最終話

「ねーねー、お姫様ー。さっきは私たちがいないのを良いことに、エクスくんとすっごいイチャついてましたねー」

「そ、そんなんじゃないわよっ! ファムったら、ふざけないで!」

「いえいえ、アレはシェインの目にもイチャついてるように見えました。それはもう、熱い抱擁が……」

「シェイン! ちょっと静かにした方が身のためよ……?」


 先ほどの、僕とレイナの様子を見られていたらしく、シェインとファムがすごい勢いでレイナをいじっている。楽しそうな三人(?)とは少し離れたところをタオと二人で歩いていると、呆れたように笑いながらタオが呟いた。


「お嬢、図星つかれると怒るよな」

「……そうだね。にしても、アレは僕を慰めてくれてただけなんだけどなー…」

「そんなことは重要じゃねーんだよ、あの二人にとっては。お嬢がおもしろいかどうかだろ」


 はは、と声に出して笑うと、タオは一つ大きなため息を吐いた。


「……坊主、あれはそろそろ助けに行った方が良いんじゃないか?」

「……だね。レイナ、もう泣きそうだ」


 ちょっと行ってくる、と言って、僕はレイナたちのもとへ駆け寄った。


「だからそんなんじゃないって―」

「レイナの言うとおりだよ。レイナは僕を慰めてくれてただけなんだから」


 レイナのフォローに入ったつもりの僕を、ファムとシェインはじっと見つめ、にやっと笑った。何だか嫌な予感がする。


「実際、新入りさんは姉御のこと、どう思ってるんですか?」

「そこ気になるよねー。ね、お姫様も気になるでしょ?」

「えっ? な、なななな何言ってるのファム!」


 嫌な予感は的中した。どうやら、今度は僕で遊ぶことにしたらしく、レイナも巻き込んで僕をいじろうとしてくる。


「べ、別に気にならないわ。全然、ちっとも!」


 明らかにこっちをちらちらと見ながら言っても全く説得力がない。タオたちからポンコツと言われるのをいつも庇って来たけど、本当に人の気も知らないポンコツな姫だ。


「……ポンコツだと思ってるよ」


 僕はため息を吐きながらそう呟く。それを聞いたレイナが、ポンコツって言うな、と眉根を釣り上げた。


「もうっ! エクスまでそんなこと……。私はポンコツじゃないのにぃ…」

「エクスくん、お姫様のことどう思ってる? って、そういうことじゃないんだよなぁ~」

「そうですよ。姉御がポンコツだということは周知の事実ですから」


 だって、本当にそう思うんだから仕方ない。

 こっちの気も知らないで。無知で天然、ポンコツとしか言いようがない、僕らの……いや、僕のかわいいお姫様だ。

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