21.お父さん(?)スライム

 ボクたちは登録を終えて、ギルドのロビーで休憩を取っていた。

 フェリの首からは、作りたてほやほやの冒険者カードがぶら下がっている。


「やっと……終わった、ね……」


『うん、ボクへとへとだ~……』


 いくら「犯罪者以外なら誰でもウエルカム」な冒険者ギルドとはいえ、身寄りの無い子供とスライムが登録するのは大変だったよぉ……。

 たくさん訊かれて、たくさん答えて……。

 喋るのはフェリだけど、ボクが考えた内容を喋ってもらうことの方が多かった。

 ウソはあんまり良くないとは思うけど、こればっかりはねぇ。


 だいじょーぶ、悪いウソはついてないよ! うん!

 ボクはまだ良いスライムのはず! きっと!


『でも、フェリってば本当にテイマーの資質があったんだね! それが分かったのも収穫だったよ~』


「ぼくもビックリした。自分のことだけど、知らなかったから……」


 そう、冒険者ギルドで登録するときに分かったことなんだけど、フェリはテイマーとして最も重要なスキル<自意識覚醒コンシャスネス・アロウズ>を持っていた。


 これは、モンスターの自意識を呼び起こして、自分の配下に置くスキル。

 テイマーの基礎にして必須のスキルなのだ。

 いくら得ようと思っても得られない『天恵スキル』だから、珍しいんだよ~!


 それにしてもフェリ、君ってやつは……ッ!

 顔も良いのに天恵スキルまで持ってるなんて……なんていうスペックの高さなんだ!


 天は二物も与える、か……。

 ああ、大きくなったらモテモテ確実だね。

 お父さん(?)、今からフクザツだよ……!


 ――ぷるぷるぷるぷる……


「? どうしたの、ニイム」


『ううん、なんでもない! とにかく登録できたし、次は仕事を探さないとね!』


「う、うん……ぼく、がんばる」


 ふう、小芝居やってる場合じゃなかった。

 もう日も暮れそうだし、早くフェリのご飯や寝床を確保しないと!


『ボクたちでも出来そうな……受けさせてもらえるような仕事、あるかなぁ』


 ギルドの判断によっては受付拒否っていうのもあり得るしねぇ……厳しいところだよぉ……。


「わかんない……。でもぼく、できることなら何でもやる。絶対、がんばるよ」


 ううっ! 泣かせるねぇ、健気けなげだねぇ!

 お父さん(でいいやもう)も、がんばるよ!!


『よしっ、じゃあチェックに行こ! 今からでも出来る仕事があればラッキーだもんね!』


「うん、行こう」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る