第7話 「え!!え?えぇぇぇぇぇ~~~~~っ」
「ただいま」と樹が、
そして「お邪魔します」と王子様が言いながら、2人は戸口をくぐった。
だが、家の中は真っ暗だった。
‶パチっ″どこからかスイッチを入れる音が聞こえ、玄関が証明に照らされていた。
「上がって」
「うん」
そう言われ、靴を脱いだ上り口には複数の靴が並んでいた。
が、樹が証明を点けながら歩いていく家の中は静まり返り、人の気配が感じられなかった。
「あの、遠慮しないでね。お父さんもお母さんも出掛けていないから」
「そうなの?」
「うん。私の部屋、2階なんだ」
そう言いながら階段を上がっていく樹の後ろをついていく。
しかし、というか初めて、しかも早朝に押しかけてしまったということもあり、少々遠慮がちに階段を上がる王子様が2階に着いた時、樹はちょうど自分の部屋のドアを‶ガチャ″っと開けるところだった。
「どうぞ、その、ちょっと、・・・というか、かなり狭いけど」
「・・・お邪魔しまぁす」王子様は、まるで初めて彼女の部屋を訪れた男の子みたいな神妙な面持ちで樹の部屋を覗き込んだ。
「・・・わぁ」そして、思わず声が口から漏れていた。
部屋の中は、四方に置かれた本棚にはコミックや小説やディスクケースがびっしりと並び、空いた壁のスペースにはポスターが所狭しと貼られていた。
「その、とりあえず座ってて、コーヒーいれてくるから」
「いや、あの、おかまいなく・・・」と王子様が言い終わるより早く、樹は開けた衣装棚からスエットの上下を
「あ~、どうしよう?。てか、コーヒー」
樹は作業服を洗濯機の中に脱ぎ捨てスエットに着替えると、お湯を沸かし、2つ並べたマグカップにインスタントコーヒーを注ぎ、御盆を準備していく。
「ミルクかな?いや、牛乳で割ってカフェオレにするかも・・・あ、角砂糖ってあったっけ?」
樹は、コーヒーが入ったマグカップ2つにミルクの瓶と牛乳パック、更には袋入りの砂糖をそのまま乗せた大きな御盆を持って階段を上がった。
「ん!?」
そこで見たのは、部屋の中に入らずドアの前に立つ王子様の姿だった。
「どうしたの?中で待っててくれたらよかったのに」
「うん、ボクもそうしようって思ってたんだけど・・・」
「え?じゃあ、なんで?」と不思議がる樹に王子様は、
「足の踏み場がどこか分からなくて・・・」と困惑の表情を浮かべていた。
「あ!!」
そう。彼女の部屋の座れる場所は、ベッドとその前に置かれた小さな折りたたみのテーブルとの間の
何故なら、床にはアニメ誌や週刊・月間・更には季刊のコミック誌がところ狭しと山積みになっていたからだ。
そしてそれは、座る以前にそこまで行くことすら困難な状況を作り出していた。
(やってまった)
樹は、穴があったら入りたい。ではなく、
今すぐ腕時計型麻酔銃で王子様を眠らせて部屋を掃除したい。とか、
それがダメなら彼女の記憶を消す秘孔を突きたい。とか、
もういっそのこと床が消えて異世界に落ちる穴が足下に開いて欲しい。とか、
ベッドの下の秘密に引き出し(笑)からでいいからネコ型ロボットが出て来てなんとかしてくれないかな。
とか思っていた。
「・・・樹?」
「ごめん、後ろをついてきて」そう言うと、樹は御盆を持ったまま右足を大きく前に突き出した。
それが、それまで見えなかった山と積まれた本と本の間の、文字通り足が納まるか否かの僅かなスペースに着地していた。
「あ、そんなところに!!」驚きの声を上げる王子様に、
「本を崩してもいいから、つまずいて転ばないよう気を付けて」と声を掛けながら、樹はまるで探検家が遺跡のトラップを次々にクリアしていくかのように前に進み、あっという間にテーブルを
「ふぅ」樹が一息ついた。その瞬間だった。
「あっ、わっ、あぁぁ~~~っ」
背後から聞こえて来た焦りまくりの王子様の声に振り向くと、バランスを崩した彼女が、今まさにこちらに向かって飛び込んでくるところだった。
「え!!あ、あぶな・・・」彼女を受け止めようと樹が手を前に伸ばした。
次の瞬間。
‶ばふっ″
鈍い音と共に、樹の視界に映る天地がひっくり返っていた。
(・・・え?なに!!)
最初は何が起きたのか分からなかった。
だがすぐに、視線の先に見えるのが天井に貼ったロスタイムのポスターだと気付き、自分がベッドに寝ていることを理解した。
そして、彼女の上には覆い被さるように王子様がいた。
「ごめん、大丈夫?」
「え?」
「本につまずきそうになって、前に踏み出そうとしたら、その先にコーヒーの御盆が置かれたテーブルがあったから、ジャンプして飛び越えたら目の前に樹がいて・・・本当にごめん」
それは、こういうことだった。
山積みの本の間を歩いていてバランスを崩した王子様は、倒れるのを回避するために、もう一歩前に出ようとした。
が、そこに御盆の置かれたテーブルがあったため、やむなくジャンプしそれを飛び越えたのだが、その結果、彼女を受け止めようとした樹を押し倒す格好でベッドに倒れこんでしまったのだ。
「・・・う、ううん。私の方こそ、私が部屋を掃除してなかったから・・・」
だが樹は、鼻の頭同士がくっつくぐらいの至近距離で謝る王子様にそう言葉を返すだけで精一杯だった。
彼女は自分の胸の辺りに感じる違和感が気になっていたのだ。
(え?なに、この感触)
そう。大きくて重くて弾力があって、たわわに弾む2つの‶何か″が自分の胸を押し潰すように上にのしかかっているのだ。
(あ!!これって、もしかして胸?)
樹の予想は的中していた。
彼女の胸の膨らみを押しつぶしていたのは、王子様の大きな胸だった。
樹にとってそれは衝撃だった。
ベッドやコタツにうつ伏せで寝転んで本を読むとき、女性は自重で胸を押しつぶす格好になる。
だから、今自分の胸にのしかかる王子様の胸の重さで、それが
それは、ベッドの下に隠してある美少女ノベルでよく使われる表現を借りるならば(笑)まさに『果肉のたっぷり詰まった、それでいて若々しいぷるんとした張りを保つ、たわわに実る果実のような大きな2つの膨らみ』そのものだった。
すると、王子様がゆっくりと身体を起こし部屋の中を見た。
(え!!だめだめ、じっくりと見ないで~)樹は顔を両手で覆い、心の中で懇願した。
「あ~~、よかった」
「・・・え?」
王子様の口から出た思いがけない一言に、樹は」思わず指の間から彼女の顔を見た。
その視界に飛び込んで来たのは、こちらに覆い被さるように倒れて来る王子様の姿だった。
(え?え!!え~っ、待って、私たち女の子同士だし、その、まだやっぱり心の準備が・・・)
‶ぼふっ″
「・・・え?」
王子様が布団に倒れこんだであろう音も確かに聞こえ、布団が弾む衝撃も確かに伝わってきた。
だが、樹の上には何も覆い被さってはいなかった。
「あ~、もう、どうしようかと思った」
「え?」思いがけないその言葉に思わず目を開けた樹の視界に映ったのは、彼女のすぐ横に寝転んでこちらを見つめる王子様の顔だった。
「本も蹴飛ばしてないしコーヒーもこぼれてなかった。もう、ジャンプした瞬間に足が触れたんじゃないかって気が気じゃなかったんだ」
いろんな意味で心臓ドキドキの樹を置き去りに、王子様はそう言いながら‶ごろん″と仰向けになる。
「あ!!ロスタイムのポスター、かっこいい」
「そお?」
「うん。ねぇ、あれどこで買ったの?」
「○○駅裏のアニメショップ・・・よかったら今度一緒に買いにいく?」
「え、いいの?」
王子様の目が子供のように輝いた。
「うん」
「ありがとう。あ、そう言えば、もうやったんだよね?4話」
「あ、うん」
『ロスタイム~金碧と漆黒のディスティニアス~』は金曜の深夜に放送されている。
今朝はもう土曜だから第4話はすでにオンエアされていた。
「先週見た?」と訊ねる王子様に、
「見た見た。びっくりしたよね、いきなりシャトルが大爆発して」と樹も嬉しそうに言葉を返す。
「そう!!しかもそこで『次回につづく』ってどうゆうこと?
カエデは、ジャンとミリーはどうなったの?って、もう気になって気になって。
あ、そう言えば今週って1時間スペシャルだって予告で言ってなかった?」
王子様が、自分がハマっているアニメについて興奮気味に話すのが嬉しくて、樹もついつい顔がニヤけてしまう。
「そうだよ。録画してあるから、これから見る?第4話」
「え!!いいの?」
「もちろん」
そう言うと樹は起き上がり、ベッドに腰かけた。
王子様が彼女の視線を追うと、入り口のすぐ横に置かれた棚の上にテレビとレコーダーがあるのが見えた。
「座って」
「よかったらコーヒー冷めないうちに飲んで。砂糖とミルク、それと牛乳もあるから」
「ありがとう」
と言ってるうちにCMが終わり、シャトルが大爆発する場面からAパートが始まった。
2人はそれを見ていたが、オープニングになると王子様はコーヒーをブラックのまま一口飲んだ。
「・・・あ、おいしい」
「ほんと?」王子様の口からこぼれた、彼女自身も驚いた様子のその言葉に、樹は思わずそう聞き返していた。
「うん」
「ありがとう」樹は嬉しそうに、照れ臭そうにはにかんでいた。
その時、CMがあけ本編が始まった。
王子様は画面に引き寄せられるように真剣な眼差しでテレビを見ていた。
そして樹は、ストーリー展開に合わせて一喜一憂する、そんな彼女の横顔を見れるのが嬉しかった。
今一番ハマってる推しアニメにハマってる人が現れ、2人で一緒にそれを見ている。
そんな日が来るなんて、昨日まで想像すらしていなかった。
「え?なにこれ、どうなってるの?」
「分からない。メカの動きが速すぎてついていけない」
そんな会話をしながら食い入るようにテレビを見つめる2人。
そして物語は進み、
「ギル~っ」
「ミカヅキ~っ」相手の名を叫びながら互い目掛けて疾走する2人。
ギルは両手に構える大型の銃を撃ち、対するミカヅキは構えた長身の刀でその弾丸を
その瞬間、映像が途切れて画面が真っ黒になっていた。
しかもそこには、殴り書きされたような白い文字で『つづく』と書かれていた。
そしてエンディングが流れ始めた。
「え~~、ここで終わる?」と樹。
「ありえないありえない。これじゃあ続きが気になって稽古に気持ちが入らないよ」と王子様も困惑気味に応える。
「て言うか、カエデとジャンとミリーが出てこなかったんだけど、大丈夫だよね?生きてるよね?」
王子様は原作を読んだことがないらしく、マジでカエデ、ジャン、ミリーの生死が気になっているようだ。
だが、それを教えてしまうネタバレは最低のマナー違反なので、樹は話題を変えることにした。
「それも気になるんだけど、あの敵側の新キャラ・・・」
「ギル?」
「そう、ギル。もう王道の敵キャラだよね」
「ほんと、すごい憎たらしい。正拳突きで鼻の骨へし折ってやりたい」
「・・・」
「あ!!」王子様はギョっとした顔で樹が自分を見つめているのに気づき、
「ごめん。気持ちが入っちゃって」と反省しきりの様子で謝っていた。
「ううん。・・・それより気にならなかった?」
「え?何が?」
「ラスト近くにミカヅキがギルに言ったセリフ、『ギル、星占い見て来たか?今日のお前の運勢は最悪だ』って」
「それがどうかした?」
「それって、ミカヅキがギルの誕生日を知ってるってことじゃん」
「あ!?」王子様は樹が言いたかったことの意味を理解し、思わず声をあげていた。
「普通さぁ、敵の誕生日なんてしらないよね?空柔術のライバルっているの?」
「え?いるよ」
「その人の誕生日って知ってる?」
「知るわけないよ」
「でしょ。でもミカヅキは知ってるってことは、・・・ギルのあの思わせぶりな口調からして、昔は仲間だったけど、どちらかが裏切ったか、もしくは・・・」
「もしくは、なに?」と、何故か王子様が小声で聞き返し、
「あの2人、昔、付き合ってたとか」と、樹も何故か小声で答えていた。
「え~~~っ!!」
「だってだって、誕生日を知ってるって、そういうことでしょ?」
「そっか、誕生日を知り合う仲って、そういうこともあり得るよね」王子様は樹の思いがけない言葉に感心しきりの様子だった。
「ね、樹の誕生日っていつ?」
「え?」その王子様の、あまりに突然で思いがけない言葉に樹は言葉を失った。
「そう言えば樹の誕生日知らないなって思って、何月何日?」そう言いながら笑顔で見つめる。
「えっと、あの、・・・4月1日」
「え!!マジで?一週間前誕生日だったの?おめでとう」
「うん。あ、ありがとう」
嬉しそうにパチパチと拍手する王子様とは対照的に、樹は照れ臭そうにお礼を言い、そして戸惑い気味に話し始めた。
「でも、やっぱり4月1日生まれは大変だよ。整列すれば幼稚園の時からず~~っと1番前だし、体育の授業とか全然ついていけないし・・・」
「あ!!そうか」
「しかもエイプリルフールだからって、もう嘘つかれ放題、誕生日なのに」
「うそ?」
「ほんと。だから私はみんながちょっぴり
「そうか、ボクも誕生日がネックになってるから、樹とは違うかもしれないけど、少し分かるような気がする」
「え?」
王子様の思いがけない一言に、今度は樹が驚きの声をあげていた。
「ボク、5月6日生まれなんだ」
「
「え?スゴい。よく知ってるね、その日が立夏だって」
「あ、うん。ま、まぁ、アニメやラノベの世界では暦や星座は重要な意味を持つことが多いから・・・」
王子様にそう言われ、樹は照れくさそうに笑った。
「それがボクの名前」
「え?」
「ボクの名前は
「いい名前」
太陽のように眩しくて、初夏の風のように爽やかな彼女にぴったりの名前だと樹は思った。
「ありがとう。この名前、おばあちゃんがつけてくれたんだ。
すごく気に入ってるんだけど、『りつか』って男か女か分からないってよく言われるし、5月6日、つまり二十四節気の
「それを言うなら樹だってそうだよ。今でも男の子に間違われるから一緒だよ」
「そっか」
「うん。・・・あの・それでね」
「なに?」突然改まる樹に、立夏も‶なんだろう″といった感じで聞き返す。
「えっと、その、立夏さんて呼んでいい?」王子様の名前をやっと聞き出し、胸のもやもやが消えた樹は、嬉しくてしょうがない気持ちを何とか抑えながらそう訊ねた。
「ううん、立夏でいいよ」そして、そんな樹の突然の申し出に、彼女は笑顔でそう返していた。
「いいの?」
「うん。僕も樹のこと樹って呼んでるから、ボクのことも立夏って呼んでほしい。いい?」
「うん。・・・じゃ、じゃあ、立夏・・・さん」
「‶さん″はいらない」
「ごめん、まだ慣れなくて。・・・て言うか」
「なに?」
「来月もうお姉さんになっちゃうんだね」
と、話す樹に、
「あ、そのことなんだけど・・・」
と、立夏が急に声を潜め、
「なに?」と、それに釣られるように、何故か樹まで声を潜めてしまう。
「実はボク、飛び級してるんだ」
飛び級とは、例えば中1が進級試験を受けて合格し、中2を飛び越えて中3に編入することを言う。
この時代、15歳の女子大生が普通にいるぐらい、日本でも飛び級制度が広く普及していた。
「え~~そうなのっ、すごい奇跡」
「え?」
興奮しまくりの樹に、立夏は驚きを隠せない。
「何が奇跡なの?」
「実はね、私もそうなの」と、樹が思わず立夏の手を取り‶にこっ″と笑う。
「え?え!!え~~~っ」
「ね、すごいでしょ?こんなことが本当にあるなんて奇跡だよ」と、興奮冷めやらない樹。
そんな彼女に、
「うん、そうだね。でも、なんで飛び級しようと思ったの?」と立夏が訊ねた瞬間、樹の顔が微かに曇った。
「・・・その、どうしても中学生なのがイヤで、早く高校生になりたくて、・・・だから必死に勉強したんだ。・・・立夏さん・・・ごめん、立夏はどうだったの?」
彼女にそれ以上聞かれたくない理由があること直感で察した立夏は、自分のことを話し始めた。
「ボクは、15になったら、つまり中学を卒業したら武者修行で世界中を旅するつもりだったんだ」
「え!!」あまりに凄いことをサラっと言われ樹は返事に困った。
「なのに、家族が大反対でさぁ」
「まぁ、そうなるよね」
「母さんが高校だけは卒業しなさいって言うから」
「高校卒業したらOKなんだ」
「でも、どうしても15歳で武者修行の旅に出たかったから・・・」
「こだわるね」
「で、ある日気付いたんだ。15歳までの飛び級で高校卒業すればいいじゃん。て」
「ああ、例えば中学全学年免除試験に受かって小学生からいきなり高校生になるとかみたいに?
でも、あれってメチャ
「・・・そ、そうだね」
試験の難しさが分かっているからだろう。少し戸惑う立夏に共感を感じた樹は、自分のことを話し始めた。
「あのね、本当のこと言うと私受けたの、全免試験」
「え?そうだったの?」
「でも落ちちゃった。けど、その猛勉強のおかげで1学年分の飛び級試験に受かって、皆より1年早く高校生になれた。
・・・それでも試験に受かったのは奇跡だったって思ってる」
彼女は、そう言いながら立夏を見た。
「大丈夫だよ、飛び級は高校でも出来るから。立夏さん・・・立夏なら出来る。私が言うんだから間違いない。うん」と
「てか、そもそも全免試験が難しすぎるんだよね。小学生にあの試験は『ないわ』って思うよね?」
と、同意を求める樹に、
「う、うん。そうだね」と、立夏は何故か困り気味に賛同する。
「全免の合格率って何%だったっけ?もしあの試験に合格する子がいたらニュータイプ。いや、神だよね。あれは暗記パン56億枚食べても受からないよ。
もし受かる人がいるとしたら、知能指数が1100を越えてる探偵か、災難続きの人生を送ってる超能力者の高校生か、10万3千冊の魔導書を全部暗記してる女の子ぐらいじゃない?」
と、知らず知らずのうちに熱弁を振るっていた樹は、ふと立夏が
そっと屈み込み覗き見ると、両手で覆い隠されたその顔が耳まで真っ赤になっていた。
それを見て樹は全てを察した。
「・・・も、もしかして、受かったの?全免試験」
立夏が俯いたまま‶こくっ″と小さく
「え!!え?え~っ。凄いね。
・・・え?ちょ・ちょっと待って?え?てことは、あの、間違ってたらごめん。その、立夏さんて、・・・私より年下?」
「・・・うん」
「てことは、その、もしかして来月の誕生日を迎えても、・・・やっぱり年下のまま・・・だったり・・する?」
「・・・うん、多分」立夏は俯いたまま顔を上げることも出来ず、そう返事するので精一杯だった。
「え?えぇぇぇぇぇ~~~~~~~~っ」
部屋中に、いや、家の外にまで、樹の絶叫が響き渡っていた。
〈つづく〉
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