第2135話 見守り隊
そんなこんなで年の瀬に、洗濯機を見守るお仕事が追加されました。こんなこと、誰が予想出来たでしょう。人生はいつだってドラマティック。
その日の洗濯量は多く、水量もMAXでした。こりゃあ溜まるだけでも結構かかるぞ。
とりあえず、『洗い』の間にパパっと夕食を済ませます。そして、夕食後はすぐに洗面所に移動です。この時の私の髪はまだ濡れていますので、それを乾かしながら、ゴウンゴウンと荒ぶる洗濯機をチラチラとチェック。やはり洗濯機さんの方でも飼主から仁王立ちで見張られてちゃあ、緊張しちゃって普段通りの洗濯が出来ないかもしれません。ですのであくまでも、こちらのスタンスとしては髪を乾かしているだけ。たまたま同じ空間にいるだけですよ感をアピール。
とはいえ、しっかり乾く頃には
さて、そんなこんなで彼のすすぎっぷりをガン見してたんですけど、まぁ、まずは水をジャーするじゃないですか。そんで、ゴウンゴウンって回るじゃないですか。途中途中なんか水をジャーとかしながらゴウンゴウンするわけですよ。この辺は全然想像通りといいますか。まぁそうだよな、それがすすぎだよなって。とにかく皆さんがイメージしてる『すすぎ』なんですよ。
で、後半。
シャー、という音が聞こえてきます。水を抜く音です。実際に見たわけではありません。蓋には透明な窓もついてますけど、そこまではっきりは見えません。それでもこれまでの人生経験でわかります。あぁこれは水を抜いてる音だな、と。
私はてっきりこの『水を抜く』工程って、『脱水』でやってるやつだと思ってたんですね。そうか、『すすぎ』の終わりに水を抜いて、それで『脱水』に切り替わるのか。そう思いました。
が。
ここで、洗濯機がものすごい速さで回り始めました。水は抜けている状態です。たぶん。
宇部「なぁお前、もしかして脱水してねぇか?」
しかしランプはあくまでも『すすぎ』。いうても私、この『洗濯』に関してはズブの素人です。つい先日から見守り始めたペーペーの素人。これまではただただスイッチを押すだけの人でしたから。ただただピッとやるだけで、洗い・すすぎ・脱水すべての工程を丸投げしていた人間です。
洗濯機「素人は黙っとれ」
そう言われてしまえばそれまでです。
ですから、まずは彼のやり方を勉強させてもらう気持ちで見守っておりましたとも。ですが、どう考えても私の目には脱水しているように映るのです。ですがわかりません。『すすぎ』である程度の水気は切った状態で『脱水』にバトンタッチするのかもしれません。びっちゃびちゃの状態で「あと頼むわ」ってパスを回されても『脱水』さんサイドでも困るのかも。
ですが、まぁこう言っちゃなんですけど、『脱水』に関しては一番目にする機会が多いのです。「そろそろ終わるかな?」って見に行くことが多いのです。そういう縁もあって、私は彼の『脱水』に関しては、『洗い』や『すすぎ』に比べて多少見てきているのです。あの荒ぶる縦揺れ・横揺れもさんざん見ているのです。
そんな私から言わせてもらうとですよ。
宇部「いやお前それやっぱり脱水してねぇか?」
洗濯機「すすぎですね」
強情なのです。
絶対に認めない。
まぁここまで言うのです。『すすぎ』なのでしょう、彼の中では。そこまで言うなら仕方ない。信じましょう、私と君の仲だ(11年)。
そう思って見守り続けました。
見慣れた荒ぶる縦揺れと横揺れに幾度も『もしかして:脱水』の文字がチラつきましたが、耐えました。
そうして耐えること数分。微かに、本当に微かに聞こえました。
私の耳は『それ』をとらえました。
カチッ
という小さな音です。
これは『洗い』から『すすぎ』、そして『すすぎ』から『脱水』へ移行する際の(たぶん)切り替えの音。宇部さんは人との会話は一発で聞き取れないくせに、なんかそういう謎の音については聞き取れるのです。たぶん『地獄耳』とかそういうスキルに該当するやつだと思います。
よし、『すすぎ』はこれで終わりだな。てことはやっぱりあの動きは『すすぎ』に含まれるやつだったんだ!
疑ってごめん、と申し訳ない気持ちになりました。ズブの素人が偉そうに洗濯を語ってすみませんでした。そう思っておりましたら。
洗濯機『ジャ―「させるかいっ!(一時停止ボタン)」』
油断も隙も無いのです。こいつ、カチッとかいって脱水に切り替えずにまたすすぎに戻ろうとしやがった。させるかってんだよ。
手動で無理やり『脱水』させました。人間様を舐めるな。
あっ、本日クリスマスイブですね。ちなみに宇部家のクリスマスはもう終わってるはずです!
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