第51話あかり


新しいパーティーで、50の塔1階を探索中の僕。

蜘蛛を倒して、しばらくケンタを先頭にダンジョンを進んでいく。

しばらく雑談をかわしながら歩いた。


ケンタ達は最近パーティーを組んだばかりだという事。

ケンタがレベル10でダンも10、心之介と美香が共に9だとわかった。

そして僕以外の皆はDランクのワーカーだと聞かされた。


「ね?あの城の中って?どうなってるの?」


僕の横を歩いている美香が笑顔で尋ねてくる。


「え?・・・うーん?大きいだけで・・そこまで変わったところは無いかな?内装は無駄に豪華だけど・・・」


「へーえ」(一同)


なんかみんな僕の事に興味深々みたいだな・・。

ちょっと人気者になった気分。

その時、僕の後ろを歩いていた心之介が、洞窟の天井を狙い弓を構えた。

そのまま、先頭を歩くケンタの頭上の上に矢を放つ。


『ギィ!!』


突然断末魔が響いて、コウモリが地面に落ちた。


「まずは・・・一匹!」


「ビックリするじゃねーか!心之介!敵がいるならいるって言えよ!」


ケンタが後ろを振り返って心之介にそう伝える。

その言葉を聞き、心之介がボソボソと呟く。


「・・・大きな声を出せば、敵が逃げる。・・・それに、安心するのはまだ早い」


「・・え?」


ケンタが心之介の視線の先を振り返った。

暗い洞窟の天井から、景色に同化していたコウモリが3匹現れた。


「ちっ!暗くてわかんなかったぜ!」


「よっしゃ!!」


ケンタとダンがモンスターの前に出て、戦闘態勢に入った。

二人に続き、美香と心之介が身構える。

僕も右手の剣を握りしめ、洞窟の天井付近を飛ぶコウモリを見つめる。

どうやって戦うかな?僕の役割は・・。


前衛の二人がコウモリの素早い動きに翻弄されている。


「ちっ!暗くてよく、見えないぜ!」


『べチャ!』


「あぁあ!ワシの盾に糞垂れやがって!臭っ!」


洞窟内は薄暗く、洞窟と同色のコウモリが素早く動くと一層見えにく感じた。

コウモリに向かって行ったケンタとダンが手こずっている。

僕は足元に偶然転がっていた岩が目に入った。


「・・そうだ!よしっ!リチウム(Li)!」


右手で放ったリチウムが岩のオブジェクトに吸収された。

次の瞬間電気を放ち、洞窟内を照らし出した。

触らなきゃ大丈夫だし、もしモンスターが触っても一石二鳥。

洞窟内が明るくなり、パーティーメンバーが僕の方を見つめた。


「ナイス!」


「これで戦いやすくなったぜ!ワシの盾にクソを垂れたお返しをしてやる!」


ケンタとダンが僕に言葉を掛けて、コウモリに向かって行く。

しかし素早い動きでことごとく攻撃がかわされる。

その時後方の心之介が皆に声を掛ける。


「ここはオレが!同時点火!グリーン&ブルー!くらえッ!」


心之介から緑と青のオーラが放出される。

そして動き回るコウモリ目掛け、素早く矢は放った。

放たれた矢は吸い込まれるようにコウモリの体に命中した。

3匹いたコウモリは地面に落ちて霧散し、パーティーメンバーの武器へ吸収された。


心之介の横に立っていた美香が話しかける。


「今の緑だけでよくない?心之介?」


「念のためだ」


「・・そう」


二人の会話はそこで途切れ、前方のダンが大声でわめいている。


「み、美香~!盾が臭くてたまらん!どうにかしてくれ!」


「はぁ?めんどくさっ!自分でどうにかしなさいよ?・・・ったく!しょうがないな!・・・カーボン(C)!!」


美香が右手を構え呪文を唱えた。

右手から黒い液体が放出され、ダンの持つ盾に命中した。

コウモリの糞が黒い液体に吸着され、そのまま地面に流れ落ちた。


「・・・スン・・スン、スン!おお、匂いが取れた!助かったわい!美香!」


「ダン?ってか、自分も呪文使えるでしょ?なんでわたしが・・・めんどくさっ!」


ダンと美香の一連のやり取りを僕は黙って見ていた。

カーボン(C)のプレイヤーへの効果は匂いけしかな?

敵へ向けて放つと燃える液体みたいな効果だったし・・・自分でも使ってみるかな。


「よしっ!皆!どんどん行こう!」


ケンタを先頭にパーティーが続いて行く。

初めてのマルチプレイに、正直僕は不安な気持ちだった。

横を歩いている美香と目が合うと、彼女はニッコリと笑った。


「どうしたの?何か聞きたい事でもあるの?」


「え?」


すぐ、顔にそん時の気持ちが出ちゃうんだろうな・・僕。

でも、美香の優しい顔に僕の心は癒された。

魔法の事でも聞こうかな。


「あの・・カーボン(C)の効果なんだけど・・・」


「・・・ん?まだ、唱えてないの?私がさっき唱えたでしょ?だからパーティーに入っている、キミのメニュー画面でも見れるよ?ま、覚えている魔法に限るけど?」


「へー、そうなんだ!見てみようっと・・」


メニュー画面から魔法欄を確認する。


「・・ホントだ・・表示してある」


なになに・・。

カーボン(C)はモンスターに使うと設置型の燃焼液って書いてるな。

プレイヤーが任意のタイミングで燃やせますか・・。

自分に使うと消臭効果か+嫌な効果を約10秒防ぐか・・。

オブジェクトはまだ表示されていないな・・・やっぱり自分で使わないと覚えれないな・・・今度使ってみようっと。


その時美香がパーティー皆に聞こえるように話始めた。


「ってか・・私思ったんだけど・・みんな、松明ぐらい持ってるでしょ?」


「あ!」(一同)


「・・・ホント・・・めんどくさっ!」(バカばっか!)


先頭を歩いていた、ケンタとダンが恥ずかしそうに松明に火を付けた。


「・・・よしっ!皆!ど、どんどん行こう!」


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