16.旅立つスライム

 ……。

 自分の意思でスライムになったことを思い出したものの、ボクのことがよく分からなくなっちゃったなぁ。


 ボク、人間だと思ってたけど人間じゃなかったんだ……。

 だって普通、人間は自分の意思で転生できないよね。

 ボクの知識に無いだけで、すごい魔術師ならできたり……するのかな?

 でも自分で転生先まで選んで、天使リーリオと知り合いだったんだよね?

 少なくとも普通の人間じゃない。


 しかも日本やラノベがどうとかって……どう考えてもこの世界の話じゃないよ。

 それに今まで普通に『ウインドウ』とか言ってたけど、よく考えたらこの世界にデジタルのゲームなんて無い。

 ボクの知識って、異世界のものも入ってるんだ……。


 うーん……リーリオに聞いても教えてもらえないんだろうなぁ。

 前に制約がどうこうって言ってたし。


 ん~~~……。


 よし! この問題は一旦置いとこう!


 いくら考えても分かんないし!

 そのうちまた思い出すかもだし!

 そもそも、ボクが何だったか分かったところで、今のボクには関係無いもんね!


 でも、とりあえずは。


『リーリオ、ありがとね』


『やだそんな~、こんな応援ならいくらでもさせてもらいますからっ! エル・オー・ブイ・イー・に・い・む!』


 そうじゃないけど、まぁいいや。


『じゃあ進化もできたことだし、そろそろ次の場所にでも行ってみるよ』


『ええっ?! 他は危ないですよ?』


『でも、これ以上ここにいても強くなれそうにないよ?』


『それはそうですけど……』


 スライムでも生き延びれるココは、確かに一番安全な場所かもしれない。

 でも、ずっとここに居たら意味が無いもんね。


 どうせなら強くなりたいし、世界のことももっと見て回りたい!

 考えるスライムは旅立つ時なのだー!


 っと、問題は、ダンジョンの下に行くか外に行くかなんだよね~。

 探索中に下に降りる階段と外に出る扉を見つけたんだけど、危なそうな気がして進まなかった。

 でも今なら進める気がする!

 ただやっぱり、外に出て広い世界を見るか、下に潜っていって強さを求めるか……悩むなぁ。


『リーリオはダンジョンの下か外か、どっちが良いと思う?』


『外はモンスターだけでなく人間もいて危険ですし……かといってダンジョンに潜るのはそれこそ危険ですし……ううーん……』


 わー、めっちゃ悩んでる。

 心配性のモンペ……もとい、天使サマに聞いたのが間違いだったかな。


 うーん……確かに強くはなりたいけど、武者修行がしたいワケでもないしなぁ。

 それに外にもモンスターはいるし、いくらでも強くなる方法はあるよね。

 なんたって、吸収する素材があれば強くなれるスライムだもん。

 それならあえてダンジョンに潜る理由も無いかな……?


 んー……よし! 外にしよう!

 ずっと室内にいたから、外の空気が吸いたい!

 呼吸してないけどね! スライムだからね!


『リーリオ、ボク外に行ってみるよ』


『あぁっ、もう決めちゃったんですか?! 危険が少ない方を考えていたのに……』


 ありがたいけど、ガイド天使としてどうなの?


『うん、もう決めたから!』


『そ、そうですか……気をつけてくださいね?』


『うん、死なないように頑張る!』


『困ったらすぐに私を呼んでくださいね?』


『うん!』


『寂しくなったら呼んでくださいね? イヤな奴がいたら呼んでくださいね? あと何もなくても……』


『うんわかったまたねー』


 半ば強制的にウインドウを閉じた。

 これってちゃんとボクの思い通りになるんだぁ~知らなかったなぁ!


 よし、それじゃあ外の世界にレッツゴー♪

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