第7話チュートリアル
「さぁ、こっちにおいで!坊や!」
魔王を引き当てて立ち尽くしていた僕をジェシカが呼んだ。
僕の背中には、観客たちから投げられたゴミや空き缶がブツかっている。
ジャージ姿から黒い鎧姿へと変身させられた僕。
赤いマントを揺らしながら、ジェシカが招く場所を目指し歩き出した。
「この先の扉に進みな!坊や!ま、1年魔王頑張りな!」
そう言うと、僕の背中を力強く押すジェシカ。
僕の落ち込んでいた気分が、すこしだけ軽くなった。
会場から階段で床に降りると、通路が見える。
観客たちの声が聞こえなくなった通路を僕は一人進んでいく。
「さぁ、続いてのチャレンジャーは・・・」
僕の次のチャレンジャーを会場に招き入れている、司会のジェシカ。
その声を聞きながら、僕は目の前の扉を押した。
瞬間、眩しい光が僕の体を包んだ。
『パンパカパーン!!Sランクジョブ、おめでとうございます!いつも銀河様!」
「ああ、どうも・・」
来た時と同じビビッドカラーの服を着た、可愛い女の子が僕を祝福してくれる。
最初の女の子とは髪形だけが違うみたい。
女の子が僕に向け祝福してくれているが、僕は正直まだ戸惑っている。
『どうしました?魔王様?』
急にその魔王になってとまどっているんだよ、僕は。
当たればな・・・とは思ってたSランクの仕事だけど、まさかホントに当たるとは。
例えるなら、偶然出かけたショッピングモールの宝くじ売り場で、宝くじを買って1等+前後賞が当たった時みたいだ(妄想)
のぼりに『大安吉日』と書いてあり、それを見た僕はミニマムベット。約10枚だけ宝くじを連番で購入するんだ!
でも、ホントに当たるなんて・・。しかも1等・前後賞合わせて約5億円。新聞で自分の番号を見つけた時は、脳が震えたんだ!
そして、恐る恐る指定の銀行に当たり券を持って僕は出かけた。
銀行に向かう途中、見る人すべてが敵にしか見えない僕。人狩り行こうぜ!的な!銀行員にしてみたら、僕が不審者だとおもわれるだろう。だって・・5億円だよ!
そして上客しか入れない部屋に僕は通されることになる。そして目の前には高く積まれた札束が!
現金が通帳に振り込まれ、数日後。
変な宗教からお布施をねだられたり。
新事業を俺とやってみないか?的な誘いを受けたり。
もうほとんど赤の他人ぐらいの関係の人が『やぁ、僕は君の親戚だよ!』なんて笑顔で現れたり。
そしてそして、僕が5億円使ったしまったタイミングで、テレビ局の取材を受けたり『実録!5億円の現金をあてたニート。その悲惨な結末!?』みたいなVTRにされたり・・。
『おーい!クソ魔王!?おい・・・あ、気が付いたみたい・・・。オホン、どうしましたか!魔王様?』
目の前には先ほどのビビットカラーの服を着た女の子が立っている。
でも・・今確か・・クソって?ま、クソ野郎だけど・・・。
ま、今の時代、現金も(紙幣)新聞、銀行もほとんどが縮小してるか無くなってるからな。
紙から電子に変わり、人間の仕事もAIに置き換わっている。
人間のする仕事は機械の操作や、設備・ロボットの点検、ロボットではできない思考や発明ぐらいか。
僕はわからない部分を、ビビットカラーの女の子に尋ねた。
「あの、魔王ってどんな事するの?」
『はい、わかりました!どんな事するの?とのご質問ですが、何もしなくてもいいですよ!もちろん、なんかしてもいいですし。
ダンジョンの攻略をしてもいいし、仕事をしてお金を稼ぐのもいいし・・・動画を取ってその広告収入を得てもいいし・・・』
女の子の説明を聞き、さらに僕は分からなくなった。
「目的とか・・ないの?」
『あ、はい!一応ダンジョン・50の塔最上階を目指すのが目的とされています。50の塔最上階には「*始まりの物質*」と呼ばれるレアアイテムがあります、それを光・闇の両パーティが競い合う事がゲーム内での目的となります』
女の子は手元のパネルを操作する。
次の瞬間、僕の目の前にダンジョンのイメージが表示される。
『このような外観です。この白と黒は光・闇の属性ごとに入れる区域で別れています。しかし各階層クリア後、中央にある宝物庫では、光・闇の両パーティで宝物を巡り戦闘に発展しますので、侵入の際は十分にご注意ください!』
「はぁ・・・」
目の前のダンジョン・イメージを見ても、いまいちピンとこない僕。
ダンジョンは円柱上の建物で、白と黒の色で半分から分かれている。
まるでミックスのケーキみたいだ。
『・・・ですがダンジョン攻略時に実際に死亡してしまう事もあります。重ね重ね、くれぐれもお気をつけください』
女の子の話を聞き、僕はこのゲームのルールを思い返していた。
「3回だよね?」
『はい、3回です!このゲームでは3回死んでしまうと、ゲームのアカウントが削除されて、二度とこのゲームをプレイすることが出来ません!皆さんご存知『*スリーノックアウト制*』です!マイチップを使ってのプレイですので、偽証・複数アカウント作成は即アカBUN対象です。
今まで課金したアイテム、それにせっかく上げたステータスなど、すべて容赦なく消え去ります。リアルの体が消えるわけではありません。あくまでゲーム内での『*死*』と言う意味です。なので、いつでもログアウト可能です。ですが、『*真人*』になっているプレイヤーはこの限りではありません。実際に死んでしまいます!ま、救済の『*黄泉帰り*』『*地獄帰り*』もありますが、こちらは死んでからのお楽しみですね♪』
お楽しみですね♪にこッ!じぇねーよ!
ドラ●エ1の『「おはよう ございます。ゆうべは おたのしみでしたね』的なノリで死んだ後の事言ってんじゃねーよ!
ま、このゲームで死んだらどうなるか、僕も楽しみ?興味はあるけど・・・。
スリーノックアウト制は知っていたが、他の機能は聞いたこともない。
実際にプレイしながら覚えていかなきゃな!
「ねぇ、闇属性の事を教えてよ!僕、詳しく知らないんだ!」
『はい、わかりました!魔王様!』
そういうとビビットカラーの服を着た女の子が、手元を操作する。
すると、僕の前にスクリーンが現れた。
『こちらが、闇の仕事一覧です』
ジョブ・ガチャの仕事ランク 闇
★★★★★ Sクラス 年間1人 約3億人に一人の割合で排出
職業は 闇の魔王
一年間みんなから畏怖されるダークヒーロー!悪のカリスマ!
人々が恐れおののく、最高の職業。
最下位のDランクワーカーとステータス的な差異はない。
しかし、最初から高度な闇魔法・剣術・クラフトスキルなど解放されている。
それにダンジョン冒険時のパーティーメンバーが最大の12人まで配置可能。(NPCでもプレイヤーでも可)
さらにさらに、ゲーム内のすべてのエリアに自由に行き来することが出来る(本当はプレイしながら逐一、解放していく事になる)
身の回りの世話をしてくれるNPCはいない、ジョブ・コインで増やしていける。
土地は無いが城を1件所有している。執事が1人付いてくる。
★★★★ Aランク 年間10人 約3千人に一人の割合で排出
職業は 魔将
ステータスなどは上記(魔王)と変わらない。
広大な土地などを最初から所有(魔王は持っていない)
さらに、専属の可愛い(カッコイイ)NPCが付いてくる。10人。
NPCはプレイヤーの好みの顔や服装に、にカスタマイズすることが出来る(これも上位職業の特権)
NPCに高度な命令を下す事が出来る。
ダンジョンに潜っても、領内を発展させていく事も可能。冒険時のパーティーメンバーは8人まで。
プレイヤーが目的を自由に選べるのも、このジョブ・ガチャの魅力の一つでもある。
冒険用のスキルはなし。必要ならプレイして覚えていく事ができる。
★★★ Bランク 年間100人 約300人に一人の割合で排出
職業は 上位悪魔(魔将より土地が狭い)
ステータスは上記と同じ。
Aランクの魔将の約10分の一の土地を所有。
専属のNPCは5人付いてくる、もちろん好みにカスタマイズ可能。
国王と同じで、冒険戦闘用のスキルはなし。専属のNPCにすこし高度な命令を下すことが出来る。
もちろん、ムフフな♪Hな命令も可能 ※例・パフパフなど(年齢確認アリ18歳以上から)
冒険時のパーティーメンバーは5人まで。
★★ Cランク 年間1000人 約30人に一人
職業は下位悪魔
ステータスは上記と一緒。
Bランクの上位悪魔の管轄、小分けされた土地を取り扱える。
専属のNPCは3人、カスタマイズ可。
戦闘スキルなし。必要に応じて習得可能。
NPCに簡単な命令を下すことが出来る。
冒険時のパーティーメンバーは3人まで。
★ Dランク 上記以外の、残りのプレイヤーが、ここからスタート。
職業は ワーカー
ステータスは皆同じ、プレイしながら育てていくスタイル。
専属NPCは1人まで、解放されている(ゲーム内課金によって上限を開放していける)
冒険時のパーティーメンバーは3人まで。
戦闘スキルなし。必要に応じて習得可能。
課金や冒険で上昇した数値は、新年度を迎えてもリセットされない。ガチャでの職業だけリセット。
仕事をしながら、身の回りの物を手に入れていく。
仕事は自分の好きな物から選ぶことが出来る。
そして自分の努力が瞬時に、ゲーム内に反映されることになる。
年間約3億のペースでプレイヤーが増え続ける、人気の秘密はこの自由さにあるだろう。
しかし、闇属性の人々はあまり協力的ではない。
闇属性を引き当てた時から、性格がすこしづつ変化していくと説明書にのってたな。
なんでもパーティー組むのも危険が付きまとうとか・・?
『以上が職業の詳細になります。他にご質問はありますか?魔王様?』
「・・・いや特には・・・・あ!魔王は城がもらえるって、さっき言ってたけど・・・」
僕が尋ねると、ビビットカラーの女の子は手元を素早く操作した。
『はい、こちらがその魔王様専用の城になります。ゲームはここから始まる事になります』
「へぇ~!すごい豪華だね!」
僕の前の立体映像には、すごい外観の城が映し出されている。
例えるならヨーロッパの王族たちが住むような、気品と神々しさを感じさせる建物だ。
建築を知らない人でも息をのむようなその佇まいに、僕の心は喜びにあふれていた。
こんな夢の様な城で暮らせるなんて!!!
「あの他の機能についても教えてよ!」
僕の問いに、女の子の表情が変わった。
『・・・ちぃ、何でもかんでも人に聞いてんじゃねーよ!ペッ!自分でちったあ調べやがれ・・・・・・・あ、オホホ!取り乱しました』
僕は人間はこんなに色んな表情に変わるんだなと感じた。
『え・・・と他にご質問はありますか?にこッ!』
「いえ、ありません!自分で調べます!」
僕は全力で返事を返した。
『それではゲームをスタートします!よろしいですか?』
「は、はい!」
僕は女の子に、かしこまりながら返事を返した。
「!??!?」
僕の身体が光に包れ始める。
『それではお城に転送いたします。魔王様!』
「あ、ありがとう!」
僕は全身、眩い光に包まれた!!!
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