第50話塔の中
「・・死ね!死ね!死ねぇ!!」
僕は涙を流して、心之介をめった刺しにした。
心之介の体からは夥しい血が流れ、そしてビクビクとの身体をびくつかせその場で死んだ。
・・・次は・・近くに立っていた、美香に近づいた。
美香は休まずに動いている・・だが顔だけはこちらに向いて僕を涙目で見つめている。
「・・お、お願い・・・た、助け・・」
・・・女だからって・・容赦はしない。・・・ゴミがっ!
僕は美香の顔を睨みつけたまま、近づいた。
そして渾身の力を込めて、美香の首を切り裂いた。
美香は呆然とした表情をして、その場で二つに崩れ落ち倒れた。
美香の近くに横たわった肉塊に、僕は目を移した。
すると、一番最初に殺したダンの体が、弾けて空間から消えた。
「・・・へぇ・・。・・・ゲームの中で死ぬとああなるか・・・へぇ・・モンスターと一緒じゃん!」
僕は冷静にその様子を見守った。
そして・・・。
「・・・や、止めろ!・・な・・悪かったって・・ほんの出来心で・・・」
地面に尻もちを付いたまま倒れている、リーダー格のケンタに僕は歩み寄った。
「・・・お前は運が良かったんだ!・・・もってんじゃん。・・・なんで攻撃してこないんだよ・・・ケンタ?・・・いいのか?そのまま、何もせず僕に殺されても?」
「・・・や、止めろ!止めてくれっ!!」
「止めろって・・・止めるわけないだろ?馬鹿か?お前?」
僕は宝物庫内で静かに目を閉じた。
そして、ここまでの経緯を思い返した。
~パーティー結成・直後~
フィールドに出て、雑談をしながら歩いているとすぐに50の塔が見えて来た。
「・・・」(近くでみるとこんな感じなんだな・・遠目でしか見た事なかったからな・・・)
石造りで円柱状にそびえ立つ50の塔。
見上げると首が痛くなるほどの高さ!
建物の最上階部分は、ここからでは見えない。
はるか雲の上に突き抜けている。
先頭を歩いていたケンタが、50の塔の扉に手を伸ばした。
鉄製で所々錆びついたその扉を、ケンタが体重を乗せ開いて行く。
『ギギギ・・・ギ』
金属のこすれる音を周りに響かせながら、扉が開いた。
「さぁ、行こう!」
ケンタが先頭に、50の塔に入って行く。
「・・・」(え・・僕リーダーになったのはいいけど・・・形だけ?)
カルマの街を出る前に、僕はパーティーのリーダーに任命された。
メニュー画面からパーティー編成をタップして・・・あれ?
なんか・・釈然としないけど・・ま、今からリーダーっぽい事をしていこう。
そうすれば、皆(僕以外4人)に求めてもらえると思う。
ブツブツと頭で一人トークをしていると、目の前に土づくりの道が広がっている。
「なんか・・洞窟みたいだな・・」
道端にはポツポツと小さな草花が咲いている。
メニュー画面にマップが表示されている。
しかし、まだ進んでない場所は暗く表示されている。
『トルネ〇』とか『風来のシレ〇』みたいな感じかな、分かりやすくいうと。(余計わかりにくいかな?)
・・・なんか洞窟だから、ジメジメしてるな・・・。
「さ!どんどん行こう!」
そう言って、ケンタがマップ未踏エリアを埋めるように進んでいく。
「おい!ケンタ!モンスターだ!」
ダイがケンタの前に走り出した。
すかさず巨大な盾を構え、モンスターの攻撃を防御した。
僕たちの前に大きな蜘蛛が現れた。
蜘蛛は飛びつき攻撃をダンの盾に防がれ、すぐさま天井に張り付いた。
そして下腹部の穴から糸を放出して来る。
しかも僕がターゲットかよ!
「うわっっと!」
僕は体をくねられせて蜘蛛の糸をかわした。
糸は地面にべったりと張りつく。
「・・・」(あれは触ったらダメな奴だな・・)
僕はその場から、離れた。
しかし執拗に蜘蛛は下腹部から糸を放出してくる。
そのすべてが僕に向けられている・・・。
この蜘蛛、僕に恨みでもあるのかな?5分の1なのに・・・。
走りながらその攻撃をさけていった。
振り返ると通路中に蜘蛛の糸が張り付いている。僕たちは徐々に動ける場所が少なくなっていく。
「おい!美香頼むぞ!」
「了解ッ!」
ケンタの声を合図に僕以外の4人がフォーメーションをとる。
ダンとケンタが前衛に構え、心之介と美香が後方からの攻撃を見せた。
・・・僕はちょっと除け者感が・・・。
そのとき、ループエンドでぶらぶらしているバフォちゃんが呟いた。
「・・・・どっちのレンジ・グループで戦いますか?どっちでしょ?ぼっちでしょ?」
「う、うるさいよ!」
僕が大きな声でバフォちゃんに突っ込むと、パーティーメンバーがこちらを振り向いた。
そのいたたまれない空気を、僕は笑って誤魔化した。
「・・・ま、いいや!美香ッ!」
「わかってる!カーボン(C)!!」
後方から美香が魔法を唱えた。
美香の左手の本から、茶色の液体が放たれた。
カーボン(C)の魔法は蜘蛛の糸の一つに命中して水の様に地面にこぼれた。
その場所を目掛け心之介が、弓をつがえ放った。
鏃(やじり)の先端と落ちていた石とがぶつかり、小さな火花が起こった。
次の瞬間、その場から炎が巻き上がった。
巻き上がった炎が、数珠つなぎに近くの蜘蛛の糸へ燃え移っていく。
火を恐れ慌てふためく、蜘蛛目掛け、盾を構えたダンが一直線に突っ込んでいく。
両手の盾で蜘蛛を洞窟の壁に押さえつけ、その後ろからケンタが双剣を構えジャンプした。
素早く華麗な動きで、舞うかのように両手で斬撃を放つケンタ。
一瞬で蜘蛛は切り刻まれた。
「・・・ふぅ!」
ケンタがこちらを振り向くと同時に、蜘蛛がその場で霧散した。
・・・あれ?僕いらなくね?・・・あれれ?
モンスターを倒したケンタの双剣に、中サイズの感情玉が吸収された。
残りのメンバーにも同じように感情玉が飛んでいく。
「・・・へぇ、そんな仕組みなのか・・・ソロだったから知らなかった・・」
「・・・ボソボソ・・・ぼっちでしょ」
「う、五月蠅いよ!」(人見知りっ!?どこが?黙ってろよ!クソ羊・・ボソボソ・・)
僕はバフォちゃんに、いつもの様にツッコミを入れた。
しかし事情を知らない他のメンバーから、白い目で見られている。
クソヤギ・・・この空気どうしてくれんだよ!
僕は笑って誤魔化した。
「・・・ああ・・魔王様は・・ちょっと妄想癖があるみたいだね・・あははは」
「・・・みたいね。ケンタ先を急ぎましょ」
「・・・」
何か変な人扱いされてるんだけど・・・。
ま、変な人たけど・・普通の人だったら泣き出してるよ!
そらそうだよね、突然変な事言って、笑って・・変な事言って・・笑って・・。
絶対やばい奴だろ!僕!自分でわかってるよ!
「・・・ボソボソ・・皆に説明していい?バフォちゃん?」
「ボソボソ・・・駄目に決まってるでしょ!坊ちゃんが突然奇声を上げる人ってカテゴライズされれば済む問題ですから~!ベェ!ベェ!ベェ!」
「・・・」(嫌だろ・・突然奇声を上げる人のカテゴリーに分けられるの・・僕の頭に浮かぶのは2時50分さんしかいないんだけど・・ドーーン!!)
洞窟内を先に進んでいくケンタたちの後に、僕は首をかしげながら付いて行った。
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