キズアト(6:キレイにするには①)

キズアトは瘢痕組織と呼ばれます。

顕微鏡で組織を見てみると……。


次のように書くと、みなさんは驚かれるかもしれません。


「キズアトは皮膚ではない」


瘢痕組織は皮膚とはいえないのです。

皮膚が持っている皮膚付属器を持っていません。

脂腺、汗腺、毛包などです。

乾燥しやすく、毛が生えていません。

(もし毛がある場合、それは瘢痕ではない可能性が高いです)

感覚神経末端も、正常の分布をしていませんし、固い瘢痕組織に接していたり、包まれていたりするので、過剰に反応して「イタい、かゆい」という信号を脳に送りがちです。

平坦な表皮のようなものに覆われていますが、真皮とはいえない繊維の塊で、

繊維組織の走行もそろっておらず、硬いわりには圧迫、進展に対してもろい。


皮膚でないものを正常な皮膚に変化させる技術は、現在の西洋医学にはありません。

切除して正常な皮膚に置き換える(皮膚移植)か、切除して閉じる(縫縮)かしかありません。

つまり、あらたな瘢痕組織(キズアト)を生じさせてしまうほかないのです。

IPS細胞技術、あるいは幹細胞技術が将来解決してくれるかもしれません。

瘢痕内に幹細胞を埋め込み、それが増殖して、周囲への働きかけもしながら、次第に新たな真皮と表皮と皮膚付属器を形成する。

これがひとつの理想です。


現状は「切って、取って、縫う」か「皮膚移植」。

個人的には、皮膚移植はできるだけ避けたい。

日常のキズアトや、外科、整形外科での手術後瘢痕は「切って、取って、縫う」。

長いキズアトでも、幅が大きくなければ容易です。

そして術後圧迫、トラニラスト。

ちょっと肥厚性になってきたらステロイド(「ケナコルト」という微粒子懸濁状液体)の局所注入。


では、幅の広いキズアト、まん丸いもの、タトゥーなどはどうするか。

まん丸いものを1回で切って取って縫おうとすると、術後のキズアトの長さは。もとのキズアトの直径の3倍以上になってしまいます。

これは、細長い紡錘状に切り取らないと、そのあと縫い合わせたときに「平ら」にならないからです。

紙を丸く切り取って、穴の左右を合わせて閉じようとしても平らになりません。

ピコピコっと長短が両端が尖ってしまいます(これをDog Earドッグ・イアーといいます)。





次回②につづく。

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