18.美少年とスライム

 ドナドナド~ナ~ド~ナ~♪

 スライムの~せ~て~♪


 ドナドナド~ナ~ド~ナ~♪

 荷馬車がゆ~れ~る~♪


 ……とかいって脳内で遊んでたら、男たちの店っぽいところに連れてこられちゃった。


 ――ぽいーん、ぽいんぽいんぽいん


 牢屋ろうやのような部屋の中にポイっと放り投げられるボク。

 んもぅ、商品はもっと丁寧に扱ってよねっ!


「おいお前、ついでにコイツの世話しとけ」


「は、はい……」


 おや、先客がいたようだ。

 年は11,2歳ぐらいかな。肌のところどころに鱗があるから、ヘビやトカゲの亜人だと思う。

 リーリオとはまた違うタイプの美形だぁ~。

 肌が白くて目元が涼しげで、かなりの美少……年? 女? どっちだろ。


 牢屋の中にいるってことは、この子もボクと同じ『商品』かな?

 そういえば、捕まる前に男たちがそんなことを話してたっけ。


 とりあえず、男たちもいなくなったことだし、この子に挨拶でもしとこう。

 これからお世話になるみたいだしね。

 最初が肝心さ!


 えいっ、えいっ!

 ボ・ク・は・い・い・ス・ラ・イ・ム・だ・よ!


 ――ぷよぷよ、ぷよよよんっ


「え……良いスライム……? ほんとう?」


 ほんとほんとー♪


 ……ってちょおーい! 言葉通じるの?!

 えっ、美形はリーリオ式伝心術が使える法則?!


「あ、あばれたり……しない……?」


『し、しないしない! 無駄ないさかいは起こさない平和主義スライムだよ! でもレベルアップのためにモンスターは狩った上で美味しくいただくよ!』


「そう、なんだ……」


 良かった、納得いただけたようだ。


『あの、どうしてボクの言葉がわかるのか聞いてもいい? 美形だから?』


「びけ……? スライムさんが、しゃべるモンスターだから……じゃ、ないの?」


『ううん、ボク喋れないよー。前に人間に会った時も通じなかったし。君は他のモンスターとも会話できたりする?』


「……わかんない。モンスターに会ったのは、スライムさんが初めて」


『そっかぁ~』


 何でだろ、やっぱり美形に与えられし特殊技能なのかな。


『まぁいっか、話せる方が断然イイもんねー! ボクはニイムだよ、よろしくね~♪』


 ――ぽいんぽいん!


「ぼく、フェリ。よろ、しく……?」


 「ぼく」ってことは、男の子か。美少年の方だったのね。

 控えめで物静かな美少年かぁ……一部からはものすごい支持がありそうだね。


 あ、そうだ。重要なこと聞いておかないと。


『ねぇフェリ、君がここにいるのは自分の意思かな?』


「……え?」


『えっとね、ボクここから逃げようと思ってるんだけど、フェリも無理やり連れてこられたんだったら一緒に逃げるかなーって思って』


「にげ……る……」


丁稚奉公でっちぼうこう? 就職の斡旋あっせん? みたいな、ここにいたい理由があるんだったら良いんだけどさ』


「…………」


 ありゃ、考え込んじゃった。

 ちょっと言葉が難しかったかな?

 それとも、逃げる時のこと考えてるのかな……。


「あの……ぼく、にげても……何もないの」

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