第2096話 成長してる?

 宇部家はですね、まぁ夫婦共働きでして。

 共働きっていっても、皆さんもご存知かと思いますが、宇部さんはお気楽極楽のパート主婦。週5で働いておりますが、所詮パートですのでお給料なんてそこまでもらえませんから、働いてるといってもそこまでデカい顔が出来るわけではありません。


 それでも拘束時間だけは立派なもので、その時間はどうしても家をあけざるを得ず、また、小売店勤務のため、土日祝日も基本的に出勤です。こうなるとやはり旦那実家に色々助けてもらう形となります。


 で、土曜日はですね、学校は休みですが、旦那と私は仕事なので、子ども達は実家で過ごします。娘は午前中だけ部活があるのですが、午後からは実家で旦那の仕事が終わるのを待つ感じ。


 それで、旦那の弟さんの息子君、このエッセイでも度々登場する従兄弟君もですね、土曜日は実家にいる率が高いです。というのも、弟さんの奥さんも土曜が仕事だからです。


 正直なところ。

 ほんと正直なところ。

 不安しかありませんでした。


 何せこの従兄弟君、なかなかにやんちゃなのです。


 なので、従兄弟君が一緒にいる日は必ず子ども達に一言添えます。


「従兄弟君に釣られないようにね。お菓子は時間を決めて座って食べるように。息子君、何かあったら娘ちゃんのこと守ってね。娘ちゃんも、何か嫌なことされたらおばあちゃんにすぐ報告だよ」


 全然一言じゃねぇな。


 だってやっぱり心配でね。

 あまりにも心配なので、むしろ家で二人きりで留守番させようって旦那とも相談したんですけど、お姑さんが、子ども二人でお留守番なんて、と心配しちゃってですね。あと、従兄弟君単独だとちょっと大変ってのもあるみたいですけど。


 そんなある日のことです。

 子ども達を連れて帰宅した旦那が報告して来たのです。


旦那「今日、従兄弟君来てたんだけどさぁ」

宇部「そうなんだ。危ないこととかなかった?」

旦那「大丈夫だった。ていうかさ、息子と一緒にゲームしてて」

宇部「えっ、そうなの?!」


 正直なところ、「従兄弟君って黙ってゲームとか出来るんだ」と思いました。

 と同時に、白熱してコントローラーをぶん投げたり、負けたらひっくり返って暴れ出したり、息子に殴りかかったりしてないだろうか、なんて考えました。


 が。


旦那「それがさ、ロックマンやってたんだけど」

宇部「うんうん(あれって二人でやるゲームではなくない?)」

旦那「従兄弟君がプレイしながら息子に聞くわけ。『先生! この敵はどの武器で倒すんですか!?』って」

宇部「先生?! 息子、先生って呼ばれてんの?!」

旦那「そうなんだよ。そんで息子もさ、『あー、その敵はさ〇に弱いから〇使って』ってアドバイスしてんの」

宇部「アイツ、人に教えられるほどやり込んでんの?!」

旦那「全クリしてるからね」

宇部「マジかよ」


 息子と従兄弟君、マジでタイプが全く違うのですが、どうやら息子はゲームの腕で従兄弟君からリスペクトされているらしく、先生と呼ばれているのだそう。そんな息子にもびっくりしましたけど、それより何より、あの従兄弟君に『人に教えを乞う』姿勢があることも驚きました。でーきーなーいー! ってひっくり返って暴れ回っていた彼はもういないのです。


 ロックマン以外のエピソードとしましては。


旦那「今日、『リズム天国』を息子がやっててさ」

宇部「あーハイハイ。まだやってるんだ、アレ」

旦那「●●のステージでパーフェクト(ノーミスで得られる称号)出してて」

宇部「すごいな、息子」

 

 私、幼少時からピアノも習ってたし、吹奏楽部でもあったんですけど(しかも低音パート)、リズムゲームがからっきしなんですよね。太鼓の達人とか、自分の中では合ってるはずなのに、微妙にずれてる。なのでこの『リズム天国』ももちろん全然駄目です。


旦那「それを見てた従兄弟君が『すっげぇー!』って吠えてた」

宇部「従兄弟君いたんだ! 黙って息子のプレイ見てたの?! 偉いね?!」


 かつての彼なら絶対にやってる途中に妨害してたでしょ! 成長してる!


 小3になって心が成長したのかもですけど、その中に少しでも息子の影響があったら良いなと思うなどしました。

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