22.尊敬されるスライム

 そしてフェリに抱えてもらい、クエストボードの前に来たものの……。


「……無いね」


『うーん、無いねぇ……』


 世の中そんなに甘くないかぁ~。


 そもそも、ボクたち駆け出し冒険者が受けられるクエストって、すんごく限られてるんだよね。

 そんで限られた中でクエストを受けようと思っても、年齢制限があったり保証金が必要だったり時間がかかるものだったり……今は受けられないやつばっかりだ。


 残る制限無しクエストは、モンスター退治かアイテム採取のみ。

 ボクらの戦力なんて、依頼にも出ないような超雑魚ざこモンスターを倒すので精一杯だしなぁ。

 アイテム採取も大体はモンスターと戦うことになったりするから危険だし……。


 荷物運びとか、荷物持ちとか、荷物の配達とか……とにかくそんな感じのやつがあると助かるんだけどなー。

 そういう仕事は早いうちに無くなっちゃうみたいだね。受領済みスタンプが押されてる紙ならいっぱいあったよ。


「今日はもう、あきらめる……?」


『そうするしかないみたいだね。また明日、早くに来よう』


「うん。明日こそ、がんばる……」


 うっうっ、ええ子やぁ!

 せめて食べ物でも買ってあげられたら良かったんだけどなぁ。

 どうしよう、ボクじゃ魔物ゴハンしか用意できないし……何かないかなぁ。


 あ、そういえば収納したまんまのアイテムがあった!

 ダンジョンで手に入れた謎の葉っぱと魔石!

 あれが何なのか分かんないけど、何かの役に――


 って、あれ……?


 ボク、収納したアイテムのこと……なんとなく分かっちゃうカモ?

 収納する前は、何のアイテムなのか分からなかったのに……。


 ……もしかして、収納スキルのオマケ効果?!


 やったー! すっごく便利だぁ!

 ブラックスライムさいこー♪


 ――ぽいんっぽいんっぽいんっ♪


「わっ……どうしたの?」


『あ、ごめん、嬉しくて思わず跳ねちゃった!』


 フェリに抱えられてたのを忘れてた。

 てへぺろ!


『えっと、ボクの持ってる収納スキルについては冒険者ギルドで話したよね』


「うん。ギルドの人に『ニイムの能力は?』って聞かれたとき、こっそり教えてくれたやつだよね」


『そうそう。その収納スキルなんだけどね、今もう一つ分かったことがあるんだ~』


「……なに?」


『なんと! 収納してるアイテムがどんな物か分かる機能付き~!』


 ちゃららっちゃら~ん♪


「……? 入れたもの、分からなかったの?」


『ほら、拾った物や初めて見る物って、どんな味がするとかどんな効果があるとか、詳しいことは分かんないでしょ?』


「……うん」


『そういう物でもとりあえず収納しちゃえば、何となく分かるようになるんだ~』


「すごい……! 食べてないのに、味もわかるの?」


『うん、なんとな~く、だけどね!』


 きらきらとした眼差し……うん、悪くないね!

 へへ、尊敬される父に一歩近づいたよ!

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