日本の魔女物語

ピューレラ

一章 オーロラの魔女

第1話 レモン プロローグ

 柔らかい波が静かに押し寄せる砂浜のすぐ傍に鍾乳洞のような洞窟が見えた。それがきっとメリッサの言っていた、オーロラの魔女の洞窟なのだろう。

 その洞窟に近づく前に人気の無い砂浜でゆっくりと周りを見渡す。

 別に人の気配を探しての事じゃない。

私自身が心を落ち着かせるための行為だ。

 あそこに行ったら、私は『普通の人間』になれる。

 怖がることじゃない。

 潮風に髪が揺れていつも以上に強くレモンの香りが漂う。

 いつもは後ろでみつあみに束ねている髪を今日はほどいてきた。オーロラの魔女に感じてもらうために。私の髪を。

 けれど、大丈夫かな? 少しは勉強してきたけれど私の日本語で通じるかな?

 ここは日本。オーロラの魔女も日本人のはず。

 そんな心配を感じつつもザクリザクリと砂浜を洞窟の方へと歩いて行った。

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