29.Wゲットスライム

 どうやらクリスたちは、本当は戦うメンバーが欲しかったみたいだね。

 でもお金があんまり無いからダメ元でーって感じだったのかな。


「……募集しなきゃ来るもんも来ねぇだろ」


「でもアンタだって、来ないだろーなーって思ってるんでしょ」


「まぁ……現実的に考えりゃあな」


「ならポーターを雇う方に切り替えてもいいじゃない。身軽になった分、私たちが活躍すれば、さ?」


「……っはぁ~、魔法使いサマはそういうことを気軽に言えて良いデスネ~」


「ムッ、気軽じゃないわよ! 後衛だけど、私だってちゃんと頑張るわよ!」


「わーった、わーったよ……ったく」


 おおっ?!

 こ、これはもしや……もしかして、もしかすると?!


「シーロも良いってさ、クリス。もちろん、私もオッケーだよ」


「セシリア、シーロ……。ありがとう!」


「ッケ、礼を言うのはオメーじゃねぇだろ。バカなヤローだな」


 へへへ、口は悪いけどホントは良い人なんじゃない?

 だって、まんざらでもなさそうな顔してるもん!


 おっと……不安そうな顔してるフェリにフォローしとかないとね!


『良かったね~フェリ! みんな良いって言ってるよ!』


「良いの、かな? なんだか、ケンカしてたみたい……だったよ?」


『あれはねー、仲が良すぎてあんな風になっちゃってるだけだから、大丈夫! あのお兄さんも口が悪いだけで、フェリのことを悪く思ってるわけじゃないんだよ~』


「そうなの……かな」


『そーなの! だから安心してね♪』


「ん……ニイムがそう、言うなら……」


 フェリはおずおずと踏み出して、三人にお辞儀をした。


「ぼく、フェリって、言います。まだ子供で……冒険も初めてです、けど……いっしょうけんめい、がんばります。ので……よろしく、お願いします」


「ああ、こちらこそ宜しくな! 俺はクリストバル。クリスって呼んでくれ。クラス槍術士ランサーだ。一応パーティーリーダーをやってるから、フェリも頼りにしてくれたら嬉しいよ」


「私セシリア。魔術士ソーサラーよ。よろしくね、フェリ君!」


「……シーロ、斥候スカウターだ。ちゃんと働けよ、坊主」


「は、はいっ! よろしくお願い、します!」


「じゃあ細かい条件とか話そうか。ギルドにパーティー登録もしておかないとね」


「は、はい……」


 ふう、これなら上手くやっていけそう……かな?

 フェリはまだ緊張してるみたいだけど、それはその内だよね!

 良い人たちみたいだし、きっと仲良くなれると思う。


 わぁ~良かった~!

 これで安定した仕事もゲット!

 さらに人間の知り合いもゲットだ♪


 ……これならフェリも、そう遠くない内に一人立ちできるかもしれないなぁ……。


 ボクにはボクの目標があって、フェリにはフェリの暮らしがある。

 ボクがただのスライムなら、従魔として一生を終えるっていうこともあるんだろうけどね。

 ボクとフェリはきっと、いつか別の道に進む時が来るんだろうな……。


 ……なーんてね!

 しんみりするには、まだまだ早いっ!

 いつか別れる日が来るかもしれないけど、それはもっと先の話だもん。


 今は今! いつかはいつか!!


 それまでいっぱい楽しもうね、フェリ♪

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る