第40話愛のキャッチ&リリース
「お姉ちゃん、ごめn。あ、ありがとう」
愛は口癖を飲み込んで、私にお礼を言った。
呼びだしボタンで愛の元に来た私は、妹の手を引いてトイレに連れていく。
用を済ませた後、愛の部屋に帰って来た。
「どういたしまして。愛!他に何かあったら、遠慮なく押してね♪それじゃ、お姉ちゃん、部屋に行くから」
「あ・・あ・・・」
愛がまた何かを言いたそうに、もぞもぞとしている。
眠る時間が迫って、自分のベットに座っている愛。
私は愛の横に座った。
「ん?どうしたの?愛?」
「あ、あの・・・ね・・・・。う・・んと・・」
いや、気になるな。
何だろう?
何かを言いにくそうにしている、愛の背中に私は左手をあてた。
意を決したのか、愛が私に話し始めた。
「あ、あのね。お姉ちゃん!わたし買って欲しいゲームがあるの!」
「ゲーム?いいわよ。そんな高くないんでしょ?」
私は可愛い妹の頼みを、快く聞いてあげることにした。
たまのわがままぐらい、お姉ちゃんが聞いてあげるわよ。任せなさい。
家に居る時間が長いからね、それくらいの退屈しのぎがないと、やってらんないだろうし。
「いくらぐらいするの?値段は?」
「え、っとね・・・ガチャの値段が1回30万で・・ジョブ・ステって本体と専用のコントローラーが5万円で・・・合計35万円・・するの」(願いが叶うって・・・CMで言ってたから・・)
は?え、ゲームで?たかが?
嘘でしょ?!ま、貯金はあるけど、買えるけど・・。
ゲームに35万出すのは、っちょと抵抗があるかな・・。
でも愛の頼みだしな・・・。
「う、う・・うん」
「いいのよ、お姉ちゃん!わたしも自分でおねだりしてて、値段が高過ぎって思ってるから。ごめん、お姉ちゃん。今の話は忘れて」
妹の頼みに、気のない返事を返してしまった私。
愛は申し訳なさそうに、私が部屋を出るのを見送った。
扉を閉めて廊下に出る・・最近のゲームってそんなに高いのね。
私プレイしないから、その辺の事情に疎いから・・・なんとかしてあげたいけど・・。
~翌日~
「おはようございます、店長」
「ああ、百花さん!おはよう!」
翌朝、私は職場のガーデンにやって来た。
店長に朝の挨拶をして、開店準備に取り掛かる事に。
今日の特売品の花を所定の場所に並べていく。
ポップを付けて、売変(売価変更)をして、まずは1つ終了。
そして店内に引っ込めていた花を、来店するお客さんの目につくところに移す。
そして水が必要な花に水を与える。
次は今日注文を受けている花を、準備することに。
お客さんから聞いた用途と予算をを元に、私がコーディネートしていく。
午前は慌ただしく時間が過ぎていく。
店がオープンする時間になると、お客さんが花を買いにやってくる。
お供え用、大切な人へのプレゼント、病気が治った祝いに、ほんと色んな人間模様が見えて面白い。
お客さんの流れがひと段落した時、店長が私の元にやって来た。
「あ、あの百花さん!お願いがあるんだけど」
またか・・私はそう思った。
ふぅ、今日もやんわり断んなきゃね。
きつく断ると店に居ずらくなるし・・・。
「今日はほら、間違って最高級胡蝶蘭を30本も余分に発注しちゃって・・・なんでだろう?テヘ★ペロ!こ、このままじゃあ、お、大赤字だよ!み、店がつ、潰れちゃううう!
ね、一回だけ!一回だけ!やらせてよ!愛のキャッチ&リリース!いいでしょ?可憐さんのファンも喜ぶし、ぼくも喜ぶし、それに売れた50%は何と!可憐さんにキャッシュバックするからさ!お願いだよ!百花さん!」
「はぁ・・・」
いつもはいい店長なんだけど。
たまに欲に溺れちゃんだよね、この人。
まあ、その商売根性は認めるけど・・。
「ほら、いつも言ってるでしょ!この最高級胡蝶蘭を可憐さんのファンが5万円で買うでしょ?それを可憐さんにプレゼントする!それをそのまま、可憐さんが店に返す!はい、ここに無限の錬成陣が完成!ぼくって天才!原価率なんと0%!原価0円!まさにインフィニティ!ぼろ儲け!ケケケ!
可憐さんのファンも可憐さんに花を渡せてハッピー!ぼくも花が売れてハッピー!可憐さんもキャッシュバックをゲットしてハッピー!ほら?誰も悲しませてないでしょ?ね、一回だけ?ね、お願い!一回だけで、いいからやらせて?」
この人、さっきから最低な口説き文句を連発してるけど。
絶対フラれるパターンの男よね。
従業員じゃなかったら、天誅してるわ、私。
水商売の女の人が同じバックを、自分の御客さんに買わせる行為と似てるわね。
1つだけ残して、後は全部売るって言ってたな。男の人ってなんて哀しいんだろう。
馬k、じゃなくて、なんて純粋なんだろう。
その時、昨日の愛のおねだりを思い出した。
私の中にちょっとだけ、やってみようかなという思いが湧いた。
「て、店長。私・・・」
まいっか、今回だけは。
~仕事が終わって 可憐宅 ~
「え?これって?お姉ちゃん?ホント?」
「うん、いいよ!私から愛へのプレゼントよ。大切にしてね!」
愛が欲しがっていたジョブ・ガチャを箱から出し、部屋の中にセッティングしていく。
目の見えない愛が、つまずかないように計算してジョブ・ガチャを置いていく。
「高いのに、お姉ちゃん。ありがとう、大切にする」
愛は目を閉じたまま、ジョブガチャの箱を抱き締めている。
ま、さすがに高かったけど、今回だけはしょうがないよね。
一瞬やろうかと思ったけど、店長の提案は断ったわ。
胡蝶蘭を30本間違って発注したってのも、どうせ店長のいつもの戯言だし。
自分の貯金を下ろして、愛にジョブ・ガチャをプレゼントした。しばらくは質素な暮らしを心がけなきゃな・・。
でもま、愛が喜んでくれて何よりだわ!良かった!
さぁ、今日はここまでにして、明日も早いし寝ようかな。
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