第35話アカシ屋
「はぁ、体力回復~♪」
僕は城のベットの上から起き上がった。
そしてバフォちゃんに尋ねてみた。
「ね、バフォちゃん?このゲームって回復アイテムは・・・?」
「え?ああ、ありますよ!当たり前だのクラッカーですよ!べぇ!ベェ!ベェ!坊ちゃん、バカなんですか?あ、本当に馬鹿な人にバカっていったら・・逆に可愛そうな感じに・・・」
僕は横に立つバフォちゃんに、軽めに天空×字拳を放った。
「ベェ!」
バフォちゃんは軽めに、城の扉に激突した。
「い、痛~い!何するだ!このクソ魔王!ちょっとだけ私が毒づいただけで・・・すぐ殴るんだから・・ホント、だから女にもてないんでしょうね!ベェ!ベェ!ベェ~!」
バフォちゃんはいたって普通に起き上がり、僕にあかんべーしている。
ま、バフォちゃんはギャグキャラだから・・・殺しても死ななそうな感じだね♪僕は無罪だ!
とりあえず、毎回城に帰ってくるのもめんどくさいしな・・。
アイテムを買いに行こう!
「バフォちゃん?回復アイテムはどこで買えばいいの?」
「はい、坊ちゃん!商業地区に道具屋がありますので、そこに行ってみましょう!ベェ!ベェ!ベェ!」
僕とバフォちゃんは道具屋に向かった。
「ふぅ、やっと到着したね♪バフォちゃん!かなり時間がかかったね!」
「ですね~!坊ちゃん!三分クッキングばりの時間短縮でしたね♪ベェ♪」
僕の目の間に「道具屋・アカシ屋」が現れた。
商業地区に入ってしばらく歩くと到着した。
店構えは昔ながらの建物で、時代劇に出てきそうな作り。
店内に入ると外からの見た目以上の広さがある、例えるならコンビニ4件分ぐらいのスペースかな。
僕以外のプレーヤーがあれこれと見て回っている、けっこうな繁盛っぷりだ。
店の中央に店主らしき男が立っている。
店主と話している女性客が、鼻水や涙・・顔じゅうから水をぶちまけながら爆笑している・・・なんで?
店主は店とマッチする着物姿が印象的だ。
今の時代で昔ながらの、着物姿の人は少ないからな、よけいに目立つな。
僕は店主に近づいて、話をしてみることにした。
「こんにちは!」
僕は店主に元気に挨拶をした。
すると、こちらに気付いた店主が僕の方に近づいてきた。
着物の胸に、”店長 明石”と白の刺繍糸で刺繍が施されている。
「いっらしゃいますぅえ!今日は何をお探しでぅえ?」
「は、はぁ・・・回復薬とかありますか?」
え?今語尾おかしかったよね?
え、僕の聞き間違い?
ますぅえ?でぅえ?ちょっと面白かったけど・・。
・・・ま、ま、まぁとりあえず、買い物が目的だから・・・流して・・。
しっかし・・僕の周りは本当に個性的な人ばかり現れるな・・・。
「ああ、ハイハイ!回復薬はこちらでぅえす!」
店長の明石は回復薬が陳列されている商品棚に案内してくれた。
僕とバフォちゃんは明石の後ろを歩いて付いて行った。
いやいや!やっぱでぅえす!って言ったよね、今?
語尾に特徴がある店長の明石は、いつものように歩いて行く。
これがこの人のスタンダードな話し方なんだろうな。
さっきの女性客は笑いのツボに入っていたのかも?
「お客様ぅ!こちらが回復薬の売り場になりまぅす!
ちょっとだけ店内を歩くと、回復薬の売り場に到着した。
なりまぅすって、どんな語尾だよ!
明石に対してツッコミけど・・・本人は真顔なんだよな・・。
余計に質が悪いな。
「こちらが、各種回復アイテムでぅえす!さきに説明をいたしまぅすと、戦闘中に瞬時に使う事ができまぅすが、使用後は回復アイテムの効果事にクールタイムが発生しまぅす!
こちらの小サイズぅでぇすとぅ、約5秒間でぅえす!HPの回復量といたしましてわぅ、30になりまぅす!お値段のほうが一つ2000円になりまぅす!MPを回復するぅ、こちらのタイプですぅと・・・」
「・・・・・・・・」
や、やばい!語尾が気になって話が頭に入ってこない。
だめだ・・・ツボに入りそうになるな・・・出会ってからこの短い時間の間に、何回マウスっていうんだろう?この人?
真面目なのに真面目に聞こえない話方って・・・。
あ、顔をよく見ると歯がすこしだけ前に出ているな・・。
え、だから語尾がマウス?
この顔の構造でこんな話し方になってるのかもな・・。
「あ、あのお客様ぅ?ちゃんと聞いていまぅすか?」
「え?ええ!き、聞いていまぅすよ!」
あ!?僕もまぅすって言っちゃった!
この短時間で僕の脳内に刻まれちゃったよ!
スゲーな!明石さん!歩く洗脳マシーンだな!
折角来たんだから、まとめて買っちゃおうかな!
「す、すいません!その小サイズを99個下さいまぅすか?」
や、やばい!完全に話し方移っちゃったよ!
なんだよコレ、完全に1人ノリ突っ込みみたいじゃないか!
「あ、あと!MP回復薬(小)も99個下さいまぅすか?」
僕がそう言うと明石は、商品棚にディスプレイされている回復薬に手に伸ばす。
HP回復薬のパッケージが緑色で、MP回復薬が赤色のデザインをしている。
その両方を一つづつ手に取って、僕の事を誘導する明石。
「お、お客様ぅ!大人買いでうぅね!太っ腹ですぅね!・・・以上でよろしかったですか?それではレジの方へ行きましょうぅ!」
明石は商品が売れて嬉しい様子で、鼻歌混じりに先ほどいた中央のレジに歩いて行く。
左右の小指を立ていて、後ろを歩いていて明石ルンルン気分が伝わってくる。
店内にいるお客の数人が明石の事を、笑いながら見つめている。
中には小型カメラで明石の事を撮影している人もいる。
結構な人気な事で、でも本人は気にする素振りもみせずレジへと向かう。
そうこうしていると、中央レジに到着した僕たち。
カウンター内に入り、明石が手に持っていた商品のバーコードにバーコードリーダーライタをかざす。
次の瞬間キャッシャーの液晶ディスプレイに商品の正面パッケージが表示された。
ディスプレイ画面を確認しながら、明石は商品数量をテンキーで押していく。
「・・・ポチポチ・・・・回復薬(小)が1個2000円で99個っと・・・それにMP回復薬(小)が1個5000円で99個っと・・・・。
合計693000円に消費税の8%・・・こんど10%になりまぅすね!お客さんぅ!増税ぅ!増税ぅ!本当、嫌になりまぅすね?あの頃は・・・歯っっぅ!ああ、スタンドバイミーぅ!
・・・え、総計の748440円になりまぅす!」
「は?748440円?回復薬で?っぱ?」
え?マジっすか?
その値段だと、普通のRPGのラスト付近で買える武器より高いじゃん!
このゲーム物価がおかしいよね?・・・・ま、買うけど・・・。
99個買ったとはいえ(小サイズ)なのに・・。
動画の広告収入が毎日入って来てるし・・・・少しは使ってもいいよね!
でもそのほとんどは、ローン返済で消えていってるけど・・。ああ、これがローン地獄か!
「お客様ぅ!購入したアイテムは戦闘中にポケットから取り出して、瞬時に使う事ができまぅすので!じゃんじゃん♪
じゃぶじゃぶ♪じゃぶリング♪・・どんどん、使ってくださいまぅせ!MP回復薬(小)のMP回復量は30で、クールタイムは約10秒となっておりまぅす!」
「ああ、ありがとうございまぅす!」
明石が僕に割り振られたジョブ・ガチャ内の認証番号を入力した。
次の瞬間僕の腰のベルトに、各回復アイテムがぶら下がった。
「ええ、戦闘中ちゅうぅにアイテムの底部分をタップすると、使用できる仕組みでえぅす!
使うたびに残り個数に合わせぇてぃ補充される仕組みになっていまぅす!よくあるでしょぅぅ!コンビニの飲み物コーナーでぅぇ、一個取ると自動で奥の商品が前に来る奴がぅぉ!
あんな感じでえぅすぅ!便利でぅすよねぇぃ!今の世の中はぉぅ、そう思いませんんんんきゃぁぁ?」
目の前の明石は商品が売れてよほどうれしいのだろう・・。
話す語尾が自然と強まって・・・エスカレーターしていく。
そして真面目な性格が高じての、このマシンガントーク・・。
僕はなすすべなく立ち尽くし、笑いのマシンガントークで打ちぬかれた。
数分後・・。
僕は顔じゅうから水をスプラッシュさせながら、アカシ屋を後にした。
笑いつかれた僕はそのまま、リアルの家に帰る事に・・・。
ああ、今日は疲れたな・・・・。
寝よう・・。
「今日も変な人ばかり居たな・・・・ZZZZZZZ・・・・歯っ!・・・・ZZZZZ・・」
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