　漢文大系本、第3巻、84ページ。

　西暦304～306年。

　穎奉帝還洛。顒将張方在洛。遷帝於長安。顒廃太弟穎、更立予章王熾、為太弟。東海王越、発兵西入長安。奉帝還洛。以越輔政。成都王穎、先拠洛陽、已而奔長安。又自武関奔新野。遂北済河、収故将士。為頓丘太守所執。時范陽王虓拠鄴。送穎於虓、未幾被殺。

　穎（えい）、帝を奉じて洛（らく）に還（かへ）る。顒（ぐう）の将張方、洛（らく）に在り、帝を長安に遷（うつ）す。顒（ぐう）、太弟穎（えい）を廃し、更めて予章王熾（し）を立てて、太弟と為す。東海王越、兵を発して西のかた長安に入り、帝を奉じて洛（らく）に還る。越を以て政（まつりごと）を輔（たす）けしむ。成都王穎（えい）、先（ま）づ洛（らく）陽（やう）に拠（よ）り、已（すで）にして長安に奔（はし）り、又た武関より新野に奔（はし）る。遂に北のかた河を済（わた）り、故（もと）の将士を収む。頓丘太守の執（とら）ふる所と為る。時に范陽王虓（かう）、鄴（げふ）に拠（よ）る。穎（えい）を虓（かう）に送るに、未だ幾（いく）ばくならずして殺さる。

　司（し）馬（ば）頴（えい）は、恵帝を擁して洛（らく）陽（よう）に帰った。司（し）馬（ば）顒（ぐう）側の将軍の張方は洛（らく）陽（よう）におり、帝を長安に移送した。司（し）馬（ば）顒（ぐう）は太弟の司（し）馬（ば）頴（えい）を廃し、改めて予章王の司（し）馬（ば）熾（し）を立てて、太弟とした（304年）。東海王の司馬越は、兵を出して西に進み長安に入り、帝を抱え出して洛（らく）陽（よう）に帰った（305年）。帝は、司馬越に政事を補佐させた。成都王の司（し）馬（ば）穎（えい）は、先に洛（らく）陽（よう）を根拠地としていたが、そののち長安に逃げ、さらに武関から新野へと逃れた。そのまま北に進み黄河を渡り、もとの部下であった将士たちを取りこんだが、頓丘太守に捕らえられた。そのころ、范陽王の司（し）馬（ば）虓（こう）が、鄴（ぎよう）を拠点としていた。司（し）馬（ば）頴（えい）を司（し）馬（ば）虓（こう）のもとに送ると、ほどなくして司（し）馬（ば）頴（えい）は殺された（306年。ただし司（し）馬（ば）虓（こう）が司（し）馬（ば）穎（えい）を殺したわけではなく、司（し）馬（ば）穎（えい）は司（し）馬（ば）虓（こう）の死の直後に殺されたのであるが、『十八史略』では略されている）。