パラノイドバンドエイド
西暦2019年、現在、フィアンセィヂックキョウコン先生は、23歳である。
一川ヨウイチキ、つまりオレは、16歳だ。
「2019なんて何度も世紀末を越えたような年にまだ16歳のまま、これは、君にはまるで良いことだとは思えないんだろうが、今30歳近いような者や、そういう年超したようなものにとっては羨ましいと思われるだろう」と、フィアンセィヂックキョウコン先生は言っていた。
フィアンセィヂックキョウコン先生の病院は、入りたくても入れるようなところではない。でもオレはこの病院で暮らしていて、平然と外出もして、家のように戻ってこれる。
オレはもう学校に通うのは、やめて、この病院で働いて新たなる人生を築き上げようとしてるんだ。でもオレは退学しても平気だ、オレはフィアンセィヂックキョウコン先生の病院のアトモスフィアを知って、本当に大切なものはこっちだって知ったから。でもオレはまだあの学校のブレザーを私服にしているんだ、いつまで着続けるのかはオレにでもわからないが。
オレは、ここ数年、ほぼ毎日が陰鬱でいたが、フィアンセィディックキョウコン先生の病院で暮らし慣れだしたいまはそんなことはない。
オレは外出することにした。
オレは面皰で悩んでいる。でもいまはそういう肌でも平気で外出する。学校行ってたころの電車とか、嫌だ、見られるし、面皰って意外と多くできない人のが多い、オレはできてそれが普通よりも残り続けてしまう。まあその面皰も、ずっとあったのが、数箇月後、急に治るんだが、また数箇月経ってからはできだすんだよ、治るってのは奇跡的なんだ、オレの場合。でもその奇跡っぽさも、なにもなかったかのようにまた長いことでき続けていくんだ。
電車に乗った。横を見た、すると、前まで学校に通っていたオレのような気持ちで生きてるんだろってようなものがそこにいた、顔立ちもどこか、劣化したオレにも見え、現象自体が気持ち悪く思えた。でもいまは西暦2019年だ、もう、西暦2018年ほどの世紀末感は微妙ってものだろう、まあ、西暦2019年も西暦2019年で、世紀末感はあるが、西暦2020年のが強くあるよ、世紀末感は。でも2018と2020の世紀末感は似ているってほどにデカいんだ、オレにとって。フィアンセィヂックキョウコン先生もそう言っている。
オレの、横にいる、陰鬱そうにしてる彼は、オレと同じように面皰で悩んでいる。そしてひどすぎるから、それをバンドエイドで隠すんだ、パラノイドな具合にさ。オレはしてこなかったけど、そこまでは。
オレは迷った、横の少年をフィアンセィヂックキョウコン先生の病院に連れて行くかを。だから一応、彼の話をフィアンセィヂックキョウコン先生にしようと思った。
フィアンセィヂックキョウコン先生から、特殊な絆創膏を貰った。これは、皮膚に貼ると溶け込んで皮膚になり、正常な肌のようになるらしい。でもこれを渡すのはあまりに親切すぎるのではないのか、なぜオレはこんなことをしようとしてるのかとも思った。オレは思った、オレはあの陰鬱そうにしている劣化したオレのような顔立ちの少年と人違いされているのでは、と。オレはそれは嫌だ、と思い、もう彼のことは忘れようともしたんだ。もし同じ名前だったら、それも何か嫌なんだ、オレの名字は”イチカワ”と読むが、もしかすると彼が市川という名字であることだって充分にありえるのだ。
そして、フィアンセィヂックキョウコン先生は、あたらしい発明品を見せてくれた、それは、”パラノイドアンドロイド”と言っていいであろう物品で、いわゆる萌的美少女のようなアンドロイドの性器に男性器を挿入すると、男性器を増大できる、というヲタク向けの男性器増大器具だったのだ。オレはこれは使ってみたいと思うんだ、あの敬愛するフィアンセィヂックキョウコン先生作のものだし、気になるんだ、これは大きくなるどころか他のなにかも大きくできるすばらしいものに違いないとオレは思ったから。これは誰用なのか、もちろんフィアンセィヂックキョウコン先生にはこんなものはいらないだろう、なにせ彼はキョコンだからさ。
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