フィアンセィヂックキョウコン

オカザキR .セイチ

フィアンセィヂックキョウコン醫院

オレの周りの誰も知らない世紀末感

 西暦2018年12月31日、”世紀末”を感じる、オレは、学校に行っていない。みんなもそうだ、今冬休みなんだ。でもオレには理解できないスカトロもといメカトロ部の連中は、”自分が一流である”という虚言癖持ちの心も体も小さい教師に騙され、総じてよろこんでメカトロニクスの部活動に参加している、そうだヤツらは休みの日ですらも扱き使われているんだ、よろこびながら。だって、騙されているから。オレも騙されていたんだ、神経的な意味でも。オレがその騙されに気づくのもそれから8年後ぐらいもあとになってしまうんだけどな。

 面皰、このエグれた肌が及ぼす心理的作用、この腐ったような歯と肌のしみる嫌さ、こういうものにオレは騙され”世界”を、”ヒト”を、必要以上に呪っていた、でもあの懐かしい、”かわいい子”だったというイメージの名残とも言えるであろう、”やさしさ”が、結局人に冷たくできないままでいる。

 オレは西暦2018年の12月15日に学校を休んだ、登校拒否だ、オレの通っている学校、それはいわゆるバカ校だ。名古屋っていうとこにその学校はある、尾張国、そうだ、世紀末感じちまうんだ、いっそうさ、オワリノクニっていうものに。ちなみにオレの家は西尾市にある。

 草薙剣、なんて無双もできそうな偉大なものが格納されている熱田神宮の前でも平然と人はタバコを吸い、捨てている。神宮に敬意を感じることは不可能なようだ。


 冬には不思議と、届かないナニかを感じさせる、そうだ、これも世紀末感なんだ。寒さがオレをよりちっぽけに感じさせるんだ。中学の時もだ、冬頃から学校に行かなくなった。でも冬は同時にどこか懐かしさも感じさせてくる。そして、冬は異様に人肌が恋しくなって、今思えばなにがいいのかもほとんどわからない女にさかってしまっている、でも今もなんだ、”どうでもいい女だ”、そう思ってもオレは彼女を見捨てることはできないし、結局ある程度は好きなままなんだ。中学は不登校のままで高校に進学、いまは高一でクラス一位の成績でありながらも登校拒否、くやしいね、努力した、で、結果出た、でも、その結果も無意味なまま終わりそうなんだ。


 いじめってのは自分がいじめって思わないといじめじゃないようなところもまああって、その意味オレの高校入って以降のいじめは今のところないのだろうが、それより前にいじめられて、なぐられたりもして、カラダはボロボロ、そこから顔が変形したんだ、右目が死んでいるんだ。中学の頃はモテたほうだったのにさ。でもオレをいじめたやつはまだ平気で生きてるよ、片目も死ぬことなくね。


 オレの父さんはブラック企業につとめていて自殺した。これは先日のことだった、過労死寸前の自殺だ、どうせなら、過労死でその会社の過酷さを訴えその会社を反省させればいいってのに。会社で父さんは班長と特に不仲で喧嘩ばかりを繰り返していた、ある時、父さんの使う機械が爆破した、父さんはその日帰ってきて傷だらけだった、班長のシワザだ。俺の地元の先輩の中山田っていう、今24歳か23歳ぐらいの人の良い、オレの高校なんかと違う、時習館っていう高校卒業して名門校に進学した人も、なにがあったのかは今のところはよくわからないけど、彼いわくクソブラックな職場に勤務しているようだ、そう聞くと、父さんもべつに、めちゃくちゃすぎてあんな変な職場行っちまって扱かれていたのではないのかなって、なるんだ。中山田先輩は中学の時ずっと一位だった。でも高校に行くと頑張っても百位でがっかりしたんだってさ、人生に。そういうのもあったんだろう。


「ぶっ殺すぞ!」って言われた、オレが高校行くのやめる前日、帰り道のことだった、同じ学校の不良生徒らに。嫌だったよ、どうでもいいあんな不良にでも、そういうの言われるのは。オレは確かにヤツらよりも背が高い、オレは前、測ったので176センチぐらいだ、べつに大きいとは自分では思わないよ、でもオレが目障りなのか、オレはヤツらに特になんかしてはいないぞ、でもオレはその日、あの不良たちの暴言がオレを傷心状態にさせたゆえに、オレの通う学校の裏サイトで、噂の、麻薬のようなものを体内に流し込む注射が打てるっていうデパートの裏で、注射を打った、そしてオレは今、世紀末感に打ちひしがれながらも、自殺しようとしてるんだ。

 心因性幻聴・幻覚、が何度もしていたのはもう何箇月も前からのこと。幸せを呼ぶはずだったあの薬はマガイモノだったのか、オレの廃人度合いに拍車をかけた、前からあった心因性幻聴・幻覚にもっと激しいものを付随させてきたんだ、どうせあの注射のせいだ、そしてこの世界のシステムのせいでオレはこうなったんっだ。オレはガイキチだ、でも被害者なんだ、ガイキチにはパターンがある”根っからヤバいヤツっていうタイプのガイキチ”、それと、”根っからヤバいヤツっていうタイプのガイキチから被害受けた結果のガイキチ”、オレは間違いなく後者である、まあ、オレの祖父は前者でも後者でもなく、サイコパスで、そして時代遅れまで加わって、大変嫌なヤツだよ、歩くたびにドンドンとうるさくしてくるしそれで床はまいってペコペコなってんだ、痰の吐き声だって毎回聞くたびびっくりするんだ、もうオレのカラダはこんな年からボロボロで死にかけなんだ、オレの祖母はあんなサイコパスな野郎の口車に乗せられ、結婚、付き合いに疲れて早死だ、彼女も”騙されたんだ”よ。でもさ、もうオレは、行ってもまるで効果のない、五件以上通った精神病院の、もっとも非情な態度した医師の勤務している、病院らしくもない家のような病院の前で、いまから自殺するんだよ。その精神病院はね、立派な大きい病院の裏にあるんだよ、ただの家のようにね。

 ラヂオヘッドっていうイングランドのバンドがある。オレはラヂオヘッドのことは嫌いではない、やり手なんだろうってことはわかるがオレはそういう業界のことは詳らかではない、きく余裕さえもないんだ。でもオレはそのバンドのアルバムの『オッケイコンピュータ』っていうものを聴いたことがあるんだ、べつに好みではない、だが、いまのオレは、あの『オッケイコンピュータ』のような気分なんだ、いまでもどこかから宇宙人が現れ、世界を壊しに来るような世紀末も感じているんだ、でもオレが特に思う世紀末感ってのはさ、単なる、良いもの、それの終わりってことなんだ、大抵のみんなには、伝わらないと思う、だって、それがわかれば、もっと普通ではいられないから、きっと。


 飛び降りた。患者である、客という意味では神でもあるオレに高圧的態度とってきた医師のいる精神病院の前の病院の屋上から。すると地に着く寸前にその地面が開いたんだよ、パカっと綺麗にね、そしてオレを入れてすぐ閉まったんだ。オレは自殺しようとしても無傷だった。


「ここなら心地がいい、もう、おのずから死ぬ意味もないみたいだ」オレはそう言う。

 オレは今ベッドの上だ、あの精神病院の地下では、別の精神病院があって今その病院の一部にオレがいる、オレはどうやらそこで救われた初の患者だ、オレは、ここに落てくる前、もうなにもオレを救えないのかと思っていた、この世界のケガレ、もうオレには耐えきれなかった、この世界の言いようのないようないきづまるような息苦しさを変えたいんだ、オレは反社会的なものはのぞまない、でも変えたいことはあるんだ。

 この精神病院はたった今さっき建ったんだと、それをオレはあとからここの先生に知らされるんだ。で、”一川ヨウイチキ”そんなオレの名前がこれなのさ。

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