妊娠線の予防①……
前々話で、ティシュー・エクスパンダー(組織拡張器=生理食塩水風船)によって、皮膚なんて簡単に伸びるものだとお話しさせていただきました。
しかしこの時、伸ばした皮膚に妊娠線のようなものは生じません。
それはもう急激に、びよーんと伸ばしちゃうのに。
妊娠線が出現する重要な理由として、妊婦さんの血中副腎皮質ホルモン(ステロイドのひとつ)の濃度が上がっていることが考えられています。
これは皮膚組織の代謝を下げる作用があります。
妊娠中いろいろと重要な働きをするために血中に増えているのですが、お腹の皮膚においては、妊娠線を生じやすくしていると考えられる。
つまり、お腹が大きくなる前から、副腎皮質ホルモンと反対の作用を持つ物質を使用すると良いかもしれない。
それは、代謝を上げて、細胞を活発にするもの。
1)甲状腺ホルモン。
2)線維芽細胞増殖因子(ヒトbFGF)や、エストロゲン
3)活発にする何らかのモノ
4)とにかく真皮を分厚くするモノ
こういうものを、お腹に塗ったり注射したりしていれば、もしかしたら妊娠線が防げるかもしれません。
でも。
1)
甲状腺ホルモンなんかを妊娠中に投与するわけには絶対いきません。
妊婦のホルモンバランスを崩したり、胎児に影響を与えてしまいます。
皮膚だけに投与したらどうかとも考えますが、危険。
2)
ヒトbFGFは「フィブラスト」という薬で、わたしはお年寄りの褥瘡に毎日スプレーしていました。
潰瘍面に良好な肉芽を盛り上げてくれる、良い薬です。
けれど、開放した創面に作用させることと決まっており、皮内や皮下など閉鎖空間には投与してはいけません。
良性腫瘍を生じた症例がいくつかありますから!(科研製薬のひともアナウンスしています! 一部の美容外科ではムネの脂肪移植の際に投与していますが、やめてください!怒)
エストロゲンも線維芽細胞を活発にするので、皮膚に投与したらいいかも。
でも、そもそも妊娠中はエストロゲン濃度が凄まじく上がっていますから、あんまり意味はないかも……。
ならば、ヒトbFGFもダメかも……。
そもそも、これらが働くのは皮膚が破壊されてからのことなので、予防ではないのかも……。
妊娠線は身体によって「ケガ」とは認知されていないような気がしますし。
3)代謝を活発にするものとしては、唐辛子系。
もしかしたら効くかも……。
4)
真皮を厚くしてくれる物質があります!
ビタミンAの誘導体である「レチノイン酸」です。
オバジ(舶来化粧品)などにもごく少しだけ入ったりしていますが、ごく低濃度なのでほぼ効いていません。
高濃度のレチノイン酸を肌に塗りつづけ、赤くなってカサついてひどいことになっても挫折せずに、3ヵ月くらい苦行をガマンして継続すると、お顔の真皮が少し厚くなります。
シワ改善、予防のひとつの方法です。
妊娠線予防にも寄与するはずです。
けれど!
レレチノイン酸には、催奇形性があります。
胎児に先天異常を生じる可能性があるので、妊娠中は絶対禁忌です……(異常は動物実験においてのみで、ヒトには実例はありませんが)。
全滅……。
すみません……。
次回、妊娠線の予防②です……。
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