35.万能スライム細胞

 ――もにょ、もにょる~ん……


 ……あれ? 今、ボクの体から何か出てきたような?

 粘液っぽいような、水っぽい何かが……。


 あ、やばいやばい、謎の液体が傷口に染みちゃう!

 クリス、大丈夫かな?!


「ん……う、ぐっ……」


『うわ~ごめん! 力んだら何か出ちゃった! 大丈夫?!』


 ――ぽいーん!


 慌てて傷口から降りたけど、やっぱり何かが染みてしまったみたいだ。

 包帯が血とは別の何かで濡れてた……。


「ニイム……クリスさんに何かけたの……?」


「オ、オイ! 変なモン漏らすんじゃねえよ!」


『わ~ん、ごめんなさい~!』


 シーロが急いで包帯をほどき始める。

 でも、傷口を水で流したところで、ぴたりと動きが止まってしまった。


「……あ? どうなってんだ、これ……」


 え、何? どうしたの? ボクにも見せて~!


 ……? なんだろう、これ。


 ボクから出たであろうスライム状の何かが、クリスの傷にぴったりとくっついている。

 スライムかさぶた、みたいな?

 もしかして傷を塞ぐ効果があったり……する? かな?


「おいスライム、これ何だよ。剥がしていいのか?」


「どう、なの? ニイム」


『ボ、ボクにも分かんない……』


 これって新しいスキルだったりするのかな……。

 あっ、そうだ! リーリオに聞こう!

 前もスキルのこと教えてくれたし、これがスキルだったら何かわかるよね!


『ちょっと待って、今聞いてみる! リーリオ~!』


 目の前にアップで現れるウインドウ。

 映るリーリオが涙ぐんで……よぉしっ! これは当たりだー!


『リーリオ! これ、ボク、もしかして、やった? 成功した?!』


『はい……素晴らしいです、ニイムさん……おめでとうございます。これでその人間も助かるでしょう』


『や、やった~~!!』


 ――ぽいんぽいーん!


『ス、スキルの詳細は?!』


『スキル名は<万能スライム細胞>。そのスライム細胞を傷などに塗布とふすると、やがて対象生物の細胞そのものに変化します。つまり……傷が治ります』


『おお~、バッチリだよ! まさに今欲しいスキルだ~っ!』


 ――ぽぽいーーん!


「ど、どうしたのニイム……何かわかった?」


『あっ、フェリ! ボクやったよ~! これでクリスが助かるんだ!』


 ボクは急いでフェリに説明して、それをフェリがシーロとセシリアに説明した。

 みんなスキルの効果が分かった途端、大喜びだ!


「ったく、出来るんなら早くやれってんだよ……。まぁ、助かったけどよ」


「すごーい、ニイムちゃんエライっ!」


「うんっ……ニイム、すごい!」


『えへへ~、それほどでも~♪』


 クリスはまだ気を失ったままだけど、傷が治ってきたら目も覚めると思う。

 そしたらきっと、すっごく褒めてくれるよね♪


「なら、クリスが回復するまで待ってからダンジョンを出ようぜ。急ぐ必要がねぇんなら、その方が安全だ」


「うん! あ~、ホント良かったぁ~」


「まだ気を抜くんじゃねぇぞ、セシリア。ここにモンスターが出ないとも限らないんだからな」


「わかってるよ、わかってるけど~……ホントにホッとしたんだもん!」


「ま、気持ちはわかるけどな……」


「本当に、良かった……です。クリスさんに、何かあったら、ぼく……ぼく……」


 気が緩んだのか、またフェリの目に涙が浮かんでいた。

 うんうん、良かったねぇ~! フェリもクリスも、みんなも!


「アイツが起きたら、たっぷりと礼でもしてやれ。それでチャラだろ」


「……はいっ!」

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