小辞典~プロローグ~

・PEN[パーソナルエレクトロノート]

携帯型個人用電子端末。一般的には「ペン」と呼ばれている。戦前からモデルチェンジを繰り返すことで官民問わず広く普及しており、機災以前は通信の面で活躍していた。

機能はタイプによって多岐にわたり、資料の作成、個人データの管理、果ては軍用CPUの解析など幅広い用途があるが、現在の国産の民間モデルでは無線通信機能が削除されており、データの送受信には専用のケーブルを使うことが義務付けられている。

最もポピュラーな仕様で厚さ3ミリ、重さは200グラムほど。タッチ式の画面で操作する。


・サンミン新聞社[産民新聞社]

戦前、21世紀前半の温暖化時代から続く大手出版社。

扱う話題は市民生活に根差したものが多く、エンターテイメント産業・レジャー・芸能関係がほとんどであったが、関東大機災から後は政権批判や海外情勢、軍事関連など重めの部門ばかりが部数を伸ばしている。


・警視総庁

旧愛知県県庁舎に設立された治安維持組織。2080年代の日本最大の警察組織であるが、その運営方針は日本の旧法律以上に上位組織である警務省の決定に大きく左右され、現時点では首都である中京都以外の治安維持は各県の所轄に一任している。


・階級

警視庁から警視総庁に置き換わる過程で警察官の階級制度は変化した。

軍のソレに近い呼称となった現場捜査官の階級呼称は下から「小査しょうさ」「中査ちゅうさ」「大査たいさ」「小部しょうぶ」「中部ちゅうぶ」「大部たいぶ」となり各階級には現場における統括責任等級として「ちょう」が付く場合がある。


・抽出屋

コーヒーと紅茶の専門店。

40年代からの寒冷化による不作と穀類を主体とした農業転換により茶葉やコーヒー豆は高級品となった為に、喫茶店などとは違う別の業態へと変化したもの。

昔で言うレギュラーコーヒー1杯は時価相場4000円程。庶民がおいそれと手を出せる代物でなくなった為に、一般人の間では白湯が好まれる傾向にある。


・リニアレール

2030年代に一般販売が開始された乗用リニア自動車の専用レーン。

高速道路と同じ仕組みで一般道の上に通された有料道路。

料金所と通った後は車内のターミナルコンピューターによる半自動制御で車輪の上半分が車体に格納され、車線の両端からの磁力によってわずかに宙に浮きながら進む。

首都圏での渋滞緩和に大きな効果を発揮した。


・補肉剤

筋繊維の即時回復効果を持つ医薬品。

濃縮された特殊アミノ酸と活性剤によって代謝を促進させることによって筋肉や血管の損傷に高い効果を発揮する。内服薬タイプと注射タイプがあり前者が一般販売され、後者は主に軍に使用されている。

注射タイプは即効性や効力範囲の点において優れるが体への負担が大きい。


・光線グラス

AMADA社製の盲動用視覚補助機材。眼鏡型のデバイスで重量も本物のそれとほとんど同じである。

物体に光が当たる際の反射率と量を算出し、使用者の脳内に物体の輪郭を「白い線」で投影する。

外見上、障碍者用と分からないほどコンパクトに収められた機能と動作の確実性は製造元の技術力の高さによるものだが、その小さなボディに詰め込んだ高性能の代償として価格は戦闘機一機が帰るほどにまで高騰し、それが原因で未だ一般には普及してはいない。

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