第36話ねぇ?母さん?


「zzzzz・・・」


ゲームだけど忙しい一日だったな。

ぬくもりを含んだ布団に包まれて僕は熟睡していた。

ノンレム睡眠とレム睡眠を繰り返す、僕の脳が母の記憶を思い出していた。

母さんが生きている間には・・・恥ずかしくて伝えられなかった言葉。


ねぇ?母さん?


あなたが与えてくれた・・すべての愛。

生きてる間は恥ずかしくて、伝える事が出来なかった言葉・・。

ありがとう・・・私を生んでくれて・・・・。

あなたがくれた愛に・・私は・・少しでも報いる事が出来ただろうか・・・。

いつもの日常を・・家族が迎える事が出来たのは・・あなたが頑張ってくれていたからです。

家族の皆が持っている至らなさを・・・黙って、あなたが全て受け止めてくれていました。

その事に、気付かないまま・・私は生きていました。


ほら?私の友達のあいつ、居るでしょう?

腐れ縁?親友?・・呼び方はなんでもいいけど・・。

母さんが死んでからしばらくして、あいつがうちに来たんだ。

そしてこう言ってたよ!


「ほんと・・・いい人から先に逝っちゃうな」って。

それを聞いていて、私もそうだなって思ったよ!

ほらいい人って言われる人は・・周りに居る人に何かを「してあげる人」なんだと思う。

反対に悪い人って言われてるような人たちは、周りの人に何かを「してもらう人」なんだと思う。


母さん、あなたは僕にたくさんの事を与えてくれました。

これまでずっと、私はそれに甘えていただけでした。

だから母さんの命のエネルギーは早く尽きてしまったのですね。


「・・・うぅ・・・・うぅ・・・」


あなたが死んでから・・私はその事に気が付きました・・。



あなたが生きている間に・・すこしでも私は返す事ができていましたか?

至らない息子で・・・ごめんなさい。

あなたはきっと・・・天国に居るのでしょうね。

役にも立たず・私は・ただ、あなたに自分の事ばかり押し付けてきました。

だから・・・私は・・・きっと地獄に落ちるでしょう・・・いいんです。

あなたを救えなかった私には、

あなたに合わせる顔がないから・・・・・。


「・・母さん・・・どこに行ってしまったのだろう・・・」



私の至らなさ、知識不足、行動不足・・。

それらが結果的にあなたを死なせてしまう原因になってしまいました。



次にあなたが生まれてくる時は、どうか・・。

あなたを大切にしてくれる家族の元へ・・・。

どんな姿でも・・どんな形でも・・。

それだけが至らない私の願いです。

幸せに・・・きっと幸せになってください。


「・・・・」


ありがとう。

ただ、ありがとう。


いつか・・・。

私が死んで・・・。

地獄の端の方から、あなたの幸せな姿見上げさせてください。

きっと・・そこには満天の星空の様なあなたの姿が・・。

あなたがくれたこの・・名前の様な銀河が。

一目だけでいいですから・・・。


ねぇ?母さん・・・。

あなたを想うと、涙と共に・・なぜだか力が湧いてくるんです・・。

不思議な・・いや、あなたが私にくれた物なのかもしれません。

自分でそう感じているだけなのかもしれませんね・・。

でも、そう思うと・・あなたをそばに感じる事ができます。


あなたが居なくなった、私には・・・それがただひとつの・・・。

あなたとの・・残されたつながりなのです。

この記憶を次へと・・確かに繋ぎます。

わたしに残された力・・すべてを掛けて。

それが・・・今を生きている私の役割です。


でも・・許されるのなら・・。

次生まれてくる時も、あなたに会いたい。


「会いたいな・・・」


どんな形でも・・・どんな姿でも・・・。

一つのエネルギーの塊になって、探しに行くから。必ず。

いつかまた、出会えると信じて・・。


ありがとう、母さん。

今は、この右手に感じる温かな大切な人を、命をかけて愛していくよ。


「行こう、可憐さん。これからを私と・・・歩いてください」


まどろみの中で確かに・・見えたような・・。

母さんの姿が・・・

夜半、僕はベットの上で目を覚ました。


「・・・・あれ?夢か・・・・・妙にリアルな夢だったな・・・でも、何で僕は自分の事を私って?・・不思議だな~!」


僕の顔は自然とほころんだ。

だって可憐さんとは、まだ付き合ってもいないのに・・・。

ただ僕が付きまとっているだけなのに・・。

今の流れだったら、結婚してる感じだよね。


でも、時間とともに淡くなる母さんの記憶が寂しかったから・・。

夢の中でも母さんに会えて・・・僕は嬉しかったな・・。

僕は嬉しい気持ちを含んだまま、またベットに横たわった。

きっと明日も最高の一日になりそうな予感がするな。


「さぁ、もうひと眠りするとするか!」

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