4.うろうろスライム

 うろうろうーろー、うろろーん。


 ボクはとりあえず、もなく周りをウロついてみた。

 どうやら今いる場所は、石造りの建物っぽい。

 建物といっても、家とか城とかじゃなくて、いわゆる「ダンジョン」ってやつみたいだ。

 迷路のように通路がいっぱいあって、ところどころに小部屋がある。

 あと、ボク以外のモンスターの姿もちらほら……。


 え? スライムなのに他のモンスターと戦って勝てるのかって?


 逃げてるに決まってるでしょっ!

 攻撃方法なんて無いよ!

 ぽよぽよ跳ねることしかできないよ!


 >スライムは はねる をつかった!

 >しかし なにもおこらない!


 全くもう……世の中スライムに厳しすぎるよねっ!


 まぁ唯一良いところと言えば、他のモンスターがボクを無視してくれるところかな。

 スライムを食べても経験値や栄養が無いのか、みーんなスルー。

 あんまり近付きすぎると攻撃されそうになるけどね。

 言うなれば「うざってーハエだなー」みたいな感じ?


 あと、もしここに人間がいたら、人間に殺されちゃうかも。

 ボクも人間だったらスライムは潰すと思うし。

 うん、自信あるわ。

 ……探索中に人間に出会わなくて良かったー。


 しかし実際のところ、どうやって強くなったらいいんだろ?

 酸を飛ばしたり、体の一部をむちのように使えないかな……んー、ダメか。

 何か攻撃手段があれば、モンスターを倒してレベルアップ~とかできるのになぁ。


 そう、この世界のモンスターにとって『レベル』は重要なのだ!

 レベルが上がれば強くなるし、進化もできるようになる。

 レベルを上げる方法は、モンスターを倒して経験値を得ること。

 普通の動物や虫なんかじゃダメ。経験値ゼロ。

 普通の生き物でも倒して食べればお腹は膨れるけど、それだけだ。


 しっかし、生まれたてのスライムであるボクが倒せるモンスターなんて、この世に存在するのだろうか。(反語)


 …………。


『リーリオ~! リーリオさ~~ん!』


『はいっ』


 うぉっ、びっくりした。

 呼びかけた瞬間、ウィンドウが出るんだもんな。

 え、応答早すぎない?


『どうかしましたか?』


『応答がはや……っていや、そうじゃないや。スライムが強くなる方法についてなんだけど』


『おおっ、早速強くなろうとしているんですね! 素晴らしいです!』


『うん、そう思ってはいるんだけどさ……スライム、弱すぎない?』


『ええ、モンスターの中では最弱ですね』


『だよね? ボクってどうやったらレベルアップできるのかな? 勝てそうなモンスター、いる?』


『ぅぐっ……!!』


 ちょちょちょ、何で泣きだしたのっ!


『ど、どうしたのリーリオ……』


『すみません……せっかく貴方が頼ってくれたのに……役に立てそうにもなくて……自分が不甲斐なくて……』


 え、えぇー……そんなことで?

 天使のメンタルもろすぎない? 大丈夫?


『えっと、そんなに思い詰めなくてもいいよ。ちょっと他の人の意見も聞いてみようと思っただけだからさ』


『すみません……』


 うーん、リーリオも良い案が無いかぁ、どうしようかな。

 最弱スライムだもんなぁ……。

 スライムか……スライム……あっ、そうだ!

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