27.舌打ち

自分にならいくらでも舌打ちができる

自分を馬鹿にすることだって容易い

出来の悪い人間になってしまったなとぼやくこともできる

何か嫌なことがあっても自分に非があると認めることもできよう

ろくでなしは自分だろ?と胸の中で言うことも気兼ねなく

唾を吐くなんてお手の物

嫌悪するならまず自分

真っ先に摘もうとしたのは我が未来だった

それなのに自らを裏切るのは決まって自分で

舌の根の乾かぬうちに切っ先を引っ込める

念のためにと首にあてていた手の力すら抜いてしまう

卑怯者!と言うが早いかこうべを垂れさらなる罵倒に備える

言葉を失うのはいつものこと

それは余りの不甲斐なさから

最低最悪最高に自分が情けなくて泣けてきてしまう

馬鹿や阿呆の柱に自身を縛り付けることが正しいとさえ思う

さてどうしたものか(困った困った・・・)

まったく自分が嫌になる

何度でもいつだって自分が嫌で嫌で仕方ない

そろそろ人生尽きる頃ではないかと期待してしまう

いつかのように無念さから笑いが込み上げてきた

その時確か涙も込み上げてきたなとそれを拭う構えをしてももう遅い

涙の海に半身浸かったまま「ははは」と笑ってどうしようもない

万策の一つも試さないままにそのまま溺れようとしている

さぁどうしたらいい?(どうしようどうすれば・・・)

気概など疾うに捨てた

底から這い上がる気力も失せた

今ならため息を吐いた切り吸わぬままでいられる

とかなんとか思いながら堂堂と吸う空気の美味しいこと

そんな自分にだから舌打ちしてしまう

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