12.スライムの想い

 えっ、普通はブラックスライムの間しか収納は使えないの?


 クリスは勉強家だから、モンスターにもわりと詳しいんだよね。

 クリスが知らないって言うんなら、ホントに使えないのかもしれない……。


「コイツは規格外だからな。普通のモンスターの常識は当てはまらんぞ」


『ちょっとアイン! それ、褒めてるの? けなしてるの?』


 ――ぽいんっぽいんっ!


「事実を言ったまでだ」


 んもー、それならもうちょっとカッコ良く言ってよね!

 スーパーウルトラすごいスライムだから特別に使えるんだー、とかさ!


「ねぇ、ニイムちゃんってそんなに変わってるの?」


「傷治したりモンスター食ったり、まぁ普通じゃねえわな」


「言われてみればそうか……。食べるのはまだしも、スライムの細胞で傷を治すなんていうのは初耳だったしな」


 おや、そういえばそうか。

 聞けば何でもリーリオが教えてくれるから深く考えなかったけど、ボクも聞いたことないスキル名だ。


『まー世界で唯一のニイムちゃんですし~? 特別でサイコーなボクですし~?』


「あはは……」


「……」


『その通りですニイムさん~♪ える・おー・ぶい・いー! に・い・むっ!』


 ダメだ。

 ボクの声が聞こえるメンバー、ツッコミ不在だった。

 とりあえずリーリオ。君はまた後でね。


 ボクのボケはスルーされたまま、話は進んでいく。


「ところでよ。進化っつっても、次はどんなスライムになるんだ?」


「スライムの進化っていっぱいあるからなぁ……俺も全部は覚えてないよ」


「ニイムちゃんスゴイし、いっそスライムじゃなくなったりして!」


「オメーなぁ……」


 シーロは呆れ顔だけど、セシリアの言うことも有り得なくはない? かも……。

 だってボクだし……。


「ニイムは、こうなりたい……とか、あるの?」


『うーん、強くなりたいなぁとは思ってるけど、具体的にこうっていうのは無いかな~?』


 そもそも、強くなりたい理由もそんな大したものじゃないしね。

 死にたくないとか、フェリ達を守りたいとか、そういう普通の理由。

 だから力さえあれば、形は何でも良いんだ~。


「……それ・・は、本当の望みか?」


『え?』


「本当に強くなりたいと思っているのなら、具体的に考えるのが普通だろう。お前の本当の望みは他にあるんじゃないのか」


 ……。


 そう、なのかな……。


 アインに言われて気づいた。

 確かに「強くなれたらいいな~」とは思ってるけど、絶対に何が何でもっていう強い意思があるわけじゃないもんね……。

 でも、他に何かあったっけ……?


 最初一人で居た頃は、とにかくスライム生を楽しみたいと思ってたんだよね。

 だってそのために転生までしたんだもん!


 今も、楽しんでるとは思うよ?

 フェリやクリス達と一緒にいるのは楽しいし、レベル上げたりダンジョンに潜るのも楽しい。

 でも、これがボクのやりたかったスライム生なのかっていうと……どうなんだろう。

 

 『前のボク』だったら、何て言うかな……?


「オメー、スライム相手によくそんなクソマジメなこと言えんなぁ」


「……古い仲だからな」


「スライムと古い仲ってだけでも十分変わってら」


「んもー、シーロってば、またそういう言い方する~! ごめんね、アイン」


「なんでオメーが謝るんだよ」


「あんたが謝らないからでしょっ!」


 ……ふふっ、みんなと一緒にいると楽しいってのは間違い無いね!

 

 そうだ、ボクはみんなと離れたくない。

 前のボクが考えてたことは思い出せないけど……今はこの想いだけでも良いよね!

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