10.わりと節穴スライム

「まずソルジャースケルトン。ニイムが頭を狙えないのなら、お前がやるべきだ。何故やらなかった」


 アインってば言い方が高圧的なんだから~、んもう。

 でもそんな二人を見守っちゃう。


「ニ、ニイムが……モンスターに攻撃されちゃうと、思って……」


「次にミノタウロス。お前の攻撃量は明らかに多すぎた。あれでは攻撃されて当然だ。何故クリスのターゲットを奪った」


「ク、クリスさんが、危ないと……思って……ぼくが攻撃されても、とにかくやらなきゃって……」


 うーん……なるほどなぁ。

 無茶ばっかりしてたけど、フェリはフェリなりに必死だったんだね。

 それが良くない方向ばっかりだったのが残念だけど……。


「そうか。お前は仲間を一切信用していないのだな」


「そっ、そんなことっ、ないですッ!」


 珍しいフェリの大声に、クリス達も「何だ何だ」と視線を向けてきた。


「いいや。攻撃されたらやられる、早く倒さないとやられる、と考えているからそんな事をするんだ」


「そ、それは……ちが、違うっ……です……」


「何が違う」


「――ぼく、ぼくは!! ……あっ」


 フェリは自分が大きな声を出していたことに気がついて、また小さくなってしまった。


「みんなを……モンスターから、守りたい……です。ケガ、してほしくない……死なないで、ほしい……から」


 例え声は小さくても、フェリの心からの声だった。

 フェリはみんなのことが大好きなんだ……。


「ならば戦い方を学べ」


「……え?」


「剣術のことではない。敵と対峙した時のことだ」


 さっきまでまとっていた高圧的な雰囲気が、少し和らいだ。


「何も敵の攻撃を受け止めることだけが『仲間を守る』ではない。状況を冷静に把握し、的確な攻撃を行う。最も被害の少ない方法を考える。時には撤退も視野に入れる。こういった全てのことを学べ。そうすれば結果的に、仲間は無事にお前の元へと戻る」


「…………」


 ……わーすごーい、アインがたくさん喋ってる~。

 良いこと言ってるんだけど、そっちの方が気になっちゃうよ、ぼかぁ!


 いやでも、なるほどね。

 前にシーロが言ってたパーティーの役割、ってやつだ。

 力押しで戦うだけがパーティーじゃないもんね。


「まずはお前に合った戦技を考える方が先だがな。その片手剣と小盾を扱う型は合ってないように見える」


「えっ……そ、そうなん、ですか……?」


「ああ、そもそも体格が小さいなら盾は向かないだろう。竜人・・双剣そうけん使いが多い。そっちに切り替えてみたらどうだ」


「……りゅう、じん……?」


 竜人っていったらアレだ。ドラゴンの血が入った亜人のこと。

 ものすーっごく数が少ない人達なんだけど……なんで今、竜人が出てきたの?


「お前は竜人だろう。ならば……」


「「「「えぇーーーー?!」」」」


 ボクも、えーー!? だよ!!

 フェリってば竜人だったの?! てっきり蛇人へびじん蜥人とかげじんかと思ってたよ!


 驚き過ぎて、静かに見守ってたクリス達まで大合唱だよ?!


「……何だ。知らなかったのか」


「は、はい……お父さんも、お母さんも、特に何も……」


「竜人は独特の風習が多いからな。お前の両親がどういうつもりだったのか俺には分からないが……恐らくは時期をみて、ということだったのだろう」


「そう、なの……かな?」


 フェリはあまりピンときてない顔だ。

 そもそも竜人がどういう種族なのか知らないのかもしれない。


 竜人は、戦いにはめっぽう強いって言われてる超レアな種族だ。

 魔法にしろ剣にしろ、攻撃力がハンパないんだって。

 急所を見抜くセンスみたいなものがあるのかなぁ。


 そっかそっかー、やたらポテンシャルが高いと思ったら、竜人だったんだねぇ。


「とにかく焦るな。急いてはろくな結果にならん上に、身に付かんぞ」


「は、はい……ありがとう、ございます」


「礼はいらん。今は俺も……仲間、らしいからな」


「ッ……は、はい!」


 ふふふ~。

 なーんだ、アインってば!

 あんな素っ気ない態度とっておきながら、仲良くしたいんじゃーん!


『そうそう、アインの言う通り! 仲間は持ちつ持たれつ、ってね♪』


 ボクは今、絶賛『持たれてる』状態だけどね! 物理的に!


「ニイム……。うん、これからはぼくも……一緒に、持てるように、だね」


『だよー!』


 ――ぽいんぽいーん♪

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