妊娠線について

出産後のお母さんのお腹に出来ている、たくさんのタテ線。

妊娠線といわれるものです。

妊娠の中期以降、急激にお腹が大きくなってくると出現します。

大半の妊婦さんで見られます。


この悩ましい線は、じつは瘢痕(キズアト)ではありません。

引っ張られて破壊され、伸びてしまった皮膚そのものです。

全体にまんべんなく伸ばされれば、一部で破壊的な変化は起きないのですが、現実はそうではなく、どこか弱いところが一気に壊れてしまう。


瘢痕ではないから、盛り上がって硬いことはないし、カユかったり痛かったりもないです。

最初の時期に赤みを帯びているのは、皮下の拡張した毛細血管の色が透けているためで、出産後しばらくすると血管拡張がなくなり、周囲の色に近づきます。

数年〜数十年経過するとかなり目立たなくはなります。


けれど、引っ張られたことで繊維組織が壊されて、しなやかさがなくなっています。

痩せたときに、それにあわせて縮んでくれない。

線の中でさらにシワシワが寄る。


このいまいましい妊娠線を、正常の皮膚に変化させたい。

ちまたにあふれている「スーパークリーム」とか「超高性能軟膏」とか、あるいは「特殊レーザー」によって、そういうことが可能でしょうか?


残念ながら……。


移植手術によらずに、今ある妊娠線を正常な皮膚に変えることは、現時点では不可能です。

IPS細胞技術がもっともっと進んで、幹細胞技術が新しいステージに登れば、組織を別な組織で次第に置き換えていくことが可能になるでしょう。


じゃあ、手術で上手に切り取って縫ってキレイにすればいいじゃん?

瀬夏さん、大きなこといっててずいぶん自信あるようだから、できるんでしょ?

とお思いの、あなた。

わたしは切って取って縫うのは得意です。

形成外科医たるもの、自分が一番うまいと思ってないとダメです。


けれど。

お腹に何十、何百とある妊娠線を根こそぎ切って取って縫って。

細く細くキレイなキズアトになったとしても、それが縦に何十、何百と並んでいて、美しいといえるでしょうか。


仮に10本、いや5本として、どうでしょうか。

美しいでしょうか。

まあ、太いもの5本くらいを1本に置き換えるなら、わりと良い気がしますが。

でもやはり、手術で作った細いキズよりも、妊娠線のほうが断然ビューティフルです。

外見上も、意味の上でも。

地球上にヒトの命をつないだ証です。

だれかの人生をクリエイトした証拠の品です。





とかなんとか、勝手なことをいう、わたし……汗。

妊娠線の予防については、実現可能性が少しだけあるかもしれません。

次回は、妊娠線の予防について。

あ。肉割れや、ためらい傷についても書きます。汗











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