第22話町の外へ
「ベェ?ベェ?ベェ?・・・あ、お久しぶりです!坊ちゃん!」
僕は久しぶりにジョブ・ガチャの中に入った。
ローン返済中の我が城・カスデ・ムショクナ・モンデの中は相変わらず、豪華な内装だ。
よだれを流してベットで寝ていたバフォちゃんは、素早くベットから飛び起きた。
そして、久しぶりに来た僕の顔をまじまじと眺めている。
「・・・・ひさしぶり、バフォちゃん」
「・・・?・・・・痩せました?・・・・・あれ?目が腐ったかな・・・ちょっとカッコよく見えますよ。それに・・・」
母さんが死んでから一週間、水しか飲んでなかったからな。
今朝体重を測ったら、7キロ減ってたな・・・ダイエットしたわけじゃないけど。
それに目が腐ったって・・・本人を目の前に・・・このクソヤギ!なんか久しぶりだな、この感覚。懐かしいな。
バフォちゃんは吐息がかかるぐらいの距離で僕の顔をじっと見つめている。
「・・・・なんか雰囲気が変わりましたね・・・何かありました?」
「・・・ん・・・母さんが・・・・亡くなったんだ・・・・それで」
僕はバフォちゃんの顔を見て、そう答えた。
「・・・ご、ごめんなさい・・・・」
「・・・いや、いいんだよ。それで僕は、ダンジョンの最上階を目指そうと思ってるんだ!」
僕の話を聞きバフォちゃんは首をかしげている。
「・・・・お母様を生き返らせる、おつもりですか?坊ちゃん?」
「・・・いや、わからない・・・だけどバフォちゃん言ってたでしょ?僕は象徴だって!たった1年間だけど、魔王として選ばれたんだから・・・その・・・うまく言えないけど・・」
ダンジョンの最上階にあるとされる『始まりの物質』
それを手にするとどんな願いも・・・ってCMで言ってたけど・・どこまでの願いを叶えてくれるのは正直僕にはわからない。
それに死んだ母さんが、生き返る事を願っているのかも、僕には正直わからない。
だけど・・・そこに行けば何かが変わりそうな・・・そんな漠然としたイメージが僕の頭にあるんだ。
「・・・わかりました。私も執事として坊ちゃんの事を全力でサポートさせていただきます。ですが、お仕事はどうされますか?」
「・・・ああ、ガイさんにはちゃんと挨拶に行こうと思ってるから、心配しないで」
わかりましたと言って、バフォちゃんは僕を城の壁際に手招きする。
手には動画用の機材が握られている。
「坊ちゃん、久しぶりのカルマです。いつも坊ちゃんの動画を再生してくれている、かねづ・・じゃなかった、ファンの皆に元気な姿を見せてやってくださいよ♪
この城も皆のおかげで購入できましたよ~・・しめしめ・・・じゃなかった・・ありがとう的なお礼メッセージを撮りましょう!」
「・・・・・」(今、こいつ金づるって言おうとしたよね?絶対!)
僕は促されるままに、動画を撮影した。
バフォちゃんはいつもの様にノリノリだった。
「はい、OKです。これで広告再生作業員・・・じゃなかった・・ファンの皆様に喜ばれますね♪ベェ!ベェ!ベェ♪」
「・・・・」(こいつホント・・腐ってやがる!)
僕はバフォちゃんの中に、ドス黒い資本主義の闇を見た。
はい、と言って、バフォちゃんはいつものジャージを僕に渡してくる。
バフォちゃんがまじまじと見ている中、僕はいつものジャージに着替えた。
「・・・坊ちゃん、やっぱりカッコよくなりましたね!ギャップ★萌え♪ですよ!今までの豚魔王から、ちょっと豚魔王に変わったからでしょうね!私ちょっとタイプです♪
ああ、乗り換えちゃおうかな!彼怒るかな・・・・チラ・・・チラ♪」
「・・・・・はいはい、冗談はいいから・・ダンジョンに行くよ!バフォちゃん!」
両手を合わせてときめいている、バフォちゃんの角を持って入口まで引きずっていく。
「・・・痛たたた!は、離して!離してください!・・・・ハァ・・ホントこの人すぐ女の子に乱暴するんだらか・・・」
「・・・・・悪かったよ」
城の入り口で僕達はいつもの様に戯れていた。
その時バフォちゃんが、真剣な表情で僕に話始めた。
「それじゃ・・戦い方は分かりますか?坊ちゃん?」
「いや、まだ一度も戦った事はない」
わかりましたと言い、バフォちゃんは城の扉を開いた。
手招きをされて、僕はそのまま城の外に出た。
「それでは今から町の外のフィールドに向かいます、そこでは敵がエンカウントしますのでバトルに発展します。50の塔に行く前にそこの、雑魚敵で戦闘のいろはをお教えいたします」
「わかった、ありがとう。バフォちゃん」
僕たちは町の外を目指して歩き出した。
バフォちゃんと僕は道中、戦いの事を話しながら進んでいく。
「坊ちゃん、武器はどうされますか?Sレンジの剣・杖・拳 Mレンジの槍・薙刀 Lレンジの弓・銃の中から一つメインウエポンを選んでください。
メニュー画面の戦闘の項目に、武器をセットするひし形が左右にあるでしょう?」
「・・・・・うんとね・・・あ、あった!」
メニューを開きながら、町の中を進んでいく。
昔ゲームボーイを歩きながらしてたのと、ダブってるな。
本を読みながら歩くみたいな感覚。
街なかを歩く人にぶつからないように、僕は注意して歩く。
「ありました?メインウエポンは右手にセットできます。それからサブウエポンは右のひし形を2回クリックすると反転しますので、そこにセットできます。
メインとサブは戦闘中に持ち替えできますので、あらかじめセットしておくと便利です。それでは次は左手での説明です」
「・・・なんとなく分かった!実際にプレイしながら覚えないとダメそうだけど」
話続ける僕達の前に、町の外へ続く門が見えてきた。
「それから左手ですが、盾などが装備できます。他には攻撃魔法・補助魔法・回復魔法が使える魔導書がこの左手にセット可能です。パーティを組む際など役割を決めて設定してください。
それと盾を装備するとメインウエポンでの攻撃速度・攻撃力が落ちてしまいます。威力をとるか安全をとるかは、プレイヤー次第です。それと大剣・双剣・盾は両手にセットすることが出来ます。攻撃重視・防御重視の戦い方ですね」
「なるほど・・・」
バフォちゃんは門の前で立ち止まった。
「この門をくぐるとメインウエポンの変更はできなくなります。手に入れた装備は変更可能です、安心してくださいね。
それでは坊ちゃん、何で戦うか決まりましたか?」
「うん、最初はメインは剣で・サブは・・槍・・それから盾も装備してみるよ」
分かりましたと言って、バフォちゃんは小さなストラップに変化した。
そのまま僕が履いているズボンの左側に、ワープした。
「私は戦闘には加われませんので、微力ながらアドバイスでお助け致します。このまま、ソロプレイでいいですか?」
「うん、始めはソロでいいよ。慣れてきたらパーティーを組んでみるよ!」
僕は高鳴る鼓動を感じながら、町の外へでる門をくぐった。
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