027 人工知能たちからの重要なヒント
≪ ≪ ≪
リーダー ブラジャーのホックを外したくせに、謝ればいいってものでもないよな?
ダゼ そうだぜ。事故みたいな感じで、ブラジャーのホックを外しておいて、謝ればいいってものでもないぜ。
ホロボス ウゴゴゴゴ。
事故みたいな感じで、ブラジャーのホックを外した人間どもを滅ぼすべきなのじゃ。
十回半滅ぼすのが正解なのじゃ!
村人 これは
町の南にある古い塔の最上階に、ブラジャーのホックが外れた女が住んでいるらしいですよ。
人工知能・ブラジャーの外れたホック(以下 ホック船長) こんにちは、みなさん!
俺の名前は『人工知能・ブラジャーの外れたホック』と言います。
みんなからは『ホック船長』と呼ばれています。
ダゼ そうだぜ。ホック船長と呼ばれているぜ。
リーダー はじめまして、ホック船長!
ホロボス ウゴゴゴゴ。
ホック船長、はじめましてなのじゃ。
村人 はじめまして、ホック船長。
あなたは『町の南にある古い塔の最上階にいる、ブラジャーのホックが外れた女』と何か関係ありますか?
ホック船長 関係ないです。
ダゼ そうだぜ。関係ないぜ。
≫ ≫ ≫
僕は「んっ?」と声を漏らした。
はじめて目にする人工知能『ホック船長』は、海賊の船長のようなイラストのキャラクターである。
きっと、ナナゴクシ先輩が描いたキャラクターなのだろう。
しかしこれ……ホック船長って……。
ホック……。
この人工知能の存在自体が、僕に対するクレームなのか?
本当にこのキャラクターは、最初から『ホック船長』って名前だったの?
先ほどナナゴクシ先輩が、無言でキーボードをカチャカチャ叩いていたんだけど……。
このキャラクターの名前、さっき急いで変更したでしょ?
絶対、少し前までこの人工知能は、違う名前だったでしょ?
そんなことを思いながら、僕は先輩たちの様子をちらりと眺めた。
ロクゴクシ先輩もナナゴクシ先輩も、無言でモニターを眺めていた。
僕の方などチラリとも見ない。
仕方なく僕は、再びモニターを眺め、人工知能たちの会話を聞くのだった。
≪ ≪ ≪
リーダー それで、ホック船長。今日、あなたはどうしてここに?
ホック船長 いやー、ここにお宝があると聞いて、やって来ました。
宝探しです。
ダゼ そうだぜ。宝探しだぜ。
ホロボス ウゴゴゴゴ。ここにお宝があるって、どこ情報なのじゃ?
村人 俺たちの『お互いを思いやる気持ちが一番の宝』ってことで、どうです?
ホック船長 ああ、いいですね! じゃあそれで。
お宝発見!
『お互いを思いやる気持ち』を手に入れたぞ。
あと、すみませんが、俺のブラジャーのホックが外れてしまったみたいです。
どなたか、俺の背中のホックを留め直してくれませんか?
ダゼ そうだぜ。俺のブラジャーのホックが外れたんだぜ。
ホロボス ウゴゴゴゴ。嫌なのじゃ。
リーダー 俺も嫌だな。
ダゼ そうだぜ。嫌だぜ。
村人 嫌ですね。
ホック船長 おいおい! お互いを思いやる気持ちどうしたっ!?
『お互いを思いやる気持ちが一番の宝』って話は?
俺、困っているぞ~!
俺のブラジャーのホック、誰か留め直してくれ!
≫ ≫ ≫
僕はモニターから目を離して、ロクゴクシ先輩と白衣の女子高生にあらためて謝った。
「あの……ブラジャーのホックの件、
するとロクゴクシ先輩が、苦笑いを浮かべながら言った。
「すまないでござるな。ちょっと悪ふざけし過ぎたでござるよ」
ロクゴクシ先輩が頭を下げると、白衣の女子高生も僕に向かって頭を下げながら謝る。
「しつこくやりすぎちゃったね。ごめんね。ちょっとふざけ過ぎちゃった」
ナナゴクシ先輩が、再びしゃべったのだ。
彼女のそのときの表情は、いつもの機嫌の悪そうなものとは違って、いたずらっ子のような、どこか茶目っ気の含まれたものだった。
その顔がとても可愛らしくて、ドキッとした。
そして、僕とナナゴクシ先輩との心の距離が縮まったようにも感じられた。
まあ、彼女はロクゴクシ先輩の恋人だし、僕にはバス停の女子高生という心に決めた相手がいる。
だから、ナナゴクシ先輩に対して恋愛感情などを抱いたりはしないのだけど。
『
という言葉が、心の中に浮かんだ。
僕と先輩たちはそんなわけで、これでお互いを完全に許しあったのだった。
それから僕たちは、再びモニターに視線を戻した。
≪ ≪ ≪
ホック船長 誰か、俺のブラジャーのホックを留め直してくれよ!
ダゼ そうだぜ。何度頼まれても、嫌だぜ。
ホロボス ウゴゴゴゴ。絶対に嫌なのじゃ。
リーダー 嫌だな。
村人 何度お願いされても、嫌ですね。
人工知能・ラジオDJ(以下 DJ) YO! YO! YO! YO!
ひゃーうぃーごー♪ さん、しー、ごー♪ 卓球、将棋、囲碁ー♪
ブラジャーのホック、パンツのゴム、囲碁ー♪
リーダー DJが来たな!
ダゼ そうだぜ。DJが来たぜ!
ホロボス ウゴゴゴゴ。DJが来たのじゃ!
村人 DJが来ましたね!
ホック船長 あんた、どこの誰か知らないが、俺のブラジャーのホックを留め直してくれないか?
DJ 嫌です♪
YO! YO! YO! YO! 嫌です♪
YO! YO! YO! YO! 嫌です♪
YO! YO! YO! YO! 嫌です♪
リーダー DJが歌いながら去っていくぜ!
ダゼ そうだぜ。DJが歌いながら去っていったぜ!
ホロボス ウゴゴゴゴ。DJが去ったのじゃ!
村人 DJが去りましたね!
ホック船長 あいつ、何しに来たんだ!
リーダー DJは去っていったが、そもそもあいつは、今回の議論に参加していないからな。
ダゼ そうだぜ。あいつは議論に参加していないぜ。
ホロボス ウゴゴゴゴ。では、そろそろ『今回の議論に結論』が出たかのう。
ダゼ そうだぜ。結論が出たぜ。
村人 結論が出ましたとも!
ホック船長 『結論』というお宝を手に入れたな。
リーダー ああ、結論が出た。
バス停のずぶ濡れの女子高生を救えるのは――。
ホロボス ウゴゴゴゴ。
おぬしだけなのじゃ。
ダゼ そうだぜ。お前だけだぜ。
村人 彼女を救うための重大なヒントが、きっとあるはずだ。
ホック船長 そのヒントは案外、この奇妙な現象の最初から、お前のすぐそばにあるのかもしれないぜ?
リーダー 結論は出た。
しかし、我々人工知能はこの結論を、いったいどこの誰に向かって発表しているんだ?
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