34.試行錯誤のスライム

 とにかく。とにかくだ。

 クリスをなんとかしないと……このまま放ってはおけない。

 傷を治す方法か安全に運ぶ方法か、どちらかが必要だ。

 でも薬は無い。回復魔法も無い。戦うにも力が足りない。


 くぅ……今のままじゃどうにもならない……!


『……リ、リーリオ……』


『はい』


 いつもすぐに応えてくれるリーリオ。

 リーリオならもしかして……っていうのは、都合が良すぎかなぁ。


『何か良い方法ってないかな? 安全な抜け道とか、すごい隠しアイテムとかさ』


『……残念ながら』


 うぅ……やっぱりダメかぁ。


『じゃあ、ダメ元で聞いてみるけど……リーリオの力でなんとかなったり、しない……よね?』


『……申し訳ありません。地上の者に私が直接手を出すことは……』


『だ、だよねだよね! ごめんね、聞いてみただけだから気にしないで!』


 リーリオは全く悪くない。

 天使には天使の制約があるんだ……無理は言っちゃいけないよね。


 でも、ボクじゃ役に立てそうにないんだよなぁ……。

 収納スキルじゃ生き物は運べないし、戦闘力も高くない。


 うぅ~、何かないかな~! 何かぁ~!!


『ニイムさん。一つだけ……可能性が』


『えっ、何かあるの?! 教えて教えて!』


 やったぁ! やっぱり困ったときのリーリオ様だね!

 ありがとう、ボクのガイド天使!


『状況を打開できるとしたら、貴方です』


『……え、ボク?』


『はい。見たところ、今のニイムさんはステータスの割にスキルが少ないんです。今のニイムさんなら、もしかしたら望むスキルを手に入れられる……かも・・、しれま――』


『なるほどじゃあ回復魔法が欲しいです回復魔法! 回復魔法でろー!!』


 魔法の出し方なんてよくわかんないから、クリス目掛けてとにかく目一杯の力を込めてみる。

 うー! はー!


『ニ、ニイムさん……』


『どうやったら使えるようになると思う?! ボク、今すぐ使いたいんだけどっ!』


『あ、焦らないでください……あくまでも可能性、ですから』


『でもでも~!』


 今やらなくていつやるのさ!

 スキルが増えるんなら「今でしょ!」って感じだよ?!

 う~ん、でろ~でろ~!


『で、でない……。どうしたら使えるかなぁ?』


『モンスターの魔法の習得方法までは分かりませんからね……出来ることを全て試すしかありません』


『わかった! 思いつく限りのこと、やってみる!』


 ――ぽいーん、ぽいんぽいん、ぺとっ


「うおっ、なんだよこのスライム」


「えっ、何? クリスも収納しちゃうの?」


「ニ、ニイム……?! ど、どうするの?」


『ボク、ちょっと色々試してみるから! シーロとセシリアにも伝えて!』


「う、うん……」


 近い方が効果が出そうな気がするから、とりあえずクリスの顔に引っ付く。

 えーと、なんか傷が回復しそうなこと……。

 まずはさっきみたいに念だ、念を飛ばそう!


 むーんむーんむーん……ハァー!!

 ヒール! キュア! ファーストエイド!


 ……ダメか。

 んじゃ、祈るか。誰に祈ればいいのか分からないけど。


 神様~! どうかボクに回復魔法をお授けください!

 もしくは、クリスに神の奇跡を~! 御慈悲ごじひを~!


 ……ダメかー!

 ええい、こうなりゃ実力行使だ!

 ボクのぷにぷにボディで直接傷口の止血をする!


 ――もにょにょにょ……ぺちょっ


 あ、よく考えたら包帯があるから、ぷにぷにボディは関係なかったかも。

 でもとにかく、血よ止まれ―! 傷よ治れー!

 ちぇえーい!!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る