元役人の吟遊詩人と会って、取ったリスクが自分を成長させてくれると感じた話
皆さん、どうも! 異世界プロブロガーのはばけんです!
え、更新追ってるから毎回挨拶しなくてもいいって? いえいえ、初めての方にも優しく、それが当ブログのモットーですからw
さて。昨日、ちょっとした出来事から、人生、というか生き方について考えるきっかけをもらったので、今日はそのことについて書いてみようと思います。
お昼に散歩してたんですね。散歩ってすごくいいです。暇だからというより、「何もしない」をする、っていうのかなあ。
公務員時代、お昼食べた後にたまに歩いてたりしてたんですけど、常に頭の中では「ああ、午後はあれやらなきゃ」「会議、結構長くなりそうだな」とか考えてたんですよね。そうじゃなくて、頭をホントに空っぽにして歩ける。
そうすると、通り過ぎる人達と挨拶したり、横に生えてる木々を観察してみたり、余裕が生まれるんですね。
でね、隣の町の大きな広場に行ったんです。かなり幅の広い道から繋がる、朝市やお祭りもできるようなスペースなんですけどね。そこで、ずっと歌を歌ってる男の人に会ったんです。
所謂ストリートミュージシャンみたいな感じですかね。完全に手作りで少し形の歪な、アコースティックギターみたいな弦楽器を弾いたり、前に僕も買ったドンカって名前のハンドパンみたいな楽器を演奏したりしながら、楽しそうに声を張って歌っている。
特にやることもなかったので、近くの芝生に寝そべったり、通りに作られた石のベンチに座ったりしながら、到着した昼から歌い終える夕方まで、ずっとその人の歌を聴いてました。
歌は魔法でも日本語に変換できないみたいで、何を言ってるかは分からないけど、何か惹きつけられるものがあったんです。
みんな彼にお金を投げていました。休憩中、酒場のマスターらしい、真っ白な顎ヒゲのおじさんなんか「今夜はうちで演奏してくれよ!」と誘ってました。笑
夕方くらいになると噂を聞きつけたのか、広場が人でいっぱいに。ちょっとしたライブみたいな感じでした。楽器と声だけのシンプルな演奏だったけど、彼の通る声に情感が乗っているというか、とにかく表現力がすごかった。
演奏が終わったあとは全員で拍手。何人かの人が「今度家に来てよ! 家で歌って!」と招待したりしてて。
で、結局夜は酒場で歌うことにしたらしく、それまで少し休憩してたんで、思い切って声かけてみました。僕より少し年上、20代後半くらいの、白っぽい金髪が綺麗な男の人です。
「カッコよかったです! このあたりに住んでるんですか?」
「あ、いえいえ。家はなくて、国中歩いて歌ってるんですよ」
ここで僕は「あっ、これ知ってる!」と気づきました。ファンタジーの漫画でよく見た、放浪しながら歌を歌っていく「吟遊詩人」ってやつです!
小さいころは剣士や魔術師に憧れてましたが、大学くらいからはむしろ何者にも縛られない吟遊詩人の方に憧れてました。笑
「作曲も作詞も演奏も歌も、全部独学だから、これで合ってるのか分からないけどね。でも歌の中で、ユリーガノの土地や文化について触れてるんだ。強すぎない程度に、みんなで共存していこうってメッセージも込めてる。だから、響く人には響くんじゃないかな」
そんな風に自分を分析する彼はとてもカッコよくて。でも、本当に驚いたのはこの後なんです。
「若いときから、ずっと歌って回ってるんですか?」
「いいや、実は結構最近なんだよ、始めたの。それまでは国の徴税局に勤めてたんだ」
「ええええっ!」
なんと、元お役人でした! しかもお金を扱うってことは結構偉いんじゃ……?
皆さんも気になりますよね? なんで彼が辞めたのか。
ユリーガノは日本に比べるとビジネスって観点ではほぼ発展していなくて、株式会社みたいな概念もありません。家族経営のお店が一般的です(株式会社の存在をきちんと理解したい人、経済学部に行こう!)
つまり、社長や一流企業みたいな存在がないわけで、相対的に「役人」の価値というか周りからの評判は、日本の公務員よりずっと高い。
それを辞めて、吟遊詩人になった。当然僕もその理由が気になって、聞いてみたんです。
すると彼は、こっちを見ずに、真っ直ぐ空を見ながら、こう答えてくれました。
「徴税局でやってたのはね、決められた仕事だったんだ。税を計算して、督促をする。その仕事自体は必要なんだよ。そのお金で上下水道の整備や魔術師の研究が賄われてるからね」
「でも、自分がやってるのはそれだけだった。それだといずれ、計算が速かったり、督促のコミュニケーションがうまかったりする人が出てきたら、その人に抜かれて後塵を拝することになる」
「何となくもやもやしながら過ごしたんだけど、あるとき地方に出張行った時に、吟遊詩人が酒場に来て歌っててさ。心の中で、何かがストンと落ちたんだよね。ああ、自分のやりたいことってこれかもなって」
「僕はこの国の、人間と魔物が共存してる文化が好きで、それを守りたかった。税はそれを財政面から支えるっていう手段の1つなんだ。でも、自分が他人に取って替わられる不安を抱きながら仕事するより、自分も直接想いを口にした方がいいんじゃないかって」
「もちろん、吟遊詩人になるなら、それで食べていく覚悟が必要だよ。でも、僕には徴税局の経験がある。出張で国中を巡った。その経験を歌にしていけば、自分にしか出来ないことをやっていれば、それが価値になるんじゃないかなって。で、敢えて危険な道に行ってみたんだ(笑)」
僕はその一言一言に納得していました。同じことを考えていたから。
リスクをとらずに、誰もが出来る仕事をしていても、それなりの人生にはなる。でも僕は、リスクをとることで、「自分しかできないこと」を手に出来ました。彼もきっと、同じようなことを考えた「仲間」だったんですね。
少し哲学的な言い回しになるけど、これからは、「リスクをとらないこと」がリスクになると思います。僕も、今の状況に甘んじず、どんどんリスクを恐れずに進んでいきたいなあと改めて思いました。
夜は一緒に酒場に行って、僕も酔った流れで歌わせてもらいました。笑
日本語で適当に歌詞作ったし、歌は言語変換されないので、酒場のみんなも何言ってるか分からなかったと思うけど、なんだかんだ大ウケ。おひねりをもらったりし、1杯ご馳走になったりして。
日本でやったら「変なヤツ」で終わることも、ここなら言葉の壁もなしに受け入れてもらえます。こういう自由な環境も、リスクをとった結果勝ち得たものなんだなあ。
ちなみに、彼の名前は最後まで聞きませんでした。ヒントもなしに、探すこともできないまま、またどこかで会えるのを楽しみに待っていようと思います。
よし、その時までにユリーガノの言葉覚えて作詞するぞ!←
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます