24.虚構

「寂しい」とか 「悲しい」とか言わないでいたら

いつか 寂しいとも 悲しいとも思わなくなるような気がした

そういう感情を 一体いつから煩わしいと思うようになったのか


もう膝を抱えたり そこに顔を埋めたりすることはなくなった

煩わしい感情は上手に隠して 鏡の前では強かに涙を拭う

堪えたところで どうせ溢れてしまうのが感情だから 最低限に留めるだけ

一滴の涙に 寂しさ全部を 悲しさ全部を込めて流せばいい


越えられない壁などないと思っていても

煩わしい感情を抱えたままではそう容易ではない

一人より二人だと思っていた人が 一人になった時 力はきっと一人分も出ない

寂しさが一気に押し寄せてきて 悲しさも呼び寄せたなら 同盟を結ぶだろう


あれからどれだけ経っただろう 時計の音に耳を澄ませる

あれからどれほども経っていない 胸に手を当てそれを知る

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る