17.スライム、ゲットだぜ!

 ――ぽいーんぽいーんぽいーん


 おっそとっは気持ちいっいな~♪

 はー、やっぱり人(?)は引きこもってばっかりじゃダメだね。

 森の清々しい空気! 柔らかな木漏れ日! ふかふかの地面!

 ダンジョンの中とは大違いだよ。


 さて、目的もなく外に出ちゃったけど、どこに行こうかなぁ。

 目の前に道らしきものがあったから、とりあえず道沿いに進んでるけど……このまま進んだら人間と鉢合わせちゃうよね?

 でも森の中に入ったら、盛大な迷子になりそうなんだよなぁ……。


 むむ、悩むなぁ。

 これはもしや、スライム生の大きな岐路! ……かもしれない。


 >だいしぜん に とびこみますか?

 >

 > [ア はい

 >   いいえ


 いやいや~、できれば野生よりもイイ暮らしがしたいなぁ。

 ふかふかのお布団とかー、ほくほくの料理とかー、そういうのがあると嬉しいなーって。

 ……これは人間並の知識を残した弊害へいがいかもしれないネ。


 まぁでも人間に近い方が面白いことも多そうだし!

 人間になりたいワケじゃないけど、人間観察はしたいなー、的な♪

 だから大自然は却下で!


 それにしても、人間とコミュニケーションをとる方法をどうしようかなぁ……。


 あ、そんなこと考えてたら人間が来たっぽい。

 今遭遇するのはマズいよね。

 木の陰にでも隠れてやりすごそう……。


 ――ぽいーん、がささっ


「~~でよ、いい加減新しいネタが欲しいんだわ」


「新しいネタねぇ……この前買った亜人のガキはどうしたんだ?」


「一応売りにゃあ出してるが、ありゃ売れるまで時間がかかるぞ。若すぎる」


「ンなもん相手次第だろ。あれぐらいがイイっていう奴もいるしよ」


「亜人好みでガキ好みってか~? マニアックすぎて探す手間の方が高くつくぜ」


「マニアだからこそ高値を付けるんだろ? へへ……」


 どうやら、あんまりよろしくない職業の人たちみたいだ。

 お近づきになりたくないから、静かにしてよーっと。


「まぁアレはしばらく置いておくとして、他にも……お?」


「どうした」


「近くに金目のモンがあるぞ。ニオイがする」


「おっ、お得意のスキルか! やっぱり便利だな、それ」


「これのおかげで俺でも商人の真似事ができるんだ、スキル様様だぜ」


 お~、しがないチンピラ君かと思いきや、なかなか良いスキルを持ってるみたいだ。

 知覚センス系のスキルは天恵だから、貴重なんだよね。

 もっと良いことに活かしたらいいのになぁ。

 ……お金になる物が分かるスキルだと、お金儲けぐらいしか無いか。


「この辺りだ。さて……落とし物か、レアな植物か……」


 ――ガサガサッ、ガサササッ


 あれ? なんかこっちに近づいてきてない?

 近くになんか落ちてたかな?


「んー……おっ、いた! こいつだ!」


 ――ぷよんっ!


「スライムか? なんか黒いけど……」


「おうよ、こいつぁブラックスライムだな」


 ボ、ボクだったー!! 金目の物ってボクだったー!!


 あばばばば……さっき駆け出し冒険者三人組と遭遇した時以上にピンチだよ!

 どうやって切り抜けよう……!


「確かに黒いスライムなんて見たことねぇけどよ、金になんのか?」


「こいつは次元収納が使えるんだ。魔物遣いテイマーに人気があるんだぜ」


「へぇ~そりゃ確かに便利そうだな」


 そうだったそうだった! ボクって貴重で人気のモンスターなんだった!

 潰されるだけのスライムよりはマシだけど……外に出て即捕まるなんて、そんなぁ~!


「こんな場所で捕まるとはラッキーだったぜ。戻って早速売りに出そう」


「おうよ!」


 うう……仕方ないからちょっと様子見しよ……。

 今すぐ命の危険があるわけじゃないし、隙を見て逃げればいいよね。

 ボクのことはただのブラックスライムだと思ってるだろうし、逃げる隙ぐらいあるでしょ……。


 は~、ゆううつ~~。



 >ちゃららーん♪

 >こあくとう は

 >ブラックスライム を ゲットした!

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