第28話メンバー紹介
「尻!しり!シリ!尻!」
「ええけつ!ええけつ!ええけつ!ええけつ!ええけつ!5ええケツ!」
「尻ガール!尻ガール!!尻ガール!!!」
午後の撮影が始まり、会場の熱気は最高潮に達していた。
簡易的なステージの上で、サングラスの男のマイクパフォーマンスが始まった。
つめかけた熱狂的なファンの声と交じり合い、あたりに熱が漏れ出している。
ファンの人達と違う、戸惑いの気持ちで僕はステージ最前列に立っていた。
「ば、バフォちゃん!人が多すぎて出られなくなっちゃったよ!どうしよう・・・!」
「え?いいじゃないですか!面白いし最後まで見ときましょうよ!これから出す、坊ちゃまの動画の参考にもできますし!ベェ!ベェ!ベェ!」
そう言うと、バフォちゃんは僕の隣に立ってステージ上にカメラを向けている。
しかたないな・・・もうすこし見ていこう・・・尻。
「それではお前ら・・お待ちかねの時間だ!!その煩悩だらけの脳みそに、聖痕として刻み込め!・・・さぁ!私達の尻を見るたび思い出せ!・・尻ガールの登場だぁぁ!」
セクシーな音楽が流れ始め、ステージ上では彩豊かな光が踊っている。
そしてサングラスの男がステージ上に、尻ガールのメンバーを呼び込んでいく。
「最初に登場するのは、グループ最年少!黄色担当の妹的存在!まだ子供っぽさ残る、毒舌家!井伊喜美(いいきみ)ちゃん!15歳!」
「喜美ちゃん~!喜美ちゃん~!今日も罵ってくれ~!」
黄色い衣装に身を固めた喜美は、ステージ上で可愛い笑顔を振りまいている。
「みんな~♪元気~♪今日も応援ヨロシク~ね♪可愛い、子豚ちゃん達♪」(うわぁ・・!みんなラブ尻T着てる・・・早っ!)
「フレッシュで可愛いですね♪黄色担当、喜美ちゃんです!身長は148cm・体重は42kg。そして気になる、スリーサイズは、上から・・・ゴフッ!!!」
サングラスの男が喜美のスリーサイズを言おうとした刹那、喜美がみぞおちに強烈な一撃を放った。
「・・・次、言おうとしたら・・・サングラスカチ割るぞ!テメェ!」
「・・・は、はい!」
ステージ上で豹変した喜美が背中を向け、サングラスの男の胸倉を片手で掴んで持ち上げている。
「き、喜美ちゃん~!ぺちy・・・女の子は胸の大きさじゃないよ~!気にしないで~!」
「そうだよ!みんな喜美ちゃんが、ぜっぺk・・・気にしないで~!」
いつもの喜美の豹変に、ファンのみんなが優しい声を掛けている。
「ご、ごめんなさいつい・・テヘ♪」
「い、以後気を付けます!ハイ!」(最近の子は怖いな!小さいのに凄い力だ!)
サングラスの男は乱れた襟元を正している。
「喜美ちゃんは可愛いよな~♪オレの押し尻だよ!最近の子にしちゃあ、ハキハキしてるし・・・見てて金目的って感じがしないからな・・・自然体って言うか・・・そこが好きなんだよ!」
「オレもオレも!そこが喜美ちゃんのいい所だよな!たまに言う毒舌が、オジサンには堪んないんだよな!」
喜美のファンたちが僕の横で、そんな話をしている。
人を好きになると、小さな事は気にならなくなるんだろうな・・。
アクシデントから落ち着いたサングラスの男は司会進行を続けた。
「そ、それでは次のメンバーの紹介だ!信頼のおける堅物いや、融通が利かない堅物!最近の悩みは、一人だけメンバー内で色が違う事!!
16歳!身長160cm・体重51.2kgだ!・・・・スリーサイズはオフィシャルファンクラブで調べてくれ!(また殴られたくないしな!)茶色担当!枯れ葉 紅葉(かれはもみじ)!」
「紅葉ちゃん~♪ええけつ♪今日も味わい深い色の、ええけつしてんな!」
「メガネフェチの俺としては、メガネを掛けてる紅葉ちゃんが一番タイプだわ!」
僕の隣に立つ、中年のファン同士が熱く語り合っている。
味わい深い色のええけつ?・・え?・・・どうゆう事?僕には色の違いが分からないけど・・・。
どの分野でもこだわりの強いファンがいるもんだな、すごい。
「みんな、今日もよろしく!最後まで見ていってね!」
茶色担当の紅葉は、教科書どうりの挨拶をファンにしている。
メガネを触り短めで、恥ずかしがり屋な印象を受けた。
紅葉の挨拶が終わり、ちょうどよい間でサングラスの男が紹介を再開した。
「さぁ、それでは続いてはこのメンバー!・・その物静かな見た目とは裏腹に、ものすごい特技の持ち主!親指を口に運び、ギターを弾くようなリズムで、唾をしみこませ!
しみこませた指をつかい、高速で現金の枚数を数える・・・その様は、まるで!『人間紙幣計数機』!もの凄い異名だ!ダサい(笑)!ずっと寝ていたい努力家!17歳!身長170cm56kg~!緑担当!春風 四つ葉(はるかぜ よつば)!!」
「ふぁぁ・・眠たい・・・相変わらず、五月蠅い・・男達・・・ああ、早く終わらないかな・・森に籠りたい」
「四つ葉ちゃん~♪今日も眠たそうな、可愛い顔だな~♪こっち向いてくれ~!!四つ葉ちゃん~♪目ヤニちょうだい~!!」
やる気がなさそうにステージ上に立っている、四つ葉。
眠たい表情をしている。
サングラスの男が残りのメンバーを呼び込んでいく。
「さぁ、続いてはこの子!私の財布はいつも、ブルーオーシャン(意味不明)!尻ガールでは最年長の19歳!身長165cm体重52kg~!プライドが高い八方美人!青担当!蒼井 海(あおいうみ)!!」
「みんな!いつも、おかn・・応援ありがとう!!愛してるわ~!」(男なんてチョロ甘ね!)
知的な印象を与える、青担当の海。
僕と1歳しか年齢が変わらないが、大人びて見える。
グループ最年長だけあり、しっかりした印象を受ける。
ステージ上に集まって来た尻ガールを見て、ファンたちが熱狂している。
「さぁ、最後は尻ガールのリーダー!!感情で動く、殺戮の赤い稲妻!!あの日・・舞い踊る現金に群がる人々を、たった1人で残酷に葬ったのはこの人!!18歳!身長175cm58kg!赤担当!!道端 茜(みちばた あかね)!!」
「みんな~♪最後まで見ていってね♪みんなの事、食べちゃいたいわ♪」(フフフフ!)
メンバーがステージ上に集結し、中央に立つリーダー茜。
虚ろな表情でファンの事を見下ろしている。
「やっぱ茜ちゃんだよな!なんて言うか・・・男を少しも尊敬してない所が、いいよな!オレ、ムチで茜ちゃんにぶっ叩かれたいよ♪」
「わかるわ!この子からは金の匂いしかしないしな!それを隠す気もないって言う・・危険な魅力があるよな!茜ちゃん!」
ステージ上には尻ガールのメンバーが終結した。
その周りをオールバックでスーツ姿の男が、カメラを手に舐めまわすように撮影している。
「ん~いいお尻だね♪これが私が追い求めた桃源郷だ!!!カメラに残さねば!!この可愛い尻は私のモノだ!!キリッ!!!」
「ちょ!?社長!?」(まったく・・いつもいつも!懲りないヤツ!逮捕されればいいのに!」
なんだろう?尻ガールの関係者かな?
あれ、スタッフの一人パンTを着た男が舞台の袖から飛び出て来た。
気弱そうなその男が、オールバックの男の首筋に手刀を放って・・・あ!気絶・・。
オールバックの男は気絶させられて、手慣れた手つきでステージ脇に放り投げられた。
「ナイス!田中君!」
青担当の蒼井海が顔を赤らめて、そのスタッフの方を見つめている。
パンTを着た男はそのまま、目立たないような動きで、尻ガールのメンバーを守る場所に小走りで移動していく。
そしてロープで区分けされた場所で、興奮しているファンたちから尻ガールを守り始めた。
その時、午後からのCM撮影が開始された。
「みんな~♪喉が渇いたら・・・・これ!私達尻ガールも毎日飲んでる清涼飲料水『薔薇・尻茶』なんと家庭用タイプが新発売!ティーパックタイプだから、お湯を注ぐだけで簡単に飲めちゃうわ♪今ならなんと!1袋30個入りでなんと!1000円~!お買い得だね♪
そして大人男性の金づr・・・じゃなくてファンの皆にはさらに、お得なセットのご紹介!!1ケース24袋入りでなんと3万円!安~い♪さらにさらに、10ケース買ってくれた、筋がね入りの金づr・・・ファンの皆には特別に私達の『使用済み、ティーパック』プレゼント♪
10ケースだと50万円よ~!安い♪応募者全員にプレゼントよ~♪さらに100ケース買ってくれた、頭のネジのぶっとれた金づr・・・ファンには私達尻ガール5人から、素敵なプ・レ・ゼ・ン・ト!最高級右フック&左フックを食らわせちゃうわ♪お得な100ケースだと消費税込み1000万円~♪安い~♪みんな絶対買ってね♪私達の拳が皆のあごを打ちぬきたくてうずいているわ♪うふ♪」
「てぃ、てぃ、てぃ、てぃ・・ティーバック!?・・・ふぁ?ちょ・・・ま・・・ティーバック!?」
僕の周りのファンたちが、頭を抱えて混乱している。
いやだから・・・ティーパックだって!ちゃんと話聞けよ!
ティーバックじゃないからな!知らないぞ!
たぶん年上だろうけど・・・お前ら馬鹿なの?!
「命かけても買う!オレ!100ケース押さえなきゃ!オレコーヒ派だけど・・薔薇・尻茶飲みたい!・・薔薇・尻茶飲みたい!!・・薔薇・尻茶、毎日飲みたい!!よし洗脳完了!早速注文だ!」
「おい、オレが先だよ!どけよお前!1年分は買わないと・・300ケースぐらいかな・・・臓器売買しても買わなきゃな・・・最高級右フック&左フック・・・絶対食らってやるぜ!フッ!今からあごを鍛えないとな!」
最高級右フック&左フックって・・・どんなサービスだよ!?何最後、ちょっとカッコつけてんだよ!
1000万も払ってノックアウトされるって・・・頭おかしんじゃないの?この人たち。
尻ガールのファンたちは、新発売の商品を購入するために長蛇の列を作っていく。
「おい、急げって!押すなよ・・・押すなよ!・・・いやだから押せよ!」
ステージ上に立つ茜がファンに向けて、応援メッセージを述べている。
「ほんとファンあっての、私達です!ありがとう!心から・・・みんなの事・・・しゃぶりたいと思っています!」(フフフフ!)
「ちょ!?リーダー!?やめなって!?ファンの前で!!」(茜って頭おかしいんじゃないの?そう言う事は、ファンの居ない所で言うものよ!)
茜の過激な発言を、1歳年上の海がたしなめている。
しかし茜の発言で興奮した一部の過激なファンたちが、暴徒と化しステージ上を目指して突進してくる。
「きゃあ!!豚ちゃん達やめて!」(またリーダーが過激な事言うから・・勘違いした豚ちゃん達が、興奮してるわ!)
喜美がマイクを使ってファンたちをなだめている。
スタッフたちはファンを止める事で必死になっている。
一部のファンがスタッフの制止をすり抜け、茜の元へ群がっていく。
その時、パンTを着た男が、すり抜けたファンの前に立ちはだかった。
「た、田中さん!」
青担当の海が、祈るような表情で田中の事を見つめている。
「あ、茜さんには指一本触れさせないぞ!お前たち!」
そう言うと茜に群がるファンを、次々に無力化していく男。
そして倒れたファンたちに向けて、大声で語りかける。
「こ、ここから先は聖域だぞ!ファンならちゃんと、所定の場所から見るんだ!」
「大丈夫よ?田中さん?そんな弱い男達にやられる、私じゃないから!守ってくれなくても、自分でなんとかできるから!それに町の中じゃ、プレイヤー同士危害は加えられない仕組みだし!」
茜がステージから、見下ろしながら男に語り掛けている。
「じゃあね、皆♪送きn・・・絶対買ってね♪」
そう言うと茜はステージ脇に引っ込んでいった。
その後を他のメンバーが続いていく。
「す、すごかったね!バフォちゃん!すごい熱気だったね!」
「ええ、尻の魔力に取りつかれてましたね!それじゃ!もう、尻はお腹いっぱいなんで帰りましょう!ベェ!ベェ!ベェ!」
僕たちはまだ熱気が渦巻く、尻ガールのステージを後にした。
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