20.魂願

虫一匹喰わぬ一生を全うできたなら 人一人殺さぬ人生を歩めたなら

そう願って止まない虫も人も魂の塊だ


虫が虫を喰うのは生きる為 人が人を殺すのは己が為

動機は違っても 喰う殺す にさほど差異はない


とは言え 虫と人は その僅かな違いから分かり合えることはなかった

双方の魂の拠り所は同じであった と解明されたのはそう昔のことではない筈なのに・・・


又 虫と人だけでなく すべての生き物の魂までもが同一箇所にあった

その事実を明かしたのは なんと魂自身であったと謂われている


元来 すべての生き物は太陽なくしては生きられない ということは常識

さらに 常識というのはそう簡単には変わらない ということもまた常識


何食わぬ顔で 魂を喰らう

事も無げに 魂を殺める


しかし そうではないと虫も人も言う

次の獲物をその眼に映しながら 舌なめずりしながら・・・


虫一匹喰わぬ一生を全うできたなら 人一人殺さぬ人生を歩めたなら

そう願って止まないのは 銘銘の魂の方だったのかもしれない


虫が虫を喰うのはある意味定め 人が人を殺すのは紀元前から続く呪い

太陽にでも焼かれない限り 虫も人も 定めにしろ呪いにしろ逃れられはしない

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