4.心の花

窓に映った花を見てはっとする

目に映ったのは枯れかけている花だった

芽が出るまで 花が咲くまで 育ててきた筈なのに どうして・・・?

あんなに鮮明な色をしていたのに 今は こんなにも色褪せてしまって・・・

でも そういえば思い出せない

芽が出るまで 花が咲くまで 育てたことは覚えているのに

昨日や一昨日に 水をやった覚えがない

陽も射さないこんな場所に いつ置いたのかも忘れてしまっている

物覚えは決して良い方ではないけれど

この花を愛で 慈しんだことは 確かに覚えている

芽が出るまで そう・・・

少し湿った 手の温もりの残る土に 種を蒔いたことを覚えている

いつの間に愛でなくなってしまった?

いつから慈しむのをやめてしまった?

覚えていることは数少ないけれど この花のことは覚えている

明日はどうか分からない でも 今はまだ・・・


ふと窓の方を見る 窓の外に漆黒の闇を見つける

その闇が いつか閉ざした自らの心と酷似していることに気付く

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る