第2109話 さらばオシゴトサーガス
~前回までのあらすじ~
宇部さんの迂闊な行動のせいでとんでもないことになったし、まさかの3話になったゾ!
というわけで、まさかの3話です。
話数を稼げてしめしめという気持ちも半分、もうこの話はとっとと終わらせたい気持ちも半分です。とっとと終わらせようぜ。
さて、困ったことになりました。
軽い気持ちで登録した求人サイト『オシゴトサーガス(仮名)』はガチもガチ、ガッチガチだったのです。スマホで『オシゴトサーガス』を検索しますと、
『オシゴトサーガス しつこい』
『オシゴトサーガス 退会』
『オシゴトサーガス 評判』
こういうのが出て来ました。ほほぅ……。
それでその、翌日の出勤前にかかってきたTELは、私なりに相当頑張りました。
まず、自分はそこまで本気で転職活動をしているわけではないこと。
いまの職場で働きながら、まぁ良い求人があればなぁ、くらいの気持ちでいること。
年末年始は忙しいし、年が明けると子ども達の進級準備があるので、正直、そこまで本腰を入れられないこと。
他の求人サイトも利用していること。
やんわりと、「私にそこまでの情熱を傾けなくて良いですよ。あなたのそのパッション、他の求職者に向けてプリーズ」の気持ちをぶつけてみたのです。カクヨムのエッセイではブイブイ言わせてますし、小説の中ではとにかく強気のヒロインを出してそちらでもブイブイ言わせている私ですが、リアルではもうしょぼしょぼなのです。これでもかなり頑張ったのです。
伝わってくれ!
私のこの思い!
ですが、まーったく伝わりませんでした。
山田(仮名)氏は、「わかりました!」と電話口では爽やかに返答してくれたのですが、全然伝わってませんでした。通話終了後、『宇部様に超お勧めのレア求人!』とかいうメッセージがどんどん届きます。おかしいな、私さっき、しばらくは無理です、みたいなこと言ったよな? そんで「わかりました!」って返ってきたよな?
気持ちはありがたいし、本当にレアな求人なのかもしれないけど、いまの私にはマジでもったいないやつだから! それは他の方に紹介して差し上げて!
一刻も早くどうにかしたいと思うものの、一度でも会話をしてしまうと無理なのです。まだメールだけのやり取りなら何とかなりました。例え電話であっても、会話をしちゃうと無理。相手が血の通った人間だと思うと、もう駄目なのです。
その後もとにかく山田氏はLINEを送りまくってきました。早く断らないと、彼のこの努力も時間も無駄になるし、私のせいで、他の、もっと真剣に転職を考えている人にこの求人が届かないかもしれない。そう思うと、心臓がはくはくして冷や汗が出て来ます。
もう駄目だ。
山田氏にも申し訳ないし、私の精神も持たない。
何とか角が立たない方法で断れないだろうか。
私の頭の中は、それでいっぱいです。いつもは家族のことやその日の献立、そしてここのネタ、それから小説の次の展開はどうするかなどなどでパンパンだった私の頭の中に、ぐいぐいと『オシゴトサーガス うまく断る方法』が割り込んで来たのです。
先に退会してしまえば良いのでは?
とも思いました。
少なくとも、最初の電話の段階ではそう思っていました。
ですが、もうここまで来ると、それは筋が通らない。やっぱり山田氏にもきちんと話をしなければなりません。でも電話は絶対嫌。出来ればLINEの方で。
こうなったらもう背に腹は代えられません。
知人から仕事を紹介してもらったことにしよう。
そうと決まれば、早速文章を考えます。
まずは、感謝の言葉から。
何せ、本当に熱心にたくさんの求人を紹介してくれたのです。それが仕事と言ってしまえばそれまでですが、それでもここはお礼をするべきでしょう。
そして、実は常日頃転職について相談していた知人から、事務の仕事を紹介された。オシゴトサーガスの山田様には大変よくしていただいたが、今回はそちらを受けようと思う。
ここで再度、感謝の言葉を述べ、応えられなかったことを謝罪しつつ〆の言葉、と。
さすがにブチ切れて「おいふざけんな」みたいなことにはならないと思いましたが、山田氏は最後まで爽やかに「わかりました! お仕事頑張ってくださいね!」みたいな言葉を返してくださり、無事終了となりました。
その後、光の速さでサイトを退会。
退会理由は、『就職が決まったから』を選び、『その他』の下にあるご自由にお書きくださいスペースに、名前こそ出しませんでしたが、担当してくれた方への感謝の気持ちをこれでもかと記入。彼に届くかはわかりませんが、これはもうマジで罪悪感が半端なかったので、とにかくもう「生半可な気持ちで登録して申し訳ございませんでした」の気持ちで、山田氏を持ち上げまくりました。
という感じで一件落着。
これに懲りたので、大手求人サイトの求人情報をチラチラ眺めるだけに留めます。マジで心臓に悪かったです。
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