フィアンセィディックキョウコン

 オレは今まで何度も命の恩人なあの先生のことを”フィアンセィヂックキョウコン”だって言ってきた。でも本名は、”フィアンセィ・ディック・キョウコン”のようだ。だったらもう、”キョウコン先生”と呼ぶことにするよ。


 キョウコン先生がまだ19歳ぐらいの時だよ。彼はある元ヤクザなカウンセラーに、実力検査をするついでに、一応患者ぶって、話しに行ったら、”アメリカに行って麻薬キメてこい、権力きいてるあの家なら合法だ、女も用意する”と、展開され、キョウコン先生は求めてもいない女と生活している時期があった。場所は、”フロリダ州シャーロット群のどっか”だって言っていた。一緒に暮らした女の名前はステラとエステラで、ふたりともブロンドだとか、エステラのほうは地毛黒いようだが。ステラは肩まで行くか行かないかの毛で、エステラは胸ぐらいの長さだ、ほんとに胸と同じの長さだとは言ってないが。


 キョウコン先生が17歳の時は確か、スンさんとアイラ島っていうところかアイルランドに酒飲み行っただとか言っているが、それは本当はズンさんと行っていたのでは、とも思ってしまうんだ、だって酒が絡むからだ、でも酒絡むからってズンってのは早計ってレヴェルではないってほどに早計すぎるが。


 一階建てに見えるそのシャーロット群の家は、庭が広く、車道との距離だけでもかなり家が離れている。地下があり、地下八階までゴミを詰め込んで帰国したキョウコン先生、なんか蒐集癖があるようだ。実は警備も厳重で、CMで見るような、ああいう会社のよりも厳重なんだとか。”裏世界クォリティ”だって、キョウコン先生が。


 キョウコン先生の話によると、フィアンセィヂックキョウコン醫院の地下は、計三千階はあるんだと。でもアメリカのときのようにゴミで全部埋めるような使い方はしていない。彼はやっぱり変態だ、普通の人から見れば。だって、ゴミとの付き合いに神経すり減らしてるんだから、でもオレはその気持は最近特にわかるんだ。

 ゴミは無限のようで有限だ、でもべつにこれは有限会社とかをゴミ呼ばわりしたいのではない。

 変だ、オレまでゴミの対処の仕方で悩んでいる、ゴミ屋敷造るような意向は持ってないっていうのに。


 ステラはオレと同い年である。一日誕生日が違うだけだ。でもオレは英語とか昔英会話塾通っていてもべつに得意ってほどでもない、話せないだろう、変な女と言いたいわけではないがまあその子と仲良くしたいと思うほどオレも飢えてはいない、他のところでは飢えて生きてきたが。そもそもオレは仲良くしていくという計画を立てるような関係をその子と持っているわけではない、そうだ、もとよりオレは、キョウコン先生の話をしているんだ。でもそういった周囲の人でもキョウコン先生の話だとも言える。

 エステラはいま24歳だって。オレは24歳をとても電波に思う。近未来で、電波っていうか、この西暦2010年代末期を生きているからそう思えるんだろうか、だとしたらどこか光栄にも思えるよ。

 

 オレは今感じている、西暦2020年にまた来る世紀末感に向けて、オレは、いま頑張っているんだと。

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