第2話 小さすぎるこの星

そもそも私は、落し物なのではないのかと思っている。

ぽろっと上からこの星に落ちてしまって、

ここにいるのではないかと思うのである。

だからといって、私は何も自分がかぐや姫だとか、

星の王子ならぬ王女なのだ、などと言い張るつもりはない。

だけど、上から来たのは確かだ。

なぜなら、私が安心するのは、飛行機に乗って、雲海の上にいる時だけだからだ。窓のすぐそこに、月があって、ずっと私を見ている時には、

『見ていないで、私を早く、助けてくれればいいのに』と

テレパシーを送るけど、

一向に助けは来ない。

私はモニターとして、この星に潜入捜査をさせられているのかもしれない。

私に内臓されたカメラで、この星の生活ぶりを、空の上の向こうで誰かが、

楽しんでいるのに違いないと思う。

 何がいやって、この星の狭さだ。

狭すぎて、そこに生物が多すぎる。

大好きな飛行機に乗って、地球の隅から隅を観たけれど、

どこも似たりよったりで、呆れてしまうくらいだった。

何が似ているか。

どこでも人間たちは、富を得ようと必死になる。

富というのは、金や銀だ。

金や銀は食べることができないというのに、誰もが欲しがる。

金をもらうと、人はとても幸せそうに微笑む。

富に縁がないものたちは、みじめな顔をして道に座っている。

ある者は我が子の腕を片方切り落としたり、時には殺してしまって、

同情を買おうさえする。

なんというつまらなさか。

私はいつだって悲しくなる。

かつて私が、(これは消された記憶のあいまいなものなのだが)

空の向こうで暮らしていた時には、

すいきんちかもくどってんめいかい、という遊びがあって、

私は友だちと、こんな星、ケンケンパで、ひとっ飛びにしていたものだ。

まるっこい星たちを、ぽよんぽよん飛んだり蹴ったりしていたのだ。

つまり私の喜びは、この宇宙という無限を、泳ぎまわり、いろんなコントラストを楽しむことにあったのだ。

私は巨大で、そして繊細で、何にでもなれたのに。

少なくとも今、一番苦しいのは、

飛べなくなったこと。

重力にのしかかられて、地面にへばりつく。

私は今、小さな微生物となり、

小さな金を、日々もらっている。

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