出会ったケンタウロスはアロハシャツのようなものを着ている。だからこそ最初は普通の青年だと思って下半身の姿に気がつくのが遅れたのだ。

 彼(?)は私に気がつくと近づいてきた。表情は笑顔でまるで私を歓迎し怖がらせないようにしているかのような態度だった。


「ようこそ、オーロラの魔女の家へ」


 手で玄関に導き示す。


「ど、どうも。こんにちは」


 何を言っていいか分からず、とりあえず挨拶をした。

 更に「どうぞ」と彼は玄関の扉を開けてくれた。

 私は彼の導きで家の中に入って行った。


「あら、素敵な香りがするわね」


 家の奥の方から女の子の声がする。

 家の中はどこにでもありそうな普通の室内で、玄関からすぐの廊下を抜けるとダイニングキッチンのような場所に出た。

 そこには先ほどの声の主だろうか? 十歳ぐらいの女の子がエプロンをして料理をしていた。


「あ、あの、私、アイラ・マルスと言います。オーロラの魔女さんは?」


 この女の子が誰だか分からないけれど、この洞窟の家にいるということはきっとオーロラの魔女の身内か何かなのだろうと思ったので、おそるおそる尋ねてみた。


「私がオーロラの魔女よ。ちょっと待ってね、お茶出すから適当に座ってて」


 外見は十歳ぐらいの女の子だが喋りは何となく大人びている。この子がオーロラの魔女と信じていいのだろうか?

 まだ少し半信半疑だったけれど、ひとまず傍の椅子に座ることにした。

 座って、周りをみわたす。これまたどこにでもありそうな普通のダイニングキッチンだ。キッチンの先には更に廊下があり、いくつか部屋もありそう。


「はい、どうぞ」


 女の子は私にお茶とお茶菓子を出してくれると、私の斜め横に座った。

 近くで良く女の子を見ると、背の高さや雰囲気は子どもだが顔立ちはもっと大人のようにも見えた。やっぱりこの子がオーロラの魔女ということ?


「私が子どもみたいだからビックリした?」

「あ、はい」

「これはね、私の一族の特徴の一つなのよ。一般的にいうところの小人? みたいな。これでも私は二十歳。顔を見てもらうと分かるだろうけど、幼いわけじゃなくて体が小さいだけで顔はそれなりに老けてくのよ」


 オーロラの魔女は長い黒髪を高めのポニーテールにしている。彼女が言ったようにそう言われてみればもう彼女の事を十歳ぐらいの子どもというより“小さい人”というふうに見える。目はツリ目だけれどキツイ印象ではなく、入り口で会ったケンタウロスの青年と同じく笑顔で私を歓迎してくれているという雰囲気はとても伝わってきた。

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