5.気休めの言葉

気休めにもならないことを言うなら 「大丈夫、ちゃんと死ぬから」ってこと

この先どんなことが待ち受けているとしても ちゃんと死ぬ ちゃんと終わるってこと


永遠に続くものなんてないのに それを失念しがちな僕は 気休めにもならないことを言われて動揺してしまった

その動揺を隠さなければと とっさに僕は 出来るはずもない心を無にするなんてことをやってのけた

でも 本当は そんなことをしなくても いつかやってくる終わりを待てば良かったのだ

いつか いつか それは一体いつか・・・ なんて冗談でも言っていれば やってくるのだろう


君は「大丈夫、ちゃんと死ぬから」と言って 言葉通り死んでいったけど 何も大丈夫なことはなかった

「大丈夫だよ」とか 「へっちゃらだよ」とか 弱気なことを言う君を見たことがなかった

きっと その所為で・・・ なんて言ったら怒られるのかもしれないけど きっと その所為で 僕は 今泣きそうになっているのだ


気休めの言葉に縋ろうにも 「大丈夫」は逆効果で 「へっちゃら」では全然なかった

永遠に続くものがあるとしたら それはきっと 今この時 なのではないかと疑ってみても 何も終わりそうにはない


ただ時が経つのが恐かった 無限の時の中で 時が経って 何も変わらない中で 何かが変わっていくのが恐かった

いつか 気休めの言葉に縋れるようになって 君の「大丈夫?」に「うん」と答えられるくらい へっちゃらになっていってしまう気がした――

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