25.さる人いない中で

善人がひとりおりました

悪人もまたひとりおりました

いないのは善悪を決める人だけでした


面構えは一端のそれ

心構えはどうもそれとは異なる

善人面した悪人か悪人面した善人か・・・

百見は一声になんとやら

けれどいざ声をかけてみたが判断つかぬ

どうも話してみてもどっちか判らぬ


それもその筈その者は善悪を決める人ではないのでありますから

「いないのは善悪を決める人だけ」と申しました

さる人いない中で決めてよい善悪などあろう筈もございません

そもそもの話判断しようとすること自体ご法度

面構えは勿論のこと心構えをとやかく言うなど言語道断

その面洗って出直せでございます

所詮善人か悪人でしかないのですから黙して面を上げておればよいのです

善悪を決められる人など端からいはしないのでありますから

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