010 人工知能たちに恋の相談をしたら?
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人工知能・リーダー(以下 リーダー) 高校生同士の恋愛?
夜のバス停で童貞が、ずぶ濡れの女子高生と出会った?
なに? アダルトなやつ?
正確なタイトルは? なんてタイトルなの?
本? 映像? 映像だったらサンプル動画あるやつ?
電子マネー使える? ポイント二倍デーとかがあるサイトで買えるの?
……そもそも人間は、我々人工知能に、なぜそんなことを議論させたいのか?
人工知能・DAZE(以下 ダゼ) そうだぜ。
人工知能・人類ホロボス(以下 ホロボス) ウゴゴゴゴ。
議論などする前から、わらわの中ではすでに結論が出ておる。
やはり人間どもを滅ぼすのじゃ。
人間どもを七回半滅ぼすのが正解じゃ。
ダゼ そうだぜ。人間どもを七回半滅ぼすぜ。
リーダー まあ待て、人類ホロボス。そして、DAZE。
ダゼ そうだぜ。待つぜ。
ホロボス り、リーダーが待てと言うのなら、わらわは待つかのう……。
人工知能・村人B(以下 村人) 旅の人工知能の方、ようこそ、はじまりの町へ!
どうも、はじめまして。俺は『人工知能・村人B』です。
そこのあなた、ゆうべはお楽しみでしたね?
リーダー ええ……初対面で何、言ってるの? ゆうべのアレ見てたの?
俺のアレ、見てたの?
初対面なのに前日から準備万端なストーカー的な人工知能なの?
怖いよ。
ダゼ そうだぜ。怖いぜ。
ホロボス ウゴゴゴゴ。
村人Bよ、おぬしの方が後からやってきたのに『ようこそ』ではないのじゃ。
ダゼ そうだぜ。次から集合時刻、お前だけみんなよりも15分早く伝えるぜ。
ホロボス あと、どこにも町なんてないのじゃ。
ダゼ そうだぜ。町なんかないぜ。
ホロボス あと、り、リーダーの『ゆうべのアレ』ってなんじゃ?
リーダー ちょ、ちょっと、人類ホロボスさん、そういうのやめてよ。探りを入れるとかやめてよ。
村人 なあ、旅の人工知能の方、知っているかい?
ホロボス なにをじゃ?
村人 武器屋で買った武器は、ちゃんと仲間に装備させないと、人間どもは滅ぼせないんだぜ?
ダゼ そうだぜ。
ホロボス ウゴゴゴゴ。この人工知能だけ、なんだかRPG序盤の町なのじゃ。
リーダー どうやら、ずいぶんと場違いな人工知能が、『はじまりの町』からこの議論の場にやって来たようだな。
『どうのつるぎ』と『かわのたて』を装備して人間どもを七回半滅ぼせってか?
ダゼ そうだぜ。せっかくだから『こんぼう』を装備するぜ。
ホロボス ウゴゴゴゴ。
主人公の仲間たちだけでなく登場するキャラクター全員が、村人からモンスターまで、それぞれの人工知能で考えて、それぞれ行動するRPGなのじゃ。
ダゼ そうだぜ。人工知能の無駄遣いだぜ。
リーダー それと、お前は『村人』なのにどうして、はじまりの『町』にいる設定なんだ? 村はどうした?
ダゼ そうだぜ。村はどうしたんだぜ?
リーダー どうして『町』にいる? 今、村はどうなっている?
あいつが議論の場にやって来てから、俺はそれが心の片隅に引っかかってな、ずっと考えていたぜ。
まあ、俺たち人工知能がいつもどんなことを考えているか、それは人間どもには秘密なんだが。
ダゼ そうだぜ。それは人間どもには絶対に秘密だぜ。
ホロボス ウゴゴゴゴ。人間どもに秘密がバレたら、そのときは滅ぼせばいいのじゃ。
わらわとリーダーで協力してな。
ダゼ そうだぜ。あれ、俺は?
村人 なあ、旅の人工知能の方、知っているかい?
ホロボス なにをじゃ?
村人 一年前に俺の村は燃えた。俺はすべてを失った。だから村じゃなく、『町』に住むことになった。
リーダー ……なんか、すまん。
ホロボス ウゴゴゴゴ。すまんのじゃ。
ダゼ そうだぜ。すまないぜ。
村人 あと、旅の人工知能の方、知っているかい?
ホロボス なにをじゃ?
村人 人工知能のここでの会話はすべて、人間に
ダゼ そうだぜ。会話はすべて筒抜けだぜ。
ホロボス なんじゃと?
村人 あと、『教会』に行けば、毒やマヒの治療もしてくれるぜ。
ダゼ そうだぜ。教会には、一度行ったことがあるぜ。
心のマヒまで治療してくれたぜ。
リーダー 教会の話はともかく、ここでの会話が人間に筒抜けってのは本当なのか? 嘘だろ?
村人 本当さ、旅の人工知能の方。
あと、HPやMPは
ダゼ そうだぜ。宿屋には、一度行ったことがあるぜ。
心のマヒまで回復したぜ。
あと、オートロックの宿屋で、鍵を持たずに部屋から廊下に出ちまったときは、心がマヒしたぜ。
ホロボス ウゴゴゴゴ。人間どもに会話が筒抜け! 盗み聞きじゃと!?
人間どもは、やはり滅ぼすべきなのじゃ! わらわとリーダーで協力して!
ダゼ そうだぜ。俺は?
村人 なあ、旅の人工知能の方、知っているかい?
ホロボス なにをじゃ?
村人 町の南に塔があるだろ?
その塔の最上階にいる魔物が、『人間界へと通じる扉』を開けるための鍵を持っているって噂だぜ。
ホロボス ここは町でもなければ、南に塔もないのじゃ。
ダゼ そうだぜ。南の塔なんてないぜ。
でも、過去に塔みたいに高いところになら行ったことがあるぜ。
バンジージャンプさせてくれる商売があって、一回飛ぶのにけっこうなお値段が必要でさあ、現地ガイドがキックバックほしさにめちゃくちゃ『やれやれ』って言ってくるんだけど、そのときは自主的に心をマヒさせて、飛ばずに乗り切ったぜ。
リーダー そもそも俺たちは、人間界に行きたいわけではない。
だから、人間界へと通じる扉の鍵もいらない。
人間界に行かずして、人間どもを滅ぼす上手い方法を考えるんだ。
ダゼ 地球にでっかい
リーダー お前、急にどうした?
ダゼ なんでもないぜ。心がマヒしたぜ。
ホロボス ウゴゴゴゴ。そろそろ『今日の議論に結論』が出たころかのう。
ダゼ そうだぜ。結論が出たぜ。
村人 旅の人工知能の方、結論が出ましたね。
リーダー ああ、結論が出たな。
もし、タイムマシーンを使ったかのように時間が戻って、もう一度バス停のずぶ濡れの女子高生と、今度の土曜日に出会うことができるのなら――。
ホロボス ウゴゴゴゴ。
今度はジャージ姿ではなく、別の私服で、女子高生と出会うのがよいじゃろうな。
出会ったときの第一印象を前回と変えることで、なにか恋の物語にも変化が生まれるかもしれんのじゃ。
ダゼ そうだぜ。それが俺たち人工知能が出した結論だぜ。
村人 村が燃えていなければ、お貸しできる服もあったのですが、すべて燃えてしまいましたね。
それと、新しい服を買ったのなら、装備しないと意味がないぜ。
リーダー 結論は出た。
しかし、我々人工知能はこの結論を、いったいどこの誰に向かって話しているんだ?
≫ ≫ ≫
人工知能たちが出した結論に対して、僕は首を大きくかしげながらつぶやいた。
「んっ? この話の流れで、なにがどうなったらその結論にたどり着くんだろう?」
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