13.念じるスライム

「さてと……そろそろ出発しようか」


「そうすっか。町で換金すんのが楽しみだな」


「初級ダンジョンの中ボスとはいえ、初めての大物だもんね! 私も楽しみ~♪」


「金ができたからって無駄遣むだづかいすんなよ」


「もう、わかってるってば!」


「装備の新調は……無駄じゃないよな? なっ?」


 クリス達、早くも浮かれちゃってるなぁ~。

 ま、気持ちは分かるけどね!


 あれ、フェリは浮かれてない。

 っていうか、何か真剣な顔して……考え事してる?

 アインの方をじっと見て、どうしたんだろう。


「あ、あの……アイン、さん……!」


「なんだ」


「ぼ、ぼくに……『そうけん』の使い方……教えて、くださいっ!」


「良いだろう」


 アッサリ即答!


「できること、何でもします! ちょっとだけしか、ないけど……お金も払います、から……!」


「だから良いと言っている。別に何もいらん」


「だからっ……あっ、え……?」


「仲間なら戦闘指南しなんも当然のことだと思ったが……違ったか?」


「あ……えっと……」


 謙虚けんきょなフェリちゃんだもんねぇ、「当然!」とは言えないよねぇ。

 ここは可愛いさゆえに全てが許されるボクの出番だね!


『違わないよ~! イイ先生がいて良かったね~、フェリ♪』


「ニイム……う、うんっ! よろしく、お願いします……!」


「ああ」


 ボク達の様子を見てたクリス達も、話がまとまったのを見てこっちにやってきた。


「双剣、練習すんだったら俺とクリスの短剣を貸してやるよ。予備のやつな」


『ボクが収納してるコレだね~』


  ――ぽるんっ! ぽるんっ!


「わわっ……ありがとう、ございます!」


「いーってことよ。それで戦力が上がるんなら、俺達にもメリットがあるからな」


「アインの見立てと指導なら期待できそうだな。頑張るんだぞ、フェリ!」


「が、がんばり、ます!」


 よーし、特訓しながら帰るよー!




***




『さ、さすがのフェリちゃんだぁ……』


 アインの教え方なのか、フェリの才能なのか。

 1階まで上って来る頃にはフェリの双剣術もそれなりに形になってた。


 双剣に持ち替えて、まだ3日だよ……?

 3日で基礎ができるって、相当すごいんじゃないのかな……。

 フェリの成長っぷりに、クリスとセシリアがちょっとへこみ気味だ!


「俺、ちょっと自信無くしそう……」


「私も……これ見たら、ね……」


「ンなの比べるだけムダだっつーの」


『そ、そうだよ! 二人とも元気だして!』


 ――ぽむんっ、ぽむんっ


 シーロはメンタル強いよね~。

 冒険者をやるならこれぐらいの方が良いと思うな、うん!


 あ、曲がり角からモールラットが3匹飛び出してきた。

 これぐらいのモンスターなら、相手にするのもすっかり慣れたよ~。


「ほれ、言ってる間にモンスターのお出ましだぜ。頑張って来いよ、リーダーさん」


「……おう!」


『ボクも頑張るー!』


 ――ぽいーん! ごぼいんっごぼいんっ! ……めちょっ!


 こんな奴ら、クリスとフェリとボクでサクッと倒しちゃうもんね!


 ……って、おや?

 なんだか体がポカポカしてきた気が……。


「ニイム……どうしたの? なんだかちょっと、光って……る?」


「進化の前兆ぜんちょうだろう」


『え、ホント?! やったー!』


 つ、ついにこの時が!!

 前回は気づいたら進化しちゃってたから、今回は感動を噛み締めるよっ!


「へー、モンスターの進化するとこなんて初めて見るな」


「ニイムちゃん、どんな姿になるのかな? 楽しみ~!」


「お、俺まで緊張してきたかも……」


 むしろボクは緊張してないけどね~。


 よし、今回はたっぷり念を込めてから進化しよう!

 自分が望む方向へ進化できるみたいだしね。


 まず、アインのこと思い出せますように。

 ついでに前のボクのことも思い出せますように。

 進化先は……まぁ何でもいいや。スライムっていっぱいあって考えるのが面倒だし。

 とりあえず、みんなと一緒にいられるやつになりますように!

 あとは、できるだけ強くなれますように、かな。

 あ、カッコ良くもなりたいですー!


 ……こんなもんかな?


 いよーし、念込め完了だ!


 『さぁ、進化よ! どんとこーいっ!!』

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