第11話魔王旋風
「あ?なんですか?もう一回言ってもらえます?」
「いや、だから・・・お買い上げ・・・ありがとうございます!」
金取男にストレートな嫌がらせをしているバフォちゃん。
ま、投げられた恨みもあるし、ほっとこう。
パンパカパーン!!
僕は魔王城(カスデ・ムショクナ・モンデ)を手に入れた!!
なんだかな~・・・なんだかな~・・・ま、勢いで買っちゃたよ!10億(10万・ジョブコイン)!
あの後、命からがら入口に辿りついた僕。実際には死なないけど。
そこで動画を編集、すぐに全世界にアップしたバフォちゃん。
1時間で約1億再生、今も世界で視聴されているみたい、すごい。
この勢いは止まる気配がないようだ、ま、軽い炎上のような気もするけど・・・・。大丈夫かな?
正直こんなにお金が入ってくるとは、僕は思っていなかった。
「ペッ!今日はこれぐらいにしといたるわ!今度ふざけた真似しやがったら、ケツの穴に指突っ込んで奥歯ガタガタいわして!腸内フローラ破壊しまくってやるからな!あ?!
・・・・・・・・・・・・あ~怖かった♪ベェ!ベェ!ベェ!」
「・・・・・・ぐぬぬぬ!」
トルーマンは歯ぎしりしている。
僕は気にせず、城を手に店の外に出た。
「いや~よかったですね。坊ちゃま!ローンですが、無職ですが、カスデ・ムショクナ・モンデが手に入って♪
魔王らしい城で、私も鼻が高いです!それに坊ちゃまにピッタリな名前ですしね!」
「・・・そ、そうだね。あんな事になったけど・・・結果オーライだね」
忘れかけていた、いや忘れたい記憶が僕の中でフラッシュバックしてくる。
そう、ついさっき・・この大通りで僕が巻き起こした魔王旋風。
鎧は脱がされるわ、ポロリさせられるわ、おまけに世界に配信されるわ・・・・なんなのさこのゲーム!
「坊ちゃま!もう一回見てみます?私の編集も最高だと思いませんか?」
「え・・・もういいよ!何回も見たでしょ?早く帰って僕の土地に城を立てようよ?」
僕の言葉などお構いなしに、バフォちゃんは持っていたタブで動画を再生し始めた。
『ついにベールを脱ぐ!?いや、鎧を脱ぐ?!就職童貞・魔王!ここに見参!!!!いらっしゃい、今日はポロリもあるよ!!!』
音声ボーカロイドでタイトルが読み上げられる。
しかも、え・・・これ僕の声だよ?え、どういう仕組みなの?
なんでこんな動画みんな見ちゃうかな?僕なら絶対みな、いや、見るなかな・・・正直面白そうなタイトルだし。
それにしてもタイトルの最後、初めての投稿なのに、常連のお客を出迎える感じなんなの?
「え、本物の魔王様ですか?」
『・・・そう・・・すべてはここから始まった!』
ちょっとカッコイイ始まり方だし。
だけど内容は僕がただ、道を歩くだけの動画だよ?
しかもナレーション僕の声って・・・自分でこんな動画取ってたら痛すぎだろ?
こんなの、みんな見てガッカリしないのかな?
「みなさん、今年の魔王についてどう思われていましたか?」
アナウンサー風のバフォちゃんが、若い男女にインタービューしている。
いや、絶対これやらせだろ?
え、本物の魔王さまですか?って言ってた女の子が後ろにいるんだけど?しかも半笑いだよ?!
信じて欲しい、これ絶対バフォちゃんのやらせだから!
動画とインタービューが交互にかっこよく流れていく。
「いや、最初は只のクソニートだと思っていたんですけど・・・まさかこんな風通しのよい魔王だとは、隠し事もしなさそうだし・・・いや、そもそも隠してないし・・・今年は期待しています!」
「はい、私も最初はクソぶっさいくな魔王だと思ってたんですが・・・なんて言うか、あのポロり・・・じゃなくて・・・サイズが・・・・じゃなくて・・・可愛いなって思います!」
いやいやいや、インタービュー可笑しいだろ?
話してる内容意味不明だし、しかもインタービューされてる若い男女、半笑いどころか途中から爆笑してるし!
て、おーい動画中にジョブ・コイン渡して・・・あ、しかも受け取ってる~~!!!
え、もうちょっと裏側隠してよ!
『そう、この僕に皆が期待してくれている、世界中の人々が・・・僕は一身にその言葉を浴びた!』
「ち、クソニート魔王が!なにニヤニヤしてんだ!ボケッ!」
「邪魔なんだよ!なに人だかり作ってんだ、豚魔王が!」
「死ね、メガネ!」
いやいや、これ全部罵声だよね?
絶対このナレーションでも遊んでるだろ?バフォちゃん。
『そんな僕からのささやかなお礼・・・僕はつつみ隠さずホントのことを皆に言おうと・・思う!』
その言葉の後に、取り囲まれた男達に僕が鎧を脱がされて、スッポンポンになる動画が流れていくる。
いや本音を言う前に、前を隠せよ!
しかもBGMがもの凄く、軽快なリズム。ズンチャカ♪ズッチャカ♪フォ、フォ!ってバフォちゃん・・・あんた今ノリノリでしょ?
それに、なんども映像が再生されて巻き戻されて・・・って、おーい!僕のキャンターマちゃんすこし見えてるし!ちゃんと隠せよ!編集!
動画の中の僕は全力で走っている、両手で優しくキャンターマを守りつつ。ふぉっと、そっと・・。そう、やさしくね。
僕は罵声や歓声(悲鳴)フラッシュを、全身で浴びながらようやく町の入り口に帰ってくることが出来た。
そんな僕にバフォちゃんが指示を出す。
『魔王さま、×××××××××××って言ってもらえます?』
「ゼぇ、ゼぇ、ゼぇ!・・・はぁ?何それ?」
戸惑う僕にバフォちゃんが、セリフを促す。
「ちっ!しょうがないな!」
僕はデスイ・ハウスの上で撮影しているバフォちゃんに向けてセリフを言った。
「ここ、カルマゆうてな!」
・・・・なんのこっちゃ?
そのセリフを最後に、動画ではエンドロールが流れていく。
しかもハリウッドばりの、オーケストラ演奏が流れていく。しかもムダに長い!
それに、監督バフォちゃん 動画編集 バフォちゃん スタイリスト バフォちゃん・・・・
自分にいくつも役職付けてんじゃねー!全部名前がバフォちゃんだし、エグゼクティブプロデューサ・バフォちゃんって意味わかって入れてんのか?
それに最後の方に、やらせ・若い男女&え、本物の魔王様ですか?の女って・・・・・・・雑!
「ねぇ、バフォちゃんこのセリフなんなの?何かのパクリ?」
僕は素朴な疑問をバフォちゃんに投げかけた。
「え、モデリングですよ?人聞きわるいな!」
「え、パクリだよね?バフォちゃん?」
僕はちょっと悪戯っぽく尋ねた。
「ちがいますよ、オマージュ、パロディ、リメーク、アレンジ、とか他に呼び方は・・・あ、インスパイアでお願いします。ちょっとカッコイイ感じを出したいんで!」
「インスパイアって、意味わかってんのかい!」
バフォちゃんと話していると疲れてきた僕。
僕はステータス画面を開いた。
そして上部に表示してある所持金額を見た。
お金の額が自動的に増えていっている、動画配信での広告料だ。
でもこのほとんどはカスデ・ムショクナ・モンデのローン返済に消えていく事になる。
所持金の横の時計に目を移したPM16:00・・もうそんな時間か、そろそろ自分の土地の帰ろう。
「帰ろうか?バフォちゃん!」
「ベェ!ベェ!ベェ!そうですね、もう夕方ですもんね!坊ちゃま!」
僕たち二人は夕焼け道を歩いて行く。
無邪気に僕の前を歩く、バフォちゃん。おっぱいが縦横無尽に揺れている。
まるで∞インフィニティのような動き!・・・こいつは要チェックだ!ああ、あの∞に顔を埋めたい・・・。」
夕日に照らされて、いつもより可愛いな!バフォちゃん、これでヤギ好きじゃなかったらな・・・。
いやいや、僕には可憐さんと言う心に決めた人が、今頃何してるかな~。
「さ、私達の土地に到着ですよ!坊ちゃま!早速その、城を立てていきましょう!」
「立てていきましょうって、ココに置くだけ10秒でしょ?」
僕はそう言うと、小さな城のカプセルを地面に置いた。
そして二人は後ろに下がった。
それから待つこと10秒・・・・・!!!
『ド・ド・ドーーン!!!』
僕たち二人の前に、魔王城(カスデ・ムショクナ・モンデ)が現れた。
バフォちゃんと僕は互いに手を取り合い、喜びを分かち合った。
「や、やったよ!バフォちゃん!僕たちの城だよ!」
「やりましたね!これですこし冒険が楽になりますね!私も嬉しいです!」
城を見て僕の胸は高鳴った。
そのとき僕の頭に音声ガイダンスが聞こえてきた。
『いつも銀河様!そろそろご指定されているお時間となります!ログアウトされますか?』
「!」
僕はビックリして、メニュー画面の時計の時間を確認した。
16:30分か、そろそろ帰って夕食の準備をしようかな。
身体の悪い母さんの力になりたいし・・・。
「えっと、バフォちゃん、僕そろそろログアウトするよ!また今度ね!」
「はい、わかりました!いつでもゲームにお戻りくださいね!坊ちゃま!」
うんと告げて僕はログアウトした。
『リーブ!』
僕の体は眩い光に包まれた。
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