さらば、52才
小さな、だけど、自分にとっての杖だったプライドが
踏みにじられて、がっかりした。
だけど、大人の常識で、
我慢に我慢を重ねていたら、
だんだん世の中が自分から乖離してしまって、
絶望してしまった。
新しい夢を見ようしてももう、
何かそのようなものを稼働させる工場は
壊れてしまっていて、
どうにもならない。
もう、こんな世界とはおさらばしたい。
そんな、52才だった。
早い話が、こういうことだ。
大好きな服が似合わなくなってしまって、愕然としている、ということ。
鏡に映る自分を救うには
クローゼットの中の大事な服を、
みんな捨てなくてはならない。
え。
高かったのに。
良いものなのに。
そうだろうけど、
もう、全部、
今のあんたに似合わないんだから。
そういうことだ。
さらば、52才。
きらきらしていた人生がくすんでしまったんじゃなくて、
今のあんたに似合わないものに
囲まれているんだっていうことだ。
新しい服を買うために、すべて捨てなくてはならない。
新しい家に住むために、ここを一旦、壊さなくてはならない。
そして今の自分に似合う、
新しいものを、手にしていこうじゃないか。
さらば、52才。
はいはい、もうわかったよ。
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