30.ご満悦スライム

「それにしても、やっぱりブラックスライムって便利だなぁ……」


「ねー。この体のどこに入ってるのかしら?」


「バカ。異次元収納つったろ。体に入ってるわけじゃねぇよ」


「あ、そっか」


 なーんて言いつつ、ボクたちお気楽パーティーはダンジョンに向かっていた。ボクが目を覚ました、あのダンジョンだ。

 あれからパーティー登録や冒険の準備を整え、一晩経っていざリベンジへ! というわけ。

 フェリにとっては初ダンジョンだけどね。


「そのスライム……ニイムちゃんだっけ、その子も戦えるんだよね?」


『戦えるよー、スライムだから弱っちいけどね!』


「はい……戦え、ます。でも、スライムだから弱い、です」


「まーそうだろうよ。アテにはしないでおくわ」


「でも何でも溶かせるって言ってたろ? あれは結構便利だと思うんだよな」


「ま、使い所によるわな」


 不用品の処分から脱獄まで、何でもお任せあれ~だよ!

 できれば、ボクの体の肥やしになる物の方が嬉しいけどね。

 ブラックスライムになってから経験値も強化アイテムも、まともにゲットできてないもんねぇ。


「物は試しだ。色々やってみよう」


 色々やるよ~頑張るよ~♪

 数日振りのダンジョン……! 燃えてきた~!




 ***




 ――ごぼいんっ! ごぼいんっ! ……メチャッ


 >ちゃーらっちゃちゃー♪

 >ニイム は ストーンワーム に かった!

 >ニイム は けいけんち を 2 てにいれた!


「お~、意外にやるじゃねぇか、このスライム」


 へっへー、1階の敵ならボクでも勝てるもんねー♪


 あ、そういえばモンスターのお肉って食べていいのかな。

 冒険者ってモンスターの素材を売ったりすることもあるよね?

 できれば食べて強くなりたいんだけど……。


『フェリ~、モンスターのお肉を食べてもいいか、クリス達に聞いてみてくれない? ボク、食べたらちょこっとだけ強くなれるんだ~』


「う、うん……本当に、食べるんだね」


 そうだよ? 何でも食べるよ?

 スライムと人間はやめとくけどねー。


「あ、あの、クリスさん……ニイムがその、モンスターのお肉を、食べたいって……」


「え、モンスターの……肉?」


 あ、クリスってば若干引いてるね?

 ボクはモンスターなんだからフツーだよフツー!


「ここらのは取れる素材もねぇし、いんじゃね?」


「そうね。私たちが良いよって言ったモンスターなら、食べさせてあげてもいいよ」


『いえーい、やったー♪』


「あ、ありがとう……ございます」


 んー、フェリってばまだ固いなぁ。

 これから長い付き合いになるかもなんだし、もっと楽にしたらいいのに。

 時間が経つのを待つしかないのかなぁ?


 まぁ、と・り・あ・え・ず……。

 ご飯だ、ご飯だー!


 ――ぽにょっ……ぐももももも……


 >ちゃららっちゃらーん♪

 >スライム は たいりょく が 1 あがった!

 >スライム は かたさ が 2 あがった!


 うむうむ、やっぱりモンスター肉はイイね!

 何となく強くなっていってる気がするよ!


「は~、キレイに食べるもんだなぁ……」


「もっとグロいモンかと思ってたけど、収納の時みてぇな感じだな」


「これなら死骸しがいを放置するより良いかもね! ニイムちゃん偉いっ!」


 へっへーん、ダンジョンの清潔化に一役買ってるボクだよ!


「これならどんどん進めそうだな……。よしっ、行くぞ!」


「は、はい!」『あいあいさー!』「おー!」「へいへい……」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る